IMF(International Monetary Fund / 国際通貨基金)の2022年4月更新版で、昨年度(2021年)の各国の名目GDP(Gross Domestic Product / 国内総生産)と(Gross Domestic Product Per Capita / 1人当たり国内総生産)が公表されていることからデータと共に若干の所見を加えて取り上げてみることにした。
[補足]
GDPとは、一定期間内(一般的には1年間)に国内で生産された物やサービスの付加価値の総額を表わした数値で、各単語の意味は以下の通り。
G - Gross(合計)、D - Domestic(国内)、P - Product(成果)
ちなみに、「名目GDP」と「実質GDP」の違いについては、「名目GDP」から物価変動の影響を除いて算出された数値が「実質GDP」となる(一般的には「名目GDP」の方が景気実感に近いと言われている)。
■ 2021年の各国の名目GDPと1人当たり名目GDP - 上位40か国(IMF統計 / 数値は10月に更新された改定値のデータに変更)
※ 名目GDPの単位は百万USドルなので、アメリカを例にとると、23兆3,150億7,500万ドルとなる
※ 1人当たり名目GDPの単位はUSドルなので、ルクセンブルクを例にとると、そのまま13万4,802ドルとなる
名目GDP | 1人当たり名目GDP | |||
国名 | GDP (百万USドル) | 国名 | GDP (USドル) | |
1 | アメリカ | 23,315,075 | ルクセンブルク | 134,802 |
2 | 中国 | 17,759,307 | アイルランド | 100,145 |
3 | 日本 | 5,005,537 | スイス | 92,239 |
4 | ドイツ | 4,262,767 | ノルウェー | 90,764 |
6 | インド | 3,150,307 | シンガポール | 77,710 |
5 | イギリス | 3,123,231 | アメリカ | 70,160 |
7 | フランス | 2,957,423 | アイスランド | 69,287 |
8 | イタリア | 2,115,762 | カタール | 68,622 |
9 | カナダ | 2,001,487 | デンマーク | 68,202 |
10 | ロシア | 1,836,631 | オーストラリア | 63,896 |
11 | 韓国 | 1,810,966 | スウェーデン | 60,930 |
12 | ブラジル | 1,648,699 | オランダ | 57,997 |
13 | オーストラリア | 1,646,391 | フィンランド | 53,595 |
14 | スペイン | 1,428,330 | オーストリア | 53,529 |
15 | メキシコ | 1,272,839 | カナダ | 52,388 |
16 | インドネシア | 1,187,732 | イスラエル | 52,152 |
17 | オランダ | 1,013,520 | サンマリノ | 51,580 |
18 | サウジアラビア | 868,586 | ベルギー | 51,451 |
19 | トルコ | 817,508 | ドイツ | 51,238 |
20 | スイス | 799,712 | 香港 | 49,845 |
21 | 台湾 | 775,741 | ニュージーランド | 48,778 |
22 | ポーランド | 679,524 | イギリス | 46,422 |
23 | スウェーデン | 636,856 | フランス | 45,186 |
24 | ベルギー | 594,500 | マカオ | 44,092 |
25 | タイ | 505,523 | アラブ首長国連邦 | 43,422 |
26 | アイルランド | 504,517 | アンドラ | 41,873 |
27 | ノルウェー | 490,293 | 日本 | 39,883 |
28 | イスラエル | 488,527 | イタリア | 35,842 |
29 | アルゼンチン | 486,702 | 韓国 | 34,998 |
30 | オーストリア | 480,688 | マルタ | 34,403 |
31 | ナイジェリア | 441,424 | プエルトリコ | 33,289 |
32 | シンガポール | 423,797 | 台湾 | 33,186 |
33 | エジプト | 423,300 | ブルネイ | 31,789 |
34 | 南アフリカ | 418,907 | キプロス | 31,726 |
35 | バングラデシュ | 416,265 | スペイン | 30,134 |
36 | アラブ首長国連邦 | 415,022 | スロベニア | 29,298 |
37 | デンマーク | 398,303 | クウェート | 28,884 |
38 | フィリピン | 394,086 | バハマ | 28,792 |
39 | マレーシア | 373,034 | アルバ | 28,683 |
40 | ベトナム | 369,736 | エストニア | 27,962 |
個人的な見解を補足しておくと、1人当たり名目GDPと言えば、名目GDPよりも、より豊かさの実態に近い印象があり、平均的な豊かさを示す指標として用いられることも多いようだが、1人当たり名目GDPが高い国を見てみると分かるように、上位には比較的人口が少ない国が多く含まれるという特質(小国ならではの特殊要因)もあるので、自分自身は、これをもって国民の豊かさと世界的位置付けを測る指標とするのはいささか疑問もある。
例えば、1人当たり名目GDPの上位5か国の人口を見てみると、1位のルクセンブルク(62万人)、2位のアイルランド(499万人)、3位のスイス(863万人)、4位のノルウェー(537万人)、5位のシンガポール(568万人)と、全て人口1,000万人以下の国で占められている。又、5位以下についても人口の少ない国が比較的上位に位置しており、7位のアイスランドについては、人口は僅か34万人という国(金融立国)であり、石油や天然ガスの関連産業が国内総生産の6割強を占める8位のカタールについても、人口は285万人ながらも、カタール人は1割強で、残り9割弱が南アジアや東南アジアからなどの外国人労働者である。
ちなみに、ルクセンブルクの1人当たり名目GDPが高い理由としては、多国籍企業の本社が多く(税率が低く税金面での優遇があるため)金融業が盛んなことや、四方を陸続きで他国に囲まれいるため周辺の国からルクセンブルクにある会社へ毎日通勤してくる社員が多いことも要因の一つと言われている。
[補足]
税率が低い国や地域を指してタックスヘイブン(租税回避地)と呼ぶ。
加えて、日本はもうすぐどこそこの国に1人当たり名目GDPで抜かれるという話を最近はよく耳にするが、アジアという括りで見れば、27位の日本は、6位のアメリカよりも上位に位置する5位のシンガポールより既にずっと下だし、日本の上位には、恐らくは多くの人がどこにあるのかすら知らないような17位のサンマリノや、26位のアンドラといった国もランクしているので、今更30位付近のこの位置で特定の国と比較して騒ぎ立てるようなものでもないのではないかとは思う。
[補足]
• サンマリノ:イタリア半島の中東部に位置する人口34,000人の小国で、現存する世界最古の共和国と考えられている。EUには加盟していない。
• アンドラ:フランスとスペインに挟まれたピレネー山脈中にある人口77,000人の小国。国家歳入の大半はEUからの輸入関税であるが、EUには加盟していない。
ちなみに、5,000万人以上の人口を抱える国に絞って1人当たり名目GDPを見てみると、トップはアメリカ(総合6位 / 人口:3億3,100万人)で、次いで、ドイツ(総合18位 / 人口:8,378万人)、イギリス(総合22位 / 人口:6,788万人)、フランス(総合23位 / 人口:6,527万人)と続き、5位に総合28位の日本が入る。ただ、そうは言っても、人口が3億人を超えるアメリカに1人当たり名目GDPでも大きく差をつけられているのは危惧するところではある。
なお、将来(2100年)の各国の人口とGDPを予測した米大学研究者の調査結果も中々興味深いので、時間があれば併せて見て欲しい。
▼ 80年後(2100年)の人口とGDPの予測~日本は?(2020年 - 米大学研究者調査)
https://jihirog.blogspot.com/2020/10/2100-population-gdp-2020.html
■ 名目GDPの上位10か国(5年前の2016年との比較)
2021年 | 2016年 | |||
国名 | GDP (百万USドル) | 国名 | GDP (百万USドル) | |
1 | アメリカ | 23,315,075 | アメリカ | 18,036,650 |
2 | 中国 | 17,759,307 | 中国 | 11,226,186 |
3 | 日本 | 5,005,537 | 日本 | 4,382,420 |
4 | ドイツ | 4,262,767 | ドイツ | 3,365,293 |
5 | インド | 3,150,307 | イギリス | 2,863,304 |
6 | イギリス | 3,123,231 | フランス | 2,420,163 |
7 | フランス | 2,957,423 | インド | 2,088,155 |
8 | イタリア | 2,115,762 | イタリア | 1,825,820 |
9 | カナダ | 2,001,487 | ブラジル | 1,801,482 |
10 | ロシア | 1,836,631 | カナダ | 1,552,808 |
■ 世界経済見通し(2022年4月)
今後の世界経済の見通しについては以下のようなIMFの見解が記されている。
「戦争が経済回復を抑制する」
ウクライナでの戦争が多大な代償を伴う人道危機を引き起こし、平和的解決策が求められている。また、戦争がもたらす経済損失は、2022年に世界の経済成長が大幅に減速する一因となるほか、物価上昇が加速するだろう。燃料と食料の価格が急上昇しており、低所得国の脆弱層が一番大きな影響を受けている。世界経済成長率は2021年の推計6.1%から減速して、2022年と2023年は3.6%となる見込みだ。それぞれ、今年1月の予測から0.8%ポイントと0.2%ポイント下方改定された。2023年よりも先については、中期的に見て、世界経済の成長率が約3.3%の水準まで低下すると予測されている。戦争が主な要因で一次産品が値上がりし、物価圧力は広範囲に広がっている。これを受け2022年の物価上昇率予測は先進国が5.7%、新興国と発展途上国が8.7%となり、1月時点の予測から1.8%ポイントと2.8%ポイント上方改定された。人道危機に対応し、経済のさらなる細分化を阻止し、世界的な流動性を保ち、過剰債務の問題を管理し、気候変動に立ち向かい、コロナ禍に終止符を打つための多国間での努力が必須となる。
「世界経済の見通しと政策」
ウクライナでの戦争が主な要因で、世界経済は2022年に大幅に鈍化する見込みだ。紛争の結果、ウクライナのGDPは2桁台の大幅下落となるだろう。ロシア経済は、欧州各国がロシアからのエネルギー輸入の削減を決めたことや、これまでの制裁が重しとなり、大幅に縮小するだろう。戦争の経済的な打撃は、一次産品市場や貿易、そして程度は低いが金融のつながりも一経路となり、広範囲に伝播していくこととなる。燃料と食料の値上がりはすでに世界に影響しており、低所得国を中心に弱い立場の人々が一番大きな打撃を受けている。
■ 上位5か国の名目GDPの推移(1980~2021年)
▼ 詳細はこちら (世界経済のネタ帳)
名目GDP(USドル)の推移(1980~2021年)(アメリカ, 中国, 日本, ドイツ, インド)
■ 今後の世界経済の成長率予測(2022年 / 2023年)
■ 参照・引用・出典
▼ GLOBAL NOTE - 世界の名目GDP 国別ランキング・推移(IMF)
https://www.globalnote.jp/post-1409.html
▼ GLOBAL NOTE - 世界の1人当たり名目GDP 国別ランキング・推移(IMF)
https://www.globalnote.jp/post-1339.html
▼ 世界経済のネタ帳 - 世界の名目GDP(USドル)ランキング
https://ecodb.net/ranking/imf_ngdpd.html
▼ 世界経済のネタ帳 - 世界の一人当たりの名目GDP(USドル)ランキング
https://ecodb.net/ranking/imf_ngdpdpc.html
▼ IMF - World Economic Outlook Database
https://www.imf.org/en/Publications/SPROLLS/world-economic-outlook-databases
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