昨年末に外務省のウェブサイトに於いてアメリカにおける対日世論調査の結果が報告されていました。
以下、外務省のウェブサイトより抜粋引用 平成25年(2013年)7月から8月まで、外務省は、ハリス・インタラクティブ社に委託して、米国における対日世論調査を行いました。本件世論調査は1960年以来ほぼ毎年実施しており、18歳以上の1000名を対象とした「一般の部」と、各界(政官財、学術、マスコミ、宗教、労働関係等)で指導的立場にある201名を対象とした「有識者の部」に分けて電話調査を行いました。 1. 対日信頼度は一般の部で76%、有識者の部で93%。 日米協力関係を「極めて良好」ないし「良好」と回答する割合は、一般の部で58%、有識者の部では86%。 2. 日米安保条約は日本及び極東の平和と安定へ「非常に貢献している」及び「ある程度貢献している」との回答は、一般の部では81%、有識者の部では87%。 日米安保条約は米国自身の安全保障にとって「極めて重要である」及び「ある程度重要である」と回答した割合は、一般の部及び有識者の部いずれも88%。 日本は防衛力を増強すべきと考えるかとの質問については、「増強すべき」との回答が一般の部で64%、有識者の部で72%。 3. 日本に対するイメージに関する質問(複数回答、「一般の部」のみ実施)については、「豊かな伝統と文化を持つ国」(97%)、「経済力・技術力の高い国」(92%)、「自然の美しい国」(90%)、「アニメ、ファッション、料理など新しい文化を発信する国」(82%)が上位を占めました。また、日本文化について関心のある分野については、「日本食」(73%)、「相撲、武道(空手、柔道、剣道他)」(53%)、「生け花」(52%)、「盆栽」(49%)が上位を占めました。 4. 日米間で経済関係をより深化するために、日本が特に進めるべきと考える政策(「有識者の部」のみ実施)は、「クリーンエネルギーや高速鉄道などの技術協力などの促進」が95%、「TPPへの参加」が92%。 引用終了。 |
この中で興味深かったのが、3. の日本に対するイメージに関する質問。
まずは、日本に対してどのようなイメージをもっているか。
これは、用意された項目について、それに同意できるか否かで回答を得る質問方式によるもので、「豊かな伝統と文化を持つ国」(97%)、「経済力・技術力の高い国」(92%)、「自然の美しい国」(92%)、「アニメ、ファッション、料理など新しい文化を発信する国」(82%)といった比較的好意的なイメージが上位を占める結果になっています。
▼ 日本に対するイメージ(一般の部のみの調査)
で、興味深かったのが、次からの設問。
▼ 日本の伝統文化またはポップカルチャーのどちらにより興味があるか。
伝統文化と答えた人が28%だったのに比べ、ポップカルチャーと答えた人は2%しかおらず、巷で言われるほどポップカルチャーに対する関心は高くないという結果に。
ただ、これを「両方興味がある」という答えと合算すると、「伝統文化に興味がある」が56%で、「ポップカルチャーに興味がある」が30%となることから、日本のポップカルチャーに関しては、実のところ、関心を持たれるのは、日本の伝統文化という要素が背景にあるからこそとの見方ができるのではないでしょうか。
一方で、「どちらでもない」との意見が42%もあり、意外と大きな割合を占めています。ただ、この答えに対しては、他に興味があるということなのか、どちらにも興味がないということなのか、判断が付きにくいのですが、どちらにしても、気になるところではあります。
ということで、これに繋がるのが次の設問。
▼ 以下のうち、どれに最も関心があるか。
これは、日本の文化に関する上記の項目を挙げ、どれについて最も関心があるかを聞いたもの。ただ、数字を見ても分かるように、合計が100%を遥かに超えることから、複数回答が多くあったことがうかがい知れます。トップは「日本食」。
そして、先の「日本の伝統文化またはポップカルチャーのどちらにより興味があるか」との設問での回答結果を示すように、ここでの設問に於いても、アニメ 41%、漫画 21%、ゲーム 38%、といったポップカルチャーよりも、相撲、武道(空手、柔道、剣道他) 53%、生け花 52%、盆栽 49%、などの伝統文化の方がより関心が高いという結果が表れています。
ただし、これは、あくまでもアメリカでの調査結果であり、これを即、海外の認識として、諸外国全てに当てはめるわけにはいきませんが、それでも海外からの視点という意味ではひとつの指標にはなるわけですから、日本を対外的に紹介したり、アピールする場合は、ポップカルチャーだけに重点を置いたようなプレゼンテーションだと、意外と反応が鈍いというケースも大いに考えられることかもしれませんね。
それと、ひとつ付け加えておかなければならないのが、外務省の調査委託先がそれまでのギャラップ社から2013年度はハリス・インタラクティブ社に代わったこと。そういったことから、前年や前々年の数字を比較する場合は、その点を踏まえて見る必要があります。調査会社が変われば調査方法等も当然違いますからね。
と、個人的に興味深かった「日本に対してどのようなイメージをもっているか」の設問を取り上げてみましたが、折角ですから、ここからは外交に関する設問をいくつか取り上げてみたいと思います。
ただし、こちらも同様に、2013年度は調査委託先が変更されていることから、前年や前々年と数字を比較して見る場合は、その点をご留意ください。
なお、外交に関しては、それぞれの設問への回答が「一般の部」と「有識者の部」に分けてあります。
▼ アジア地域の中でどの国が米国・地域にとり最も重要なパートナーであるか。(一般の部)
▼ アジア地域の中でどの国が米国・地域にとり最も重要なパートナーであるか。(有識者の部)
一般の部、有識者の部、共に中国をパートナーに挙げる回答が最も多いという結果に。
では、そのパートナーという言葉にどういった意味合いがあるのかといえば、それを垣間見ることができるのが次の設問。
▼ なぜその国・地域を最も重要なパートナーとみなしているか。(一般の部)
▼ なぜその国・地域を最も重要なパートナーとみなしているか。(有識者の部)
こちらの設問は自由回答方式とのことですが、「日本」と回答した理由と、「中国」と回答した理由ではあきらかに違いが見て取れます。「日本」と回答した理由のトップが「政治的な結びつき」なのに対し、「中国」と回答した理由のトップは「貿易・経済関係」。ただし、こちらの設問は2013年調査の数字だけが合算値で100%を超えているので、2013年の調査に関しては複数回答での結果ということになりそうです。
では、アジア地域の中で最も重要なパートナーとして、中国の名を最も多く挙げたそのアメリカ人は、どの程度が日本を信頼できる友邦であると考えているかを示したのが次の設問。
▼ 日本は信頼できる友邦であると考えるか。(一般の部)
▼ 日本は信頼できる友邦であると考えるか。(有識者の部)
一般の部、有識者の部、共に、「信頼できる」の回答が、かなり高い割合を示しています。
ちなみに下のグラフは「信頼できる友邦か否か」の設問に対する「信頼できる」と答えた割合を長期のスパンで示したもの。ブルーが一般の部で、オレンジが有識者の部。
まぁ、この結果を見る限りでは、一部で言われる「アメリカの日本離れ」は感じられません。
そして、最後は国防に関する調査結果を2つ。
最初は日米同盟に対する設問。
▼ 米国は現在の日米安全保障条約を維持すべきと考えるか。(一般の部)
▼ 米国は現在の日米安全保障条約を維持すべきと考えるか。(有識者の部)
一般の部、有識者の部、共に、「維持すべき」の回答が、「そうは思わない」の回答に大差をつける結果となっています。
続いての国防に関する設問は日本の軍備に対するもの。
▼ 日本は防衛力を増強すべきと考えるか。(一般の部)
▼ 日本は防衛力を増強すべきと考えるか。(有識者の部)
こちらも、一般の部、有識者の部、共に、「増強すべき」が「そうは思わない」を大きく上回っています。
以上のことから、日米同盟は堅持しつつも、日本及びアジアという視点では、日本の役割増を求めているというのがアメリカ人の多くが持つ意見なのかなといった印象。
■ 参照・引用・出典:外務省ホームページ
▼ 外務省 - 米国における対日世論調査(結果概要)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_000456.html
▼ 外務省 - 詳細結果データ (PDF) / 平成25年度「米国における対日世論調査」結果
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000022800.pdf
■ 追記
翌年の2014年度の調査では「アジアにおける米国の最も重要なパートナーはどの国か」との質問において、一般の部と有識者の部で共に「日本」とした回答が最も多い結果となっています。
一般の部では「日本」と回答した割合が46%(昨年35%)と最も多く、ついで「中国」が26%(昨年は39%)。又、有識者の部では「日本」と回答した割合は58%(昨年39%)で、次いで「中国」が24%(昨年43%)となっています。
▼ 外務省 - 米国における対日世論調査(平成26年度)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/p_pd/pds/page4_000838.html
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