実は、個人的に最も好きなライヴ・アルバムのひとつが、この"UK"のライヴ・アルバム「Night After Night / ナイト・アフター・ナイト(ライヴ・イン・ジャパン)」なのだ。
このアルバムを知るきっかけとなったのは、リリースされた当時にこの"Night After Night"が新譜として紹介されたNHK-FMの番組だったことは今でも覚えていて、特にその中の"Nothing to Lose"に強く惹かれたことがアルバム(LPレコード)購入に至った最大の理由だった。ただ、それまでの自分はといえば、"UK"というバンドは疎か、ジョン・ウェットンすら知らず、それ以前のジョン・ウェットンのプログレ歴のこともこのアルバムを買って始めて知ったという程度の認識しかなかったのだった。
アルバムの曲順については、実際のライヴとはかなり違いがあるようだが、それまでの"UK"を知らない自分にとっては1曲目が"Night After Night"なのは取っ付き易くて良かったように思う。実際、"Nothing to Lose"に惹かれたことは勿論のことながら、この"Night After Night"を最初に聴いて好印象だったことが、その後に続く曲も興味を持って聴くことができた要因でもあったように思うからね。そういえば、ギターが無くてもロックが成立し、トリオ編成でも素晴らしいサウンドが構築できることを知ったのもこのアルバムだった。
もしも、この後にニューアルバムがリリースされていたならば、迷うことなく買っていたと思うのだが、残念ながらバンドはこのアルバムを最後に解散してしまった。ライヴ・アルバムとはいえ、新曲が2曲収録されていたこともあり、バンドの解散は予想だにしなかった出来事だったが、当時はバンドが解散していたことも、その後の"Asia"結成のニュースで初めて知ったような記憶がある。
ということで、自分がその後、"Asia"に飛びついたのは、この"UK"で知ったジョン・ウェットンがメンバーに名を連ねていたからだったのだった。
その後、時代がレコード盤からCDに代わった後も、このアルバムをCDで聴きたいなとずっと思っていたのだが、タイミングが悪くて、買いたいと探していた時は廃盤になっていたりして中々買えずにいたのだが、ようやく買えたのが昨年の2014年に発売されたこちらのCDだった。
LPレコードで聴いてた時代は、A面の4曲ばかり聴いていたので、このCDを買ったときはLPレコードで言うB面の曲がけっこう興味深かったのだが、それでも、数十年ぶりに聴いても、A面の4曲にはやっぱりゾクゾク、ワクワクした。
それにしても、今聴いても古臭い印象が全く無い素晴らしいライヴ・アルバムだこと。今はこのようなライヴ・アルバムを最後に残してしてくれたことに感謝。個人的には、ここに収録されている楽曲はどれもがスタジオ・ヴァージョンを凌ぐサウンドだと思うし、アルバム自体も"UK"の代表作であり、スタジオ・アルバムを凌駕する名盤だと思っている。
▲ 飛行機の中で書かれたと記載されているが、ライナーノーツには、来日する直前に滞在していたカリフォルニアのホテルで作られていたことが記されている。ただし、来日直前に書かれた曲であることは確かなようなので、飛行機の中で多少手直しがされて完成に至ったということは有り得る話ではないかと思う。
ちなみに、アルバムは1979年5月30日の中野サンプラザでのライヴと、同年6月4日の日本青年館でのライヴから抜粋して編集されたもので、この再発盤に「+1」として収録されているボーナストラックの"When Will You Realize"は、シングル"Night After Night"のB面にのみ収録されていた曲。
ただ、復刻版ということで、帯はLPレコードの時と同じデザインで懐かしくていいのだが、日本盤LPの帯が復刻されているのに、ジャケットの方はイギリス盤の復刻とやや中途半端な印象。日本盤LPは見開きのダブルジャケットで、表の部分はエンボス加工がしてあった記憶があるので、恐らくはこの点がコストの面で影響して、ジャケットの方はシングルジャケットのイギリス盤の復刻というかたちになったのではないかと推測しているのだが、個人的には若干高くなってもダブルジャケットにしてほしかったところ。
ついでに補足しておくと、日本盤とイギリス盤のジャケットに関しては、他にも日本盤の方がイギリス盤に比べて青みが強い色合いのジャケットになっていたという点と、ジャケットの「U」の部分にあるエディ・ジョブソンの写真が異なる(日本盤はヴァイオリンを弾いている写真になっていた)という違いもある。
なお、復刻帯にもLPレコードの帯と同様に「ポスター付」との記載があるものの、帯を復刻しただけのようで、CDにはポスターは付いていない。折角復刻したのなら縮小版でもいいから付ければ良かったのにとは思うところ。
ちなみに、付属の帯はこの復刻されたLPの帯に加えて、別途CD用の帯も付いているので、開封する前は復刻帯の上にCDの帯が重ねられた状態になっている。
あと、CDに関しては、4曲目から5曲目に移る部分(LPレコードではA面からB面に切り替わる部分)のトラック割りがちょっと変で、LPレコードだとA面最後の4曲目がフェードアウトして終わり、B面1曲目である5曲目は歓声がフェードインして始まるところが、このCDでは、4曲目がフェードアウトした後の若干の無音部分を挟んで5曲目がフェードインし始めるところまでが4曲目になっているのだ。なので、5曲目も歓声がフェードインして始まるのではなく、切れた状態で始まることになる。まぁ、通して聴けば問題無いのだが、この曲だけを聴こうとするときは多少変な感じになってしまう。
それと、このアルバムもそうだが、ライヴ・アルバムでは曲の始まり部分でトラック割りしてある場合が意外と多くて、曲紹介のMCが前の曲の終り部分に含まれることになるのは多少違和感があるところ。これもアルバムを通して聴けば問題無いのだが、特定の曲だけを聴こうとする場合などは盛り上がりに欠けるような感じが無きにしも非ず。
でも、ボーナストラックの"Will You Realize"にも、聞き取りというかたちで歌詞と対訳を付けられているのは良心的かなと。
収録曲について言えば、前半の1曲目~4曲目(LPレコードではA面)がどちらかというとポップでメロディックなサウンドなのに対し、後半の5曲目~9曲目(LPレコードではB面)は、変拍子を交えたテクニカルなプログレ色が前面に出たサウンドになっており、前半と後半(LPレコードではA面とB面)で曲調が色分けされているのが面白いところ。
それに、新曲が収録されていると先にも書いたように、アルバムタイトルにもなっている1曲目の"Night After Night"と、4曲目の"As Long as You Want Me Here"はこのアルバムでしか聴けない曲だというのも、このアルバムならではの魅力であり特徴。しかも、どちらも魅力的な曲であるところがこのアルバムを更に特別なものにしている要素になっているようにも思う。
新曲以外では、エレクトリックピアノが美しい旋律を奏でる2曲目の"Rendezvous 6:02"もこれまた大好きな曲で、ソロパートに於ける分厚いシンセサウンドも魅力的。
そして、このアルバムを買うきっかけとなった曲であり、アルバムではハイライトのひとつでもある"Nothing to Lose"は勿論今でも最も好きな曲のひとつで、スタジオ・ヴァージョンよりも長くなっているバイオリンソロが聴き所なのは勿論のこと、ライヴではエディ・ジョブソンがキーボードを離れてバイオリンに持ち替える動作が入るため、バイオリンソロの前にベースとドラムによるタメがあって、そこがまたカッコイイんだよね。それに、キーボードからヴァイオリンへ、そして、再びキーボードへと動き回るライヴでのエディの様子が想像できるのも楽しいところ。
5曲目以降は、こちらも先に述べたように、変拍子を交えたテクニカルなプログレ風楽曲が続くのだけれど、アルバム前半で見られるような親しみ易い曲がありながらも、こういった面をベースに持ち合わせているのが、実は"UK"最大の魅力なのではないかと思う。当時は前半の曲に比べて聴く機会は少なかったのだが、スリリングで壮絶な演奏が畳み掛けるように展開される様は圧巻。
なお、アルバムに収録されている新曲以外の曲は、2、3、9曲目が「Danger Money / デンジャー・マネー」 (1979)から。そして、5曲目~8曲目までの4曲が「U.K. / 憂国の四士」 (1978) からとなっている。
最後の"UK"コールが、フェードアウトじゃなく、エコーと共に突然終わってしまうのも、今にして思えば、何だかバンドの運命を象徴しているようで感慨深いものがある。解散してしまって、本当に残念ではあるのだが、この解散がなければ"Asia"の誕生も無かっただろうし・・・複雑な心境。
UK - BAND MEMBERS (Listed on Back Cover)
• Eddie Jobson (エディ・ジョブソン) - Keyboards and Electric Violin
• John Wetton (ジョン・ウェットン) - Lead Voice and Bass Guitar
• Terry Bozzio (テリー・ボジオ) - Drums and Percussion
TRACKLIST (2014 Japanese Reissue Edition)
1. Night After Night / 2. Rendezvous 6:02 / 3. Nothing To Lose / 4. As Long As You Want Me Here / 5. Alaska / 6. Time To Kill / 7. Presto Vivace / 8. In The Dead Of Night / 9. Caesar's Palace Blues / 10. When Will You Realize (Bonus Track)
1. ナイト・アフター・ナイト(新曲) / 2. ランデブー 6:02 / 3. ナッシング・トゥ・ルーズ / 4. アズ・ロング・アズ・ユー・ウォント・ミー・ヒア(新曲) / 5. アラスカ / 6. タイム・トゥ・キル / 7. プレスト・ヴィヴァーチェ / 8. イン・ザ・デッド・オブ・ナイト / 9. シーザーズ・パレス・ブルース / 10. ホエン・ウィル・ユー・リアライズ (ボーナス・トラック)
※ LP時代の邦題
6. 「タイム・トゥ・キル」 → 「時空の中に」 / 8. 「イン・ザ・デッド・オブ・ナイト」 → 「闇の住人」
別にわざわざカタカナ表記に変更しなくてもいいのにとは思うところ(復刻ミニチュア巻き帯に書かれた曲目にはLP時代の邦題がそのまま記されている)。
NOTES
• Recorded at Nakano Sun Plaza (30 May 1979) and Nippon Seinen Kan (4 June 1979), Tokyo, Japan.
• Single: "Night After Night" (B-Side: "When Will You Realize")
■ ナイト・アフター・ナイト(ライヴ・イン・ジャパン)+1
• 初回限定盤(紙ジャケット+日本初回盤LP復刻ミニチュア巻き帯+ボーナストラック)
• CD発売日:2014年9月24日(再発盤)
• 解説・歌詞・対訳付(ボーナストラックを含む)
UK - Nothing To Lose (Music Video)
UK - Rendezvous 6:02 (Music Video)
UK - Night After Night / Caesar's Palace Blues (TV Live Performance 1979)
[Audio]
▼ UK - Night After Night (Night After Night / Live in Japan)
https://www.youtube.com/watch?v=CdxPIrQZjYw
▼ UK - Nothing To Lose (Night After Night / Live in Japan)
https://www.youtube.com/watch?v=6tSDoNcbaFE
▼ UK - As Long As You Want Me Here (Night After Night / Live in Japan)
https://www.youtube.com/watch?v=J1KYgQKFc18
[関連記事]
▶ Asia 「詠時感~時へのロマン」 (1982) / Asia
▶ Anthologia 「アンソロジア~20th アニヴァーサリー・コレクション」 (2002) / Asia
▶ Phoenix 「フェニックス」 (2008) / Asia
▶ Gravitas 「グラヴィタス~荘厳なる刻(とき)」 (2014) / Asia
▶ R.I.P. John Wetton / ASIA Official Website (2017)
▶ Symfonia - Live in Bulgaria 2013 「シンフォニア~ライヴ・イン・ブルガリア 2013」 (2017) / Asia
ジョン・ウェットンとジェフ・ダウンズが提供した楽曲"We Move as One"を収録
▶ Eyes Of A Woman (1985) / Agnetha Fältskog [ex-Abba]
0 件のコメント:
コメントを投稿