2013/07/09

ASTRA 「アストラ」 / ASIA (1985)

Album Cover (front and back): Astra / Asiaこの「Astra / アストラ」は、前作の「Alpha / アルファ」から2年の歳月を経てリリースされたエイジアの3rdアルバム。ただ、"Alpha"リリース後にヴォーカルとベースのジョン・ウェットンが脱退、そして復帰。しかし、今度はギタリストのスティーヴ・ハウが脱退、そして、新メンバーのギタリスト、マンディ・メイヤーの加入といった具合に、グループ内のゴタゴタが続き、バンドとしては決して良好と言えるような状態ではなかったようだ。それでも、そんな状況を経て制作されたことを感じさせないくらいにアルバムの完成度は高く素晴らしい出来なのだ。

ただ、当時は、前作の"Alpha"に比べると、聴く機会は少なく、実のところ、この"Astra"のアルバムとしての魅力に気付いたのは比較的最近で、それは、2008年の復活第一弾アルバムの"Phoenix"購入後に過去のアルバムを併せて聴く機会が増えるようになってからのことだった。当時はアルバムを買ったものの、頻繁に聴いていたのは2曲目の"Voice Of America"と4曲目の"Wishing"だけだったように思う。

マンディ・メイヤーのギターサウンドが前任のスティーヴ・ハウに比べてソリッドでハードロック寄りということもあってか、前2作よりも何処となく新鮮な印象があるのだが、もしかしたら、当時はその部分が今一つ惹きつけられなかった理由のひとつでもあったのかもしれない。

残念ながら、セールスの面では前2作よりも低調で、当時は「あれだけの作品で売れなければどうしろというんだ」といったジョン・ウェットンの嘆き節も聞かれたほどだった。

今にして思えば、これだけのクオリティーを持ったアルバムが評価されなかったことがとても残念だし、そういった意味では、当時の自分も、いったい何を聴いていたんだという思いにも駆られる。

シングルカットもされたオープニングの"Go"はアルバム全体のドラマティックでスリリングな展開がこの1曲に凝縮されたような曲で、当時はどうしてそれほど好きではなかったのか自分でも不思議に思うくらいに今では好きな曲となっている。

 

▼ Asia - Go

https://www.youtube.com/watch?v=OubZVZyl2ww

 

続く"Voice Of America"は当時から好きだった曲で、前作"Alpha"の2曲目に収録されていた"The Smile Has Left Your Eyes"と同タイプのバラード曲といった感じだが、こちらも負けず劣らずの出来。当時は次作のコンピレーション・アルバム"Then & Now"に唯一選ばれた"Astra"からの曲だったこともあり、てっきりシングルカットされてヒットしたのだと思い込んでいた。

4曲目の"Wishing"も当時から変わらず好きな曲で、"E.L.O."の"Confusion"や、"ABBA"の"Knowing Me, Knowing You"などと同様に、こういったメロディックなミドルテンポの曲は個人的に大好きなんだよね。何処となくアジアンティックな印象のある曲だが、キーボードの音とギターの音がメロディーとマッチしていてとても心地良く、後半のコーラス・ハーモニーも印象的で気に入っている。

 

▼ Asia - Wishing

https://www.youtube.com/watch?v=ftal5KNbiOw

 

レコードではA面とB面のラストを締めくくる5曲目の"Rock and Roll Dream"と、10曲目の"After The War"は共に静と動の対比が見られる大作感のある曲で、"Rock and Roll Dream"では"E.L.O."でお馴染みのルイス・クラークがアレンジャーを務めるロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラが共演しており、シンフォニックなサウンドが曲に彩と躍動感を与えている印象。又、"After The War"は曲の構成と展開がスリリングで、ついつい引き込まれるような魅力を持ったアルバムのラストに相応しい曲。"Go"同様に、この曲も、どうして当時はそれほど好きではなかったのか不思議でならない。

 

▼ Asia - After the War

https://www.youtube.com/watch?v=cLvcddO1M6c

 

それ以外の曲も、それぞれに存在意義があることを感じさせられる出来で、どの曲も一本調子ではなく、メリハリがあり、聴き手を飽きさせないスケール感溢れる作りになっていると思う。ちなみに、個人的には、9曲目の"Suspicion"が何処となくアルバムのアートワークに一番近い印象がある。とにかく、全編を通して編曲とアレンジも相当練られて制作されたことがうかがい知れるアルバムでもある。

 

▼ LPレコードの帯

LPレコードの帯:アストラ / エイジア

 

▼ レコード盤のラベル

レコード盤のラベル:Astra / Asia   レコード盤のラベル:Astra / Asia

 

▼ おまけのステッカーセット(6種類)

ステッカーセット(6種類):Astra / Asia   ステッカーセット + ジャケット + 歌詞カード:Astra / Asia

 

それにしても、今聴いても色褪せることのないクオリティーを持ったアルバムだなぁ。冒頭で述べたことの繰り返しになるが、ほんと、どうして当時は乏しいセールで終わったのかが不思議であると同時に、何故に自分もこのアルバムの魅力に気付けなかったのだろうという思いがある。

そして、自分自身は、アルバムをひとつの作品として捉えるのであえば、もしかしたらエイジアのアルバムの中では、この"Astra"こそが最もまとまりのあるアルバムなのかもしれないと近年思うようになった。できることならジョン・ウェットンに伝えたい。決してあなたは間違っていなかったと。

ちなみに、当初予定されていたタイトルは"Arcadia"で、当時は音楽雑誌でもニューアルバムのタイトルとしてこの名前が挙がっていたことを覚えているが、リリース前にデュラン・デュランのメンバー3人で結成された同名のグループがデビューすることが発表されたため、タイトルが"Astra"に変更されたという経緯があるようだ。

アルバムは、米(67位)、英(68位)。そして、シングルカットされた"Go"は、米(46位)を記録している。

 

TRACKLIST (LPレコード)
Side One: 1. Go / 2. Voice Of America / 3. Hard On Me / 4. Wishing / 5. Rock And Roll Dream
Side Two: 1. Countdown To Zero / 2. Love Now Til Eternity / 3. Too Late / 4. Suspicion / 5. After The War

NOTES
• Rock and Roll Dream: features the Royal Philharmonic Orchestra with Louis Clark

ASIA - BAND MEMBERS
• Geoff Downes - Keyboards
• Mandy Meyer - Guitar
• Carl Palmer - Drums
• John Wetton - Vocals and Bass Guitars

 

 

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エイジア結成以前にジョン・ウェットンが在籍していたバンド
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ジョン・ウェットンとジェフ・ダウンズが提供した楽曲"We Move as One"を収録
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