2016/08/04

SYMPHONY 「神々のシンフォニー」 / SARAH BRIGHTMAN (2008)

CDの帯(初回プレス盤):神々のシンフォニー / サラ・ブライトマンAlbum Cover (front): Symphony / Sarah Brightman  Album Cover (back): Symphony / Sarah Brightman  CD: Symphony / Sarah Brightman

このサラ・ブライトマンのアルバム「Symphony / 神々のシンフォニー」は以前から取り上げようと思っていたものの、このアルバムの素晴らしさを上手く伝えることが難しそうで、中々記事にすることができずにいたんだよね。

いや~、それにしてもこれだけ魅力的な楽曲が揃った充実度の高いアルバムにはそうそうお目にかかれるものではないと思う。アルバム全体の印象としては「荘厳」、「幻想的」、「ドラマティック」といったような言葉が思い浮かぶものの、スケール感溢れるシンフォニックなサウンドと、力強くも繊細な美しさを併せ持ったサラ・ブライトマンの歌声が融合して奏でられる音の世界はほんと言葉では言い表せないほどに感動的であり圧倒されるものだ。

私自身は、アルバムのイントロダクション的な1曲目の「Gothica / ゴシックの夢」から、シンフォニック・メタルやゴシック・メタルの様式を取り入れたような雰囲気のある2曲目の「Fleurs Du Mal / 嘆きの天使」へと流れるようにメドレーで続く、冒頭のこの2曲で一気に引き込まれたのだが、サラ・ブライトマンのようなクラシカル・クロスオーバー・サウンドにあまり興味が無くても、このオープニングの2曲はロック系が好きな人も割と受け入れやすいんじゃないかなと思う。特に壮大でドラマティックなロックが好きな人はこの曲の魅力を感じてもらえるのではないかと。

ちなみに、ゴシック・メタルの雰囲気が漂うようなアルバムのジャケットは、この"Fleurs Du Mal"からイメージして制作されたとのこと。又、1曲目のタイトルが"Gothica"で、アルバムの最後には曲目としてクレジットされていないものの、シークレット・トラックのようなかたちで"Gothica"~"Fleurs du Mal"へとメドレーで続く2曲のリプライズとも言えるような曲が収録されていることからして、恐らくはこの「ゴシック」というものがアルバムのひとつのテーマとしてあるのではないかとも思われる。

そして、これに続く3曲目のアルバムタイトル曲「Symphony / シンフォニー」がこれまた素晴らしいのだ。シンフォニックで壮大なスケールのバラードに心が洗われるかのよう。

と、冒頭の3曲だけでも十分に感動的であり、このアルバムの凄さを予見できるのだが、4曲目の「Canto Della Terra / 大いなる世界」では更なる感動が待ち受けているのだ。イタリアを代表するテノール歌手アンドレア・ボチェッリとのデュエット曲でもあるこの曲の圧倒的なスケール感ときたら・・・。ここまで立て続けに来ると、素晴らしすぎて、もはや言葉が見つからないほど。

壮大なスケールの曲が続いた後は、これまでとは趣が変わって、静寂が訪れるかのように幻想的で神々しい「Sanvean / サンヴィーン」が5曲目に収録されている。

そして、6曲目に待ち構えているのは、なんとキッスのポール・スタンレーとのデュエット曲である「I Will Be With You (Where The Lost Ones Go / ビー・ウィズ・ユー ~いつもそばに~」。この曲、元々はポケモンの劇場版映画10作目の記念作品「ポケットモンスター ダイヤモンド&パール ディアルガVSパルキアVSダークライ」のエンディング・テーマ曲をアルバム制作中に依頼受けて提供されたもので、そういった理由から、アルバムよりも一足先にお目見えした曲ではあったのだが、その映画版はクリス・トンプソンとのデュエット曲だったものの、アルバムではハードロックバンドのシンガーとデュエットしたいとのサラの希望もあり、ポール・スタンレーとのデュエットが実現したとのこと。

人選についてはサラの声との相性というものも考慮されて検討されたらしく、結構難航したようだが、サラ自身はポールが以前にミュージカル「オペラ座の怪人」の舞台でファントム役を演じたことを知っていたらしいので、もしかしたら、そういったこともポールが選ばれた理由のひとつなのかもしれない。まぁ、これまでも、様々なジャンルのそうそうたるシンガーと共演してきたサラがデュエットする相手に選んだということは、ポールのシンガーとしての実力を認めてのことなんだろうね。ちなみに、最終的な人選はサラとプロデューサーの2人で行ったとのこと。

7曲目の「Schwere Traume / シュヴィア・トローメ」は、再び前曲とは打って変わってクラシカルな雰囲気が漂う曲。それもそのはず、この曲はマーラーの交響曲第五番をベースに歌詞を加えて作られた曲なのだ。神秘的で美しい曲。

8曲目の「Sarai Qui / サライ・クイ」は、映画「パール・ハーバー」の主題歌として使われたフェイス・ヒルの大ヒット曲"There You'll Be"のカヴァーで、これまた壮大なアレンジで感動的なクラシック風の曲へと仕上がっている。又、この曲は、イタリア出身の人気テノール歌手アレッサンドロ・サフィナとのデュエット曲となっており、曲のタイトルは元より、歌詞も全編イタリア語に変えられている。サラ曰く、「イタリア語にしたのは、その方がクラシックの歌い方に合うから」だそうだ。

続く9曲目の「Storia d'Amore / 愛の物語」もカヴァー曲で、こちらもまた前曲と同様に曲のタイトルと歌詞がイタリア語に変えられている。クラシック調の穏やかな雰囲気が心に安らぎを与えてくれるかのような優美な曲。ちなみに"Storia d'Amore"とは英語の"Love Story"のことで、つまりは「愛の物語」という邦題も、それを日本語にしたものがそのまま付けられているということになる。なお、原曲のタイトルは"I Will Return"。

10曲目の「Let It Rain / レット・イット・レイン」では前曲とは趣も変わって、どちらかといえばポップス寄りの曲で、サラの歌い方も曲調に合わせるかのようにポップス寄りの歌唱法がとられているように感じる。アルバムの解説には、サラ自身の言葉として「ゴシックの雰囲気がある曲」と記されている。

11曲目では再びクラシック・スタイルの曲が登場。19世紀のイタリアのオペラ作曲家の曲に新たな歌詞を加えて制作されたこの「Attesa / アテッサ」ではクラシック的というかオペラにも通じるような圧倒的な歌唱力が存分に披露されている。

12曲目の「Pasion / パシオン」は、中南米で絶大な人気を誇るアルゼンチン出身のカウンター・テナー、フェルナンド・リマとのハーモニーが奏でられるデュエット曲。最初に聴いたときは女性だとばかり思っていたフェルナンド・リマの甘く美しい声と、どこか切なげなラテン調の哀愁漂うメロディーがリサの声と相まって、これまた素晴らしい出来栄え。

この"Pasion"については、一見、ゴシックとは関係の無い曲のようにも思えるが、カウンターテナーの始まりが中世のヨーロッパだったことを考えると、もしかしたらゴシックというテーマが無かったら実現しなかったデュエットなのではないかとも思える。まぁ、これは勝手な推測なんだけどね。

※ 補足
カウンターテナー(ウィキペディアより抜粋)
中世のヨーロッパにおいては「女性は教会では黙すべし」という掟により、女性が教会や舞台の上で歌うことは禁じられていた。そこで、教会の聖歌隊では高音のパートつまり、ソプラノとアルトを、ボーイソプラノが担当していた。しかし、表現力に乏しく響きの弱いボーイソプラノのかわりに、アルトは成人した男性がファルセットを使って歌うようになった。これがカウンターテナーの始まりである。これは、特にイギリスの聖歌隊において伝統的に今でも続けられている。

アルバムの最後となる13曲目「Running / ランニング(ジュピター ~ 栄光の輝き)」は、ホルストのジュピター(木星)をモチーフにして組み立てられた曲。まぁ、自分の場合はジュピターというよりも「暴れん坊将軍」のイメージの方が強いのだが、これもまたアルバムのハイライトのひとつと言えるようなアルバムの最後を飾るに相応しい曲であり、日本では最も有名なサラ・ブライトマンの曲のひとつ"A Question of Honour"に通じるような展開が見られる曲。ちなみに、アルバムの解説書には、曲の中盤ではゴシック・ロックのフィーリングを加えているとのサラの言葉が載せられている。

なお、14曲目には日本盤のみのボーナス・トラック曲で、坂本龍一と元ジャパンのデヴィッド・シルヴィアンが共作した「Forbidden Colours / 禁じられた色彩 ~ 戦場のメリークリスマス」のカヴァーが収録されているのだが、サラが歌うとまた違った趣があり、これも中々面白い。

又、冒頭の方でも述べたように、曲名としてはクレジットされていないが、14曲目のトラック内には"Forbidden Colours"の後に約1分の空白を挟んで、1曲目の"Gothica"~2曲目の"Fleurs du Mal"へとメドレーで続くこれら2曲のリプライズと呼べるような曲がシークレット・トラックのようなかたちで収録されている。

 

Album Cover (front): Symphony / Sarah Brightman

 

Booklet: Symphony / Sarah Brightmanブックレット内には表紙と同じイメージで制作されたゴシック・メタルの世界観に通じるような写真が掲載されており、ブックレット自体も光沢のあるコーティングされた紙が使用されているなどゴージャスな雰囲気。

又、そういったことからも、中世ヨーロッパのゴシック建築やゴシック絵画に通じる美学と呼べるものがサウンドと一体となって表現されているといった印象がある。

収録曲のクオリティーについては、これまでにも述べているように、とにかく、アルバムの随所に聴き所があり、全体の充実度はほんと半端無いといった感じ。又、収録曲にはそれぞれに光と影の役割が与えられているかのような印象もあり、全体を通して陰影といったものも感じられる。加えて、多彩なデュエット曲が収録されていることも、アルバムの世界観を広げることに一役買っているといった印象。

なお、日本盤には1曲ごとの解説があり、曲の生い立ち等が記されているので、自分の場合は、それぞれの曲を更に理解し、深く味わうことに役立って、中々良かった。

 

CDの帯:神々のシンフォニー / サラ・ブライトマンTRACKLIST (Japanese Edition)

1. Gothica / ゴシックの夢
2. Fleurs Du Mal / 嘆きの天使
3. Symphony / シンフォニー
4. Canto Della Terra / 大いなる世界
5. Sanvean / サンヴィーン
6. I Will Be With You (Where The Lost Ones Go) / ビー・ウィズ・ユー ~いつもそばに~
7. Schwere Träume / シュヴィア・トローメ
8. Sarai Qui / サライ・クイ
9. Storia d'Amore / 愛の物語
10. Let It Rain / レット・イット・レイン
11. Attesa / アテッサ
12. Pasión / パシオン
13. Running / ランニング(ジュピター ~ 栄光の輝き)
14. Forbidden Colours [Bonus Track for Japan] / 禁じられた色彩 ~ 戦場のメリークリスマス [日本盤ボーナス・トラック]

 

NOTES

• Canto della Terra - Duet with Andrea Bocelli
• I Will Be with You (Where the Lost Ones Go) - Duet with Paul Stanley
• Sarai Qui - Duet with Alessandro Safina
• Pasion - Duet with Fernando Lima

• Hidden Track - Gothica / Fleurs du Mal (Reprise)
• 日本盤の"Hidden Track"(シークレット・トラック)は、日本盤ボーナス・トラック「Forbidden Colours / 禁じられた色彩 ~ 戦場のメリークリスマス」と同一トラック内の最後に収録

• 日本盤初回プレスCD(ジュエル・ケース仕様タイプ) [Japanese First Pressing CD]
• 解説・歌詞・対訳付

• US 13位 / UK 13位

 

▼ Sarah Brightman - Symphony (Promotion UK)

https://www.youtube.com/watch?v=0Kjm4SKy8hQ

 

▼ Sarah Brightman - Gothica / Fleurs Du Mal

https://www.youtube.com/watch?v=cOllWAhZhXY

 

▼ Sarah Brightman (Duet with Fernando Lima) - Pasión

https://www.youtube.com/watch?v=NYiNNlfYAMw

 

[Official Audio]

▼ Sarah Brightman - Symphony
https://www.youtube.com/watch?v=5Lz-GFV3OPA

▼ Sarah Brightman - Running
https://www.youtube.com/watch?v=IqdNgsDfQgE

▼ Sarah Brightman (Duet with Paul Stanley) - I Will Be With You (Where The Lost Ones Go)
https://www.youtube.com/watch?v=EBGLSw-9ZFM

 

おまけ

以下の動画は、恐らくは日本で最も有名なサラ・ブライトマンの曲なのではないかと思われる「A Question Of Honour / クエスチョン・オブ・オナー」のオフィシャル・オーディオ。このアルバムの収録曲ではないのだが、サラ・ブライトマンという歌手を良く知らないという人でも、この曲を聴けば、あ~なるほどと思う方も多いのではないかと思うことから、ここに加えてみた。特にサッカー好きの人は多分聞き覚えがあるのではないだろうか。曲の前半ではいや知らないと思っていても2:00過ぎあたりから聴けば、きっと、あ~知ってるとなると思う。

 

▼ Sarah Brightman - A Question Of Honor (Radio Edit)

https://www.youtube.com/watch?v=QBQlcq_HSdg

 

※ 補足(ウィキペディアより参照・引用)
"It's not a question of life or death, it's a question of honour." (生きるか死ぬかの問題ではない。名誉の問題である。)という言葉は騎士道の精神を現す表現である。又、本曲では「あなたが勝とうが負けようが、それは名誉の問題」と歌われており、勝敗より名誉を重んじる伝統的な「騎士道精神」を踏襲した歌詞になっている。

 

 

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