1978年の"Double Platinum"、1982年の"KISS Killers" (アメリカ未発売)に続くキッスのベスト・アルバムがこの"Smashes, Thrashes & Hits"(邦題はグレイテスト・キッス)。
その後の1997年にオリジナル・タイトルが"Greatest KISS"という名のベスト・アルバムがリリース(日本では1996年に先行発売)されたので紛らわしいのだが、そちらの邦題は「グレイテスト KISS リマスター」となっている。ということで、この2枚のベスト・アルバムは同じような邦題になってはいるもののアルバムとしては全くの別物ということになる。
どちらかと言うと、比較的地味な印象のあるベスト・アルバムだが、アメリカでは200万枚のセールスを記録し、"RIAA"からダブルプラチナムの認定を受けている(米21位、英62位)。
アルバムの目玉は1曲目と2曲目に収録されている2曲の新曲と、エリック・カーがリードヴォーカルをとる"Beth"が収録されているということになると思うのだが、でも、当時はまさかこういう形でエリック・カー初のリードヴォーカル曲を聴くことになるとは思ってもみなかったので、驚かされると同時に、ちょっぴり複雑な心境でもあった。
新曲として収録されている"Let's Put The X In Sex"と"(You Make Me) Rock Hard"の2曲については、どちらもシングル向きといったキャッチーな曲で、実際に"Let's Put The X In Sex"はシングルカットもされている(米97位)。
ということで、ベスト・アルバムとはいっても、2曲の新曲とエリック・カーがヴォーカルをとる"Beth"は他のアルバムには収録されておらず、今のところはこのアルバムでしか聴けないというところにこのアルバムの存在意義もあるのだが、実はこのアルバムならではの魅力が他にもある。
それは、過去の楽曲の多くがリミックスされており、このアルバムでしか聴けないヴァージョンが数多く含まれているという点。しかも、どれもが好感が持てるリミックスで、けっこう良いヴァージョンも含まれているのだ。
まずは、新曲の後に続く"Love Gun"。この曲はオリジナルとの違いが分かり易く、大きな違いは後半にギターソロのパートが加わったこと。とは言っても、実際はオリジナルのヴァージョンにあるヴォーカル及びバッキングヴォーカルのパートが取り除かれたことによりギターソロのパートが加わったかのような構成になっているわけなのだが、それでもライヴ・ヴァージョンに近い雰囲気があり、個人的にはけっこう気に入っている。又、ドラムの音も聴いて直ぐに分かるくらいに抜けが良くなっているし、ギターの音もけっこう手が加えられており、マシンガンのように連打する部分なども迫力が増している。
続く"Detroit Rock City"は、どちらかといえば"Double Platinum"に収録されているヴァージョンに近いのだが、それでも"Double Platinum"でのヴァージョンのようにヴォーカルが加工されたり、ギターソロの部分にバッキングヴォーカルが加えられたりしていない分、こちらのヴァージョンの方が好感が持てる。分かりやすく言えば、オリジナル・ヴァージョンから効果音だけをカットしたような雰囲気。
"Deuce"と"Strutter"は、これ又、一聴して直ぐに分かる程ドラムの音の抜けが良くなっており、かなり新鮮なイメージがする。更に"Deuce"の方は、エンディング部分のギターソロも長くなっており、カッコ良さ倍増。
"Calling Dr. Love"は、イントロ部分に"Double Platinum"のヴァージョンのようなギュイーンというギターの音が加えられている以外にはオリジナルとの違いはあまり感じられない。
"Rock And Roll All Nite"も一聴して直ぐに分かる程にドラムの音の抜けが良くなっている為、こちらも又"Deuce"や"Strutter"と同様にけっこう新鮮に聴こえるし、随分と音が良くなった印象がする。様々な年代の楽曲と混ぜて聴く場合などは、こちらのヴァージョンの方が時代と音質による違和感が軽減されていいかも。又、フェードアウトして終わる最後の部分にはオリジナルには無い細かい演出も加えられている(もしかしたら元々あった部分で、オリジナル・ヴァージョンではカットされていたのかも?)。
そして、ラストの"Shout It Out Loud"だが、こちらはオリジナルとは全く違ったエンディングになっており、"Shout It"のコーラスで曲が終わる編集がされている。その他では、後半のコーラス部分が拡張されているので、オリジナルと比べて曲の時間が多少長くなっている点が特徴。又、この曲もドラムの音の抜けが良くなっている為、とても新鮮な印象がする。
あと、"I Love It Loud"は、"Creatures of the Night"のリミックス盤に収録されていたもの(軽めのサウンド)と同一のヴァージョンだと思う。
TRACKLIST
1. Let's Put The X In Sex (新曲) / 2. (You Make Me) Rock Hard (新曲) / 3. Love Gun [Remix] / 4. Detroit Rock City [Remix] / 5. I Love It Loud [Remix] / 6. Deuce [Remix] / 7. Lick It Up / 8. Heaven's On Fire / 9. Calling Dr. Love [Remix] / 10. Strutter [Remix] / 11. Beth [with Eric Carr Vocal] / 12. Tears Are Falling / 13. I Was Made For Lovin' You / 14. Rock And Roll All Nite [Remix] / 15. Shout It Out Loud [Remix]
NOTES
• CD発売日:1991年12月15日(再発盤 / Japanese 2nd Pressing)
• 解説・歌詞・対訳付
▼ KISS - Love Gun (Smashes, Thrashes & Hits Version)
https://www.youtube.com/watch?v=d2W7k-mBw5U
▼ KISS - Beth (with Eric Carr Vocal) (Smashes, Thrashes & Hits Version)
https://www.youtube.com/watch?v=4w6lMjc-VFU
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