2017/10/05

LOVE GUN 「ラヴ・ガン」 / KISS (1977)

CDの帯:ラヴ・ガン / KISSAlbum Cover (front): Love Gun / KISSキッス通算7作目(ライヴ・アルバムの「KISS Alive! / 地獄の狂獣」を含む)のアルバムであるこの「Love Gun / ラヴ・ガン」は、予約だけで100万枚のオーダーを超え、リリース前から既にプラチナムが確定していたという正に絶頂期と言える時期のアルバム。

アルバムの内容に関しては、前作の「Rock and Roll Over / 地獄のロック・ファイアー」からわずか7か月後にリリースされたことからも分かるように、勢いそのままに余裕で作り上げたアルバムといった雰囲気があり、ビルボード・チャートでは過去最高位となる4位を記録するなど、前作を上回る成果を収めてはいるものの、収録曲のクオリティーには幾分バラつきが感じられ、収録曲の充実度という点では前作よりもやや劣るといった印象が無きにしも非ずといったところ。

ただし、以前に「Monster / モンスター ~ 地獄の獣神」の記事でも書いたことだが、このアルバム"Love Gun"は、レコードで言うA面とB面の1曲目にそれぞれ"I Stole Your Love"、"Love Gun"という強力な2曲が収録されているが故に、特別な存在感があるのだ。

自分がこのアルバムをレコードで買った当時は、サウンド以前にアルバムのジャケットで新たなコスチュームが披露されたことが大きな興味の対象でもあったわけだが、新たに"I Stole Your Love"と"Love Gun"という名曲が誕生したことに興奮すると同時に、こんなカッコいい曲を次々と作り出すポールはやっぱり凄いなと感心していたのだった。

と、その"Love Gun"と並んで、このアルバムの代表曲と言えるオープニングの"I Stole Your Love"について言えば、ギターソロのパートは、前半をポールが弾き、後半をエースが弾くという、前作"Rock and Roll Over"のオープニング曲「I Want You / いかすぜあの娘」でも見られた展開が継承されている。

ジーンの曲では、何処となく不気味な雰囲気が漂う"Almost Human"が当時から好きだった。ライヴでも演奏されないし、あまり目立たない曲ではあるが、ジーンのキャラクター・イメージに合った曲で、中盤と後半にある継ぎ接ぎ風の荒々しいギターソロのパートなんかはヘッドフォンで聴くと頭の中でギターの音がグルグルと回って中々面白い。

その他にも、エースが初めてリード・ヴォーカルをとる曲となった"Shock Me"や、キッスにとってはファースト・アルバムの"Kissin' Time"以来となるカヴァー曲"Then She Kissed Me"が取り上げられているなど、ファンの興味を引くようなサプライズ的要素も含まれている。

なお、そのカヴァー曲である"Then She Kissed Me"は、'60年代のガールズ・グループであるクリスタルズのヒット曲で、原題は"Then He Kissed Me"。キッスは男性のグループということもあり、キッスのヴァージョンでは"He"が"She"に変えられている。

ちなみに、アメリカのサーフ・ロック・グループであるビーチ・ボーイズもこの曲をカヴァーしているが、ビーチ・ボーイズのヴァージョンではタイトルが"Then I Kissed Her"になっている。

それと、ファースト・アルバムの"KISS"に収録されている「Love Theme from Kiss / キッスのテーマ」でも感じたことなんだが、このカヴァー曲"Then She Kissed Me"も又、レコード盤のラベルにカサブランカ・レコードのロゴと共に描かれている砂漠の中の宮殿やラクダ、ヤシの木といった絵柄と妙にマッチした印象が当時からあった。なお、この"Then She Kissed Me"、オーストラリアではシングルカットされて78位を記録している。

 

Album Cover (front): Love Gun / KISS

 

このアルバムでエースが初めてリード・ヴォーカルをとったことにより、全員が曲を書き、全員がヴォーカルをとるというバンドのスタイルが確立されたわけだが、バンド内ではエースとピーターがアルコールやドラッグに溺れ、バンドとしては最悪の状態だったようだ。後にジーンは、4輪駆動のバンドだったのが、いつしか2輪駆動になってしまったといったようなことを語っていた。

又、同様に、後にジーンが明かした"Christine Sixteen"と"Got Love For Sale"はデモ・セッションの段階ではエドワード、アレックスのヴァン・ヘイレン兄弟が演奏してたという事実も興味深いところで、そのジーン曰く、"Christine Sixteen"のソロ・パートはエドワード・ヴァン・ヘイレンが弾いていたフレーズをそのままエースが弾いているとのこと。

担当する楽器を見てみると、アルコールやドラッグに溺れていたエースがギターで、ピーターがドラムス。片や、ヴァン・ヘイレン兄弟の方は、エドワード・ヴァン・ヘイレンがギターで、アレックス・ヴァン・ヘイレンがドラムスといったように、もしも歯車が噛み合う事態に状況が流れていたならば、両バンドというか、アメリカン・ロックの歴史も変わっていたかもしれない。

その後、キッスが1982年に「Creatures of the Night / 暗黒の神話」をリリースした頃に、ジーンがエドワード・ヴァン・ヘイレンと会って食事をした際、バンド内のいざこざに飽き飽きしていたエドワード・ヴァン・ヘイレンの口から「キッスに加入したい。もうロスとは争いたくない。ウンザリだって言われた」と、ローリング・ストーン誌のインタビューでジーンが答えていることから、実際、エドワード・ヴァン・ヘイレンはキッスへの加入を望んでいたようだが、ジーンの「エディ、お前は自分が音楽的に主導権をとれるバンドに居た方がいい」という助言により、エドワード・ヴァン・ヘイレンがキッスへ加入という状況にはならなかったようだ。

まぁ、結果的には、その後にリリースされた"Diver Down"以降のヴァン・ヘイレンの活躍を見ても分かるように、エドワード・ヴァン・ヘイレンにとってはこれで良かったのではないかと思うところ。勿論、キッスにとっても。

 

※ 追記(2018年11月)
ただし、この件についてポールは、"Kiss Kruise"でのファンとの質疑応答に於いて尋ねられた際、「エディが"KISS"に加入しようとしていたなんて絶対になかったよ」と否定している。

2018.11.06 (MUSIC LIFE CLUB)
エディ・ヴァン・ヘイレンがKISSに加入しかけたという噂の真相は?
https://www.musiclifeclub.com/news/20181106_07.html

2018.11.07 (rockinon.com)
ヴァン・ヘイレンはキッスに加入寸前だった? ポール・スタンレーがジーン・シモンズによる噂を完全否定
https://rockinon.com/news/detail/181447

とは言え、ジーンが嘘を言っているとも思えず、真相はどうなんだろうね。

 

Album Cover (back): Love Gun / KISSで、キッスはと言えば、バンドは崩壊寸前の状態だったとはいえ、第二期と言われる「Destroyer / 地獄の軍団」、「Rock and Roll Over / 地獄のロック・ファイアー」、そして、この「Love Gun / ラヴ・ガン」の3作が最も勢いのあった時期ではないかと。

しかも、この"Love Gun"の後には、これら3作から抜粋された楽曲だけで構成されたライヴ・アルバム"KISS Alive II"がリリースされるといったように、ファンにとっては正にワクワク・ドキドキの連続だった。

最後に、この"Love Gun"のジャケットについて記しておくと、前作の"Rock and Roll Over"及び次作のスタジオ・アルバム"Dynasty"同様に、アルバムのバックカヴァーに記載されている曲目は実際の曲順とは一致していない。このことについては、以前に「Dynasty / 地獄からの脱出」の記事でも書いたことだが、自分自身は、アメリカ盤ではこの曲順で収録されているのだろうか? なんてことを当時は思ったりもしていた。

ただ、このことについては、あくまでも推測ではあるのだが、この時期は数か月に1枚というハイペースでアルバムをリリースしていたことから、曲順の変更があってもリリースに間に合うようにと、曲順が決まる前からジャケットの印刷を発注していたのではないかと。

 

KISS - BAND MEMBERS
• Paul Stanley (ポール・スタンレー) - Guitar, Vocals
• Gene Simmons (ジーン・シモンズ) - Bass, Vocals
• Ace Frehley (エース・フレーリー) - Guitar, Vocals
• Peter Criss (ピーター・クリス) - Drums, Vocals

 

Album Cover (back): Love Gun / KISSTRACKLIST
1. I Stole Your Love / 2. Christine Sixteen / 3. Got Love For Sale / 4. Shock Me / 5. Tomorrow And Tonight / 6. Love Gun / 7. Hooligan / 8. Almost Human / 9. Plaster Caster / 10. Then She Kissed Me 

1. 愛の謀略 / 2. クリスティーン・シックスティーン / 3. ゴット・ラヴ・フォー・セール / 4. ショック・ミー / 5. トゥモロー・アンド・トゥナイト / 6. ラヴ・ガン / 7. フーリガン / 8. オールモスト・ヒューマン / 9. プラスター・キャスター / 10. ゼン・シー・キスト・ミー

• Lead Vocals:  Paul Stanley (1, 5, 6, 10) / Gene Simmons (2, 3, 8, 9) / Ace Frehley (4) / Peter Criss (7)

NOTES
• CD発売日:1993/5/26(20周年記念再発盤)
• 解説・歌詞・対訳付

• Album: US 4位 (Platinum / 1977-RIAA)
• Singles: "Christine Sixteen" US 25位 / "Love Gun" US 61位

 

▼ KISS - Love Gun TV Commercial

 

▼ KISS - I Stole Your Love (Live 1977)

 

▼ KISS - Love Gun (Live 1977)

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