この「MTV Unplugged / MTVアンプラグド~地獄の再会」は、キッスのアンプラグド・ライヴというだけでもファンにとっては興味津々なアルバムなのだが、更には、久しぶりにオリジナルメンバーが揃っての演奏が含まれるということで、当時はかなりワクワクして買ったアルバムでもあった。
とにもかくにも、真っ先に気になったのは、やはりトラックリストで、いったいどんな曲が演奏されているのかと、はやる気持ちを抑えて1曲ずつ確認していった記憶がある。
オープニング曲が"Comin' Home"というのは、かなり意表を突かれた感じだったが、実を言うと、一番ムムッと気を引いた曲は9曲目の"See You Tonight"。このアルバムでは邦題が「シー・ユー・トゥ・ナイト」と、そのままカタカナ表記されていたので半信半疑なところもあったのだが、勿論、この曲は1978年にリリースされたジーン・シモンズのソロアルバムに収録されている「今宵のお前」だった。ジーンのソロの中では、この"See You Tonight"は特に好きな曲のひとつだったし、まさか、この曲が演奏されるとは微塵にも思っていなかったので、嬉しかったなぁ。しかも、ジーンのヴォーカルもオリジナル以上に魅力的で、コーラスとハーモニーの美しさも相まって、素晴らしい出来なのだ、これが。
当然含まれると思っていた"Hard Luck Woman"が入ってなかったのは意外だったが、実際のライヴではこの曲もポールのヴォーカルで演奏されてはいたのだった。残念ながらアルバムではカットされた曲のひとつになってしまったが、他にも実際のライヴでは演奏されていた "Heaven's on Fire"、"Spit"、"C'mon and Love Me"、そして、カントリー・ヴァージョンにアレンジされた "God of Thunder"などもアルバムではカットされている。
ジーンのソロアルバムからも選曲されているのなら、それぞれのソロアルバムから1曲ずつでも演奏してくれていたら更に嬉しかったのだが、仮にそうした場合は、どの曲が選ばれたのだろうかと、勝手に想像して一人で盛り上がっていたのも、今は思い出(笑)。まぁ、ポールのソロからは"Take Me Away"、エースのソロからは"Fractured Mirror"、そして、ピーターのソロからは"Easy Thing"といった曲を演ってほしかったなぁというのが結論だったんだけどね。
アンプラグドと言いつつも、意外と後半ではエレキを持ち出すバンドも少なくないのだが、キッスの場合は徹頭徹尾アコースティックで通しており、エレキは一切使用されていない。アコースティックゆえに、装飾的な部分が削がれて、楽曲の本質的な素の部分が際立つため、やもすると、一本調子で、つまらないライヴになってしまうという危惧もあるのだが、そういった意味では、アコースティックだけでも十分に魅力的なショーとして成立させてしまう辺りは流石といったところ。ほんと、どの曲も素晴らしい出来栄えなんだよなぁ。
それに、アンプラグドとはいっても、そこはキッス。バックには巨大なロゴ、そして、その上にはメイクとコスチュームに身を包んだ人形が5体(オリジナル4+エリック・カー)が飾られており、床には"Rock and Roll Over"のアートワークが描かれているという、MTVアンプラグドにしては派手なステージセットとなっている。
通常のライヴでは演奏されない曲が比較的的多く収録されているという点でも、全体を通して魅力的なアルバムと言えるのだが、それでも、メインはやはり、オリジナルメンバーであるエースとピーターが加わって演奏した後半の曲。エースがフニャフニャとした特徴的なヴォーカルで懐かしい声を披露した後は、ピーターがキッス最大のヒット曲となった"Beth"で変わらぬハスキーヴォイスで魅せるという流れに、会場は最高潮の盛り上がりとなる。アルバムの中では、この"Beth"が秀逸の出来で、オリジナルには無かったギターソロも加えられた素晴らしいアレンジとなっている。
その後は、再び、ブルース・キューリックとエリック・シンガーが加わり、6人編成で2曲を演奏して、会場は更なる盛り上がりをみせて、幕を閉じるという構成。
6人編成での演奏についていえば、エリックとピーターがヴォーカルをとる"Nothin' To Lose"はこのアルバムならではのものだし、ラストの"Rock And Roll All Nite"についても、ジーンのヴォーカルに加え、エースとピーターがヴォーカルをとるパートもあったりと、オリジナルメンバーの再会を祝すようなヴァージョンとなっている。
そして、ここでのオリジナルメンバーの再会により、この後、キッスはオリジナル4のリユニオンへと進んでいくのだった。
▼ 曲の途中でやり直し(笑)、勿論、アルバムでは最初の演奏はカットされている
KISS - Domino [MTV Unplugged]
▼ アルバムではカットされた「雷神」のカントリー・ヴァージョン
KISS - God of Thunder (Country Version) [MTV Unplugged]
▼ アルバム中、最も好きな曲のひとつ
KISS - See you tonight [MTV Unplugged]
▼ オリジナル4による演奏
KISS - Beth [MTV Unplugged]
アルバムについて言えば、原曲を知っていた方が、アコースティックならでのアレンジがされた演奏をより楽しむ事ができるとは思うのだが、それでも、ひいき目という部分もあるにせよ、これは原曲を知らなくても十分に楽しめるアルバムではないかと思う。
▼ こちらは映像が収録されたレーザーディスク
▼ レーザーディスクの帯
KISS - MTV UNPLUGGED LIVE
• Paul Stanley - Acoustic Guitar, Vocals
• Gene Simmons - Acoustic Bass Guitar, Vocals
• Bruce Kulick - Acoustic Guitar
• Eric Singer - Drums, Vocals
with
• Ace Frehley - Acoustic Guitar, Vocals
• Peter Criss - Drums, Vocals
TRACKLIST
1. Comin' Home / 2. Plaster Caster / 3. Goin' Blind / 4. Do You Love Me / 5. Domino / 6. Sure Know Something / 7. A World Without Heroes / 8. Rock Bottom / 9. See You Tonight / 10. I Still Love You / 11. Every Time I Look At You / 12. 2,000 Man / 13. Beth / 14. Nothin' To Lose / 15. Rock And Roll All Nite / 16. Got To Choose (Japanese Extra Track)
1. カミン・ホーム / 2. プラスター・キャスター / 3. ゴーイン・ブラインド / 4. ドゥ・ユー・ラヴ・ミー / 5. ドミノ / 6. シュア・ノウ・サムシング / 7. 英雄なき世界 / 8. ロック・ボトム / 9. シー・ユー・トゥ・ナイト / 10. アイ・スティル・ラヴ・ユー / 11. エヴリ・タイム・アイ・ルック・アット・ユー / 12. トゥサウザンズ・マン / 13. ベス / 14. ナッシン・トゥ・ルーズ / 15. ロックン・ロール・オール・ナイト / 16. ゴット・トゥ・チューズ(日本のみのエクストラ・トラック)
NOTES
• Recorded Live at Sony Music Studios, NYC, NY, USA (August 9, 1995)
• 日本盤初回プレスCD [Japanese First Pressing CD]
• 解説・歌詞・対訳付
• US 15位 (Gold / 1996-RIAA)
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