2016/08/25

VERY COOL 「ヴェリー・クール」 / NAOKO TERAI 「寺井尚子」 (2014)

CDの帯(初回プレス盤):ヴェリー・クール / 寺井尚子Album Cover (front): Very cool / Naoko Terai (寺井尚子) CD Case (front): Very cool / Naoko Terai (寺井尚子) CD Case (back): Very cool / Naoko Terai (寺井尚子)

こちらは、ジャズ・ヴァイオリニストの寺井尚子さんの17作目(ベスト・アルバムを除く)となるアルバム「Very cool / ヴェリー・クール」。

アルバムはタイトルにもある「クール」をテーマにして制作されたそうで、そこには「情熱的」といった表現で語られることの多かったこれまでのイメージを打破し、更に一歩踏み出すという意味があったとブックレットに掲載された寺井尚子さん自身の解説に記されている。

自分が寺井さんの音楽に惹かれる理由のひとつにアンサンブルの妙といったものがある。ヴァイオリン+バック・バンドのような感じじゃないところが良いんだよね。このアルバムだと、曲によってはピアノやヴィブラフォンのソロがあったりするしね。

まぁ、裏を返せば、寺井尚子のヴァイオリンが一歩引く場面があることで、曲にメリハリが出て、寺井さんのヴァイオリンもより引き立つという効果もあると思うのだが、ソリストのアルバムって、他の楽器はオケ扱い的なものが案外多いので、こういったそれぞれの楽器に存在感が感じられる一体感のあるサウンドっていいなと思うところでもある。

このアルバム"Very cool"については、ブルーノート関連の曲も然ることながら、ラテン系のナンバーが比較的多く収録されているのが特徴で、当初は、レギュラー・カルテットに加え、ヴィブラフォン奏者とパーカッション奏者がゲストで参加しているのもラテン系のサウンドに合わせてのことだと思っていたら、実際は逆で、ラテン系のナンバーが多くなったのはメンバーの個性や長所をどうすれば活かせるかを考えての結果だそうだ。

それにしても、ヴィブラフォン奏者とパーカッション奏者がゲストで参加しているということもあり、何処となくフルーツを盛ったカクテルが似合いそうな、夏にピッタリのクールでお洒落な南国風サウンドといった雰囲気。

CD Case (inside): Very cool / Naoko Terai (寺井尚子)   CD: Very cool / Naoko Terai (寺井尚子)

ブックレットにはそれぞれの曲について寺井さん自身の解説と、スタンダード・ナンバーについては曲の生い立ちが併せて掲載されており、スタンダード・ナンバーに詳しくない自分にとってはこういうのはありがたいところだ。まぁ、スタンダード・ナンバーの多くが自分が生まれる前に誕生した曲だし、曲の歴史を知ることで、それぞれの曲をより深く楽しめるからね。

ちなみに、このアルバムでは、5曲目の「Dancing In The Wind / ダンシング・イン・ザ・ウインド」が寺井尚子が作曲した曲、そして9曲目の「Cool Vibrations / クール・ヴァイブレーションズ」がレギュラー・カルテットのひとりである北島直樹氏が作曲した曲がオリジナル曲となる。アルバムには毎回、寺井さんやレギュラー・カルテットによるオリジナル曲が数曲収録されているわけだが、このアルバムに限らず、スタンダード・ナンバーと並んでいても違和感が無いところは流石といった感じ。

車に誰かを乗せて、このアルバムをかけたら、好感度がアップしそうな・・・、そんなとってもクールなアルバムだ(笑)。

 

CDの帯:ヴェリー・クール / 寺井尚子TRACKLIST

1. Manha De Carnaval / 2. Quizas. Quizas. Quizas / 3. Cantaloupe Island / 4. Estrellita / 5. Dancing In The Wind / 6. Little B's Poem / 7. Tempus Fugit / 8. Everything Happens To Me / 9. Cool Vibrations / 10. Begin The Beguine / 11. Estrellita [CM Version] (Bonus Track)

1. 黒いオルフェ / 2. キサス・キサス・キサス / 3. カンタロープ・アイランド / 4. エストレリータ / 5. ダンシング・イン・ザ・ウインド / 6. リトル・Bズ・ポエム / 7. テンパス・フュージット / 8. エヴリシング・ハプンズ・トゥ・ミー / 9. クール・ヴァイブレーションズ / 10. ビギン・ザ・ビギン / 11. エストレリータ(ボーナス・トラック)

 

NOTES

寺井尚子 (vln)
北島直樹 (p) - 11 抜ける
店網邦雄 (b)
中沢剛 (ds) - 11 抜ける
山本玲子 (vib) - 1, 2, 3, 6, 7, 9
松岡“matzz”高廣 (perc) - 2, 3, 5, 7, 10
ジャンゴ・リズム (g) - 11

• 日本盤初回プレスCD [Japanese First Pressing CD]
• 寺井尚子自身の全曲解説付き
• SHM-CD
• 品番:TYCJ-80006

 

▼ 寺井尚子 - カンタロープ・アイランド

 

▼ 寺井尚子 - キサス・キサス・キサス

 

▼ 寺井尚子 - Manha De Carnaval
https://www.youtube.com/watch?v=dZ9F3lWDbS0

▼ 寺井尚子 - Estrellita
https://www.youtube.com/watch?v=URfekpQ-OPc

▼ 寺井尚子 - Cool Vibrations
https://www.youtube.com/watch?v=dnQR9H63UKM

 

 

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HOT JAZZ...and Libertango 2015 「ホット・ジャズ」 (2015) / Naoko Terai 「寺井尚子」

2016/08/17

HOT JAZZ ...AND LIBERTANGO 2015 「ホット・ジャズ」 / NAOKO TERAI 「寺井尚子」 (2015)

CDの帯(初回プレス盤):ホット・ジャズ / 寺井尚子

Album Cover (front): HOT JAZZ...and Libertango 2015 / Naoko Terai (寺井尚子)

自分が初めて寺井尚子さんの音楽に触れたのは、以前にリリースされたベスト・アルバムだったのだが、聴く前はジャズとヴァイオリンという異色の組み合わせに、これまでに耳にしたことがない何かしらを期待する反面、ジャズにヴァイオリンは合わないんじゃないのかという思いも少なからずあった。

ところが、これが奇をてらったようなものではないばかりか、全く違和感が無いというか、見事に融合しているように感じたんだよね。特に惹かれたのが、オリジナル曲の「Thinking Of You / シンキング・オブ・ユー」や、「All For You / オール・フォー・ユー」、「Pure Moment / ピュア・モーメント」といった曲だったことも、寺井さんの音楽に興味を持った要因でもあった。

どちらかと言うと、自分自身はあまりジャズといったものを聴かないのだが、そのベストに収録されていたジャズのスタンダード・ナンバーも、そんな自分でも自然に楽しめるものであったし、そういった意味では、もしかしたら寺井さん自身も、ジャズの裾野を広げるといったことを考えながら制作、活動されているのかもしれない。

この「HOT JAZZ...and Libertango 2015 / ホット・ジャズ」は、前作の「Very cool / ヴェリー・クール」から約1年ぶりのアルバムということで、それほど前作とは間が空いたわけではないのだが、レギュラー・グループを12年ぶりに一新してレコーディングされたアルバムということもあり、そういった意味では、前作をひとつの区切りとして今後の方向性を示した門出となるアルバムとも言えそうだ。

又、そのことは、寺井さんのライフワークとも言えるような、長年演奏を続けられている「Libertango / リベルタンゴ」や「Spain / スペイン」といったスタンダード・ナンバーを改めて取り上げて、この新たな布陣でレコーディングされていることからもうかがい知れるのではないかと思う。

CD Case (inside): HOT JAZZ...and Libertango 2015 / Naoko Terai (寺井尚子)   CD: HOT JAZZ...and Libertango 2015 / Naoko Terai (寺井尚子)

アルバムは、寺井さん作曲のオリジナル曲が2曲と、寺井さんとは旧知の仲であり、今回からメンバーに加わったジャズ・ピアニストの佐山雅弘氏が作曲した曲が4曲で、その他の6曲はスタンダード・ナンバーやトラディショナル曲といった構成。ちなみに、「Fragile / フラジャイル」はスティングのカヴァー曲で、過去にも1999年のセカンド・アルバム「Pure Moment / ピュア・モーメント」でも取り上げられていた曲。

それぞれの曲については、寺井さん自身による解説がブックレットに記載されているので、是非ともアルバムを買って読んでいただければと思う。各曲での演奏に込められた想いなどが伝わってくる内容で、それらを知ることによって造詣も深まり、それぞれの曲をより深く熱く堪能できると思う。

 

CD Case (back): HOT JAZZ...and Libertango 2015 / Naoko Terai (寺井尚子)

TRACKLIST
1. Tango Pour Claude / 2. Slow Dance Of Love / 3. Fragile / 4. Blue Bossa / 5. A Story Of Wind / 6. In The Velvet / 7. Spain / 8. Happy Bird / 9. November / 10. Ariake Dawn / 11. Libertango / 12. Shenandoah

1. クロードのタンゴ / 2. スロー・ダンス・オブ・ラヴ / 3. フラジャイル / 4. ブルー・ボッサ / 5. 風のストーリー / 6. イン・ザ・ヴェルヴェット / 7. スペイン / 8. ハッピー・バード / 9. ノヴェンバー / 10. 有明ドーン / 11. リベルタンゴ 2015 / 12. シェナンドー

NOTES
• 日本盤初回プレスCD [Japanese First Pressing CD]
• 寺井尚子自身の全曲解説付き
• SHM-CD
• 品番:UCCQ-1035

 

▼ 寺井尚子 - リベルタンゴ

 

[その他のライヴビデオ]

▼ 寺井尚子 - リベルタンゴ with Coba (アコーディオニストCobaとの共演)
https://www.youtube.com/watch?v=88GduC2P7Gg

▼ 寺井尚子 - リベルタンゴ with Richard Galliano (リシャール・ガリアーノとの共演)
https://www.youtube.com/watch?v=sulLOz98T4w

▼ 寺井尚子 - スペイン
https://www.youtube.com/watch?v=x8JWNCmJ85Y

▼ 寺井尚子 - ノヴェンバー
https://www.youtube.com/watch?v=ErFSYnZVc4Y

[Audio]

▼ 寺井尚子 - Tango Pour Claude
https://www.youtube.com/watch?v=BH0QUp2TqJ0

▼ 寺井尚子 - In The Velvet
https://www.youtube.com/watch?v=JYW6IkZDCXM

 

 

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2016/08/10

SYMPHONY - LIVE IN VIENNA 「シンフォニー ~ ライヴ・イン・ウィーン ~ デラックス・エディション」 [DVD+CD] / SARAH BRIGHTMAN (2009)

CDの帯(初回プレス盤):シンフォニー ~ ライヴ・イン・ウィーン(デラックス・エディション) / サラ・ブライトマンAlbum Cover (front): Symphony - Live in Vienna [Deluxe Edition] / Sarah Brightmanこちらはサラ・ブライトマンのライヴ・アルバム「Symphony - Live in Vienna / シンフォニー ~ ライヴ・イン・ウィーン」。

自分が購入したのは、CDとDVDがセットになったトールケース・サイズのデラックス・エディションだが、CDとDVDはそれぞれ単品でも販売されている。ただし、デラックス・エディションのCDにのみスタジオ録音の「Vide Cor Meum / ヴィデ・コル・メウム」がボーナス・トラックとして収録されている。

この"Symphony - Live in Vienna"に収録されているのは、2008年のスタジオ・アルバム"Symphony"のリリースに先駆けて行われた、映画で言うところの完成披露試写会のようなライヴで、又、そういった意味では、アルバムのタイトル及び、タイトルのロゴからも容易に分かるように、スタジオ・アルバム"Symphony"のライヴ版といった内容。

ということで、先に記事にしたスタジオ・アルバム「Symphony / 神々のシンフォニー」の方でも記しているが、そのスタジオ・アルバム"Symphony"の圧倒的な素晴らしさに魅了された自分としては、このライヴ・アルバムは夢のような贈り物でもあった。

スタジオ・アルバムの"Symphony"からは、イントロダクション的なオープニング曲の「Gothica / ゴシックの夢」と「Schwere Traume / シュヴィア・トローメ」の2曲を除く11曲が曲目としてクレジットされているが、実際には曲目としてクレジットされてはいないものの、「"Fleurs Du Mal / 嘆きの天使」の導入部分には部分的に"Gothica"も含まれている。

ライヴ会場は世界遺産にも指定されているゴシック建築の大聖堂として有名なウィーンのシュテファン大聖堂で、恐らくはスタジオ・アルバムの"Symphony"のテーマのひとつとしてあった「ゴシック」に沿うかたちで選ばれたとのではないかと思われる。

まぁ、音楽の都ウィーンにあるゴシック建築の大聖堂で行われたライヴと聞いただけでも何やら荘厳なイメージが沸き立つのだが、実際にDVDで観てみると、これがまた想像を超えるスケールで圧倒される。聖堂内のシャンデリアやステンドグラス、彫刻、絵画、ゴシック様式の柱といったものが相まって奏でられる様はある意味空間芸術とも言えるような雰囲気。

それに加えて、控えめながらも、雰囲気に合ったライティングがまた美しく、照らし出された室内装飾を交えた映像構成もこれまた見事。

 

Album Cover with Obi and Promotional Sticker (front): Symphony - Live in Vienna [Deluxe Edition] / Sarah Brightman  Album Cover (back): Symphony - Live in Vienna [Deluxe Edition] / Sarah Brightman  Album Cover (inside): Symphony - Live in Vienna [Deluxe Edition] / Sarah Brightman

 

Promo Sticker: Symphony - Live in Vienna [Deluxe Edition] / Sarah Brightmanライヴとは言っても、スタジオ録音されたオリジナル曲が忠実に再現されている印象で、曲中での歓声といったものは無く、曲が完全に終わってから拍手が巻き起こるといった感じのクラッシック・コンサートのような雰囲気のライヴということもあり、CDで音だけを聴いていると、あたかもスタジオ・ヴァージョンを聴いているような錯覚すら覚えるのだが、裏を返せば、それだけレベルの高い素晴らしい歌と演奏が披露されているということであり、音だけでも十分に楽しめる内容のライヴ・アルバムといった印象。いや、ほんと、サウンドも映像に負けず劣らず素晴らしいのだ。

しかも、先にも述べたように、スタジオ・アルバムの"Symphony"からは、実質1曲を除く全曲が披露されているのだから、スタジオ版の"Symphony"に魅せられた自分にとっては、もうひとつの"Symphony"といった感じで嬉しい限り。又、ブックレットはスタジオ・アルバムの"Symphony"と同じく光沢のあるコーティングされた紙が使用されていたりと、こういった部分にもスタジオ版"Symphony"との繋がりが感じられる作りになっているのもまた嬉しいところ。

なお、DVDに収録されているボーナス映像には、本編のライヴやリハーサルの映像を交えながら、このショーに対する想いや、各楽曲が誕生する背景についてサラが語る場面などが収録されている。ファンにとっては、これらを知ることにより、それぞれの楽曲をより深く堪能することができるので、こちらも中々興味深く見逃せないいものとなっている。

 

CD: Symphony - Live in Vienna [Deluxe Edition] / Sarah Brightman   DVD: Symphony - Live in Vienna [Deluxe Edition] / Sarah Brightman

 

TRACKLIST (Deluxe Edition / CD+DVD)

[CD]
1. Pie Jesu / 2. Fleurs Du Mal / 3. Symphony / 4. Sanvean / 5. Canto Della Terra (Duet with Alessandro Safina) / 6. Sarai Qui (Duet with Alessandro Safina) / 7. Attesa / 8. I Will Be With You (Where The Lost Ones Go) (Duet with Chris Thompson) / 9. Storia D'amore / 10. Pasión (Duet with Fernando Lima) / 11. Running / 12. Let It Rain / 13. The Phantom Of The Opera (Duet with Chris Thompson) / 14. Time To Say Goodbye / 15. Ave Maria / 16. Vide Cor Meum (Bonus track only available on the CD/DVD edition)

1. ピエ・イエス / 2. 嘆きの天使 / 3. シンフォニー / 4. サンヴィーン / 5. 大いなる世界 / 6. サライ・クイ / 7. アテッサ / 8. ビー・ウィズ・ユー ~いつもそばに~ / 9. 愛の物語 / 10. パシオン / 11. ランニング(ジュピター~栄光の輝き) / 12. レット・イット・レイン / 13. ファントム・オブ・ジ・オペラ(オペラ座の怪人) / 14. タイム・トゥ・セイ・グッバイ(ソロ・ヴァージョン) / 15. アヴェ・マリア~シューベルト / 16. ヴィデ・コル・メウム [デラックス・エディションのみのボーナス・トラック]

[DVD]
1. Pie Jesu / 2. Fleurs Du Mal / 3. Symphony / 4. Sanvean / 5. Canto Della Terra (Duet with Alessandro Safina) / 6. Sarai Qui (Duet with Alessandro Safina) / 7. Attesa / 8. I Will Be With You (Where The Lost Ones Go) (Duet with Chris Thompson) / 9. Storia D'amore / 10. Pasión (Duet with Fernando Lima) / 11. Running / 12. Let It Rain / 13. The Phantom Of The Opera (Duet with Chris Thompson) / 14. Time To Say Goodbye / 15. Ave Maria

DVD Extras
• The Production (interview with Sarah Brightman)
• The Songs (interview with Sarah Brightman)
• The Location (interview with Father Anthony Faber and historian Elisabeth Lloyd-Davis) 
• Photo Gallery

1. ピエ・イエス / 2. 嘆きの天使 / 3. シンフォニー / 4. サンヴィーン / 5. 大いなる世界 / 6. サライ・クイ / 7. アテッサ / 8. ビー・ウィズ・ユー ~いつもそばに~ / 9. 愛の物語 / 10. パシオン / 11. ランニング(ジュピター~栄光の輝き) / 12. レット・イット・レイン / 13. ファントム・オブ・ジ・オペラ(オペラ座の怪人) / 14. タイム・トゥ・セイ・グッバイ(ソロ・ヴァージョン) / 15. アヴェ・マリア~シューベルト

DVD エクストラ (ボーナス映像)
• プロダクション(インタビュー:サラ・ブライトマン)
• ソングス(インタビュー:サラ・ブライトマン)
• ロケーション(インタビュー:神父アンソニー・ファーバー、歴史学者エリザベス・ロイド=デイヴィス)
• フォト・ギャラリー 

 

NOTES

[CD]
• デラックス・エディションのCDにのみボーナス・トラック「Vide Cor Meum / ヴィデ・コル・メウム」収録

[DVD]
• Concert Running Time Approx: 76 minutes
• Extras Running Time: Approx: 40 Minutes
• Total Approx: 116mins
• PCM Stereo / Dolby Digital 5.1 Surround / DTS 5.1 Surround
• 日本盤ボーナス映像のインタビューには日本語字幕付

• 日本盤初回プレスCD [Japanese First Pressing CD]
• 解説・歌詞・対訳付

 

▼ Sarah Brightman - Fleurs Du Mal (Live In Stephansdom, Vienna, Austria / 2008)

 

▼ Sarah Brightman - Canto Della Terra (Live in Vienna)

 

▼ Sarah Brightman - Vide Cor Meum

 

 

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Symphony 「神々のシンフォニー」(2008) / Sarah Brightman

2016/08/04

SYMPHONY 「神々のシンフォニー」 / SARAH BRIGHTMAN (2008)

CDの帯(初回プレス盤):神々のシンフォニー / サラ・ブライトマンAlbum Cover (front): Symphony / Sarah Brightman  Album Cover (back): Symphony / Sarah Brightman  CD: Symphony / Sarah Brightman

このサラ・ブライトマンのアルバム「Symphony / 神々のシンフォニー」は以前から取り上げようと思っていたものの、このアルバムの素晴らしさを上手く伝えることが難しそうで、中々記事にすることができずにいたんだよね。

いや~、それにしてもこれだけ魅力的な楽曲が揃った充実度の高いアルバムにはそうそうお目にかかれるものではないと思う。アルバム全体の印象としては「荘厳」、「幻想的」、「ドラマティック」といったような言葉が思い浮かぶものの、スケール感溢れるシンフォニックなサウンドと、力強くも繊細な美しさを併せ持ったサラ・ブライトマンの歌声が融合して奏でられる音の世界はほんと言葉では言い表せないほどに感動的であり圧倒されるものだ。

私自身は、アルバムのイントロダクション的な1曲目の「Gothica / ゴシックの夢」から、シンフォニック・メタルやゴシック・メタルの様式を取り入れたような雰囲気のある2曲目の「Fleurs Du Mal / 嘆きの天使」へと流れるようにメドレーで続く、冒頭のこの2曲で一気に引き込まれたのだが、サラ・ブライトマンのようなクラシカル・クロスオーバー・サウンドにあまり興味が無くても、このオープニングの2曲はロック系が好きな人も割と受け入れやすいんじゃないかなと思う。特に壮大でドラマティックなロックが好きな人はこの曲の魅力を感じてもらえるのではないかと。

ちなみに、ゴシック・メタルの雰囲気が漂うようなアルバムのジャケットは、この"Fleurs Du Mal"からイメージして制作されたとのこと。又、1曲目のタイトルが"Gothica"で、アルバムの最後には曲目としてクレジットされていないものの、シークレット・トラックのようなかたちで"Gothica"~"Fleurs du Mal"へとメドレーで続く2曲のリプライズとも言えるような曲が収録されていることからして、恐らくはこの「ゴシック」というものがアルバムのひとつのテーマとしてあるのではないかとも思われる。

そして、これに続く3曲目のアルバムタイトル曲「Symphony / シンフォニー」がこれまた素晴らしいのだ。シンフォニックで壮大なスケールのバラードに心が洗われるかのよう。

と、冒頭の3曲だけでも十分に感動的であり、このアルバムの凄さを予見できるのだが、4曲目の「Canto Della Terra / 大いなる世界」では更なる感動が待ち受けているのだ。イタリアを代表するテノール歌手アンドレア・ボチェッリとのデュエット曲でもあるこの曲の圧倒的なスケール感ときたら・・・。ここまで立て続けに来ると、素晴らしすぎて、もはや言葉が見つからないほど。

壮大なスケールの曲が続いた後は、これまでとは趣が変わって、静寂が訪れるかのように幻想的で神々しい「Sanvean / サンヴィーン」が5曲目に収録されている。

そして、6曲目に待ち構えているのは、なんとキッスのポール・スタンレーとのデュエット曲である「I Will Be With You (Where The Lost Ones Go / ビー・ウィズ・ユー ~いつもそばに~」。この曲、元々はポケモンの劇場版映画10作目の記念作品「ポケットモンスター ダイヤモンド&パール ディアルガVSパルキアVSダークライ」のエンディング・テーマ曲をアルバム制作中に依頼受けて提供されたもので、そういった理由から、アルバムよりも一足先にお目見えした曲ではあったのだが、その映画版はクリス・トンプソンとのデュエット曲だったものの、アルバムではハードロックバンドのシンガーとデュエットしたいとのサラの希望もあり、ポール・スタンレーとのデュエットが実現したとのこと。

人選についてはサラの声との相性というものも考慮されて検討されたらしく、結構難航したようだが、サラ自身はポールが以前にミュージカル「オペラ座の怪人」の舞台でファントム役を演じたことを知っていたらしいので、もしかしたら、そういったこともポールが選ばれた理由のひとつなのかもしれない。まぁ、これまでも、様々なジャンルのそうそうたるシンガーと共演してきたサラがデュエットする相手に選んだということは、ポールのシンガーとしての実力を認めてのことなんだろうね。ちなみに、最終的な人選はサラとプロデューサーの2人で行ったとのこと。

7曲目の「Schwere Traume / シュヴィア・トローメ」は、再び前曲とは打って変わってクラシカルな雰囲気が漂う曲。それもそのはず、この曲はマーラーの交響曲第五番をベースに歌詞を加えて作られた曲なのだ。神秘的で美しい曲。

8曲目の「Sarai Qui / サライ・クイ」は、映画「パール・ハーバー」の主題歌として使われたフェイス・ヒルの大ヒット曲"There You'll Be"のカヴァーで、これまた壮大なアレンジで感動的なクラシック風の曲へと仕上がっている。又、この曲は、イタリア出身の人気テノール歌手アレッサンドロ・サフィナとのデュエット曲となっており、曲のタイトルは元より、歌詞も全編イタリア語に変えられている。サラ曰く、「イタリア語にしたのは、その方がクラシックの歌い方に合うから」だそうだ。

続く9曲目の「Storia d'Amore / 愛の物語」もカヴァー曲で、こちらもまた前曲と同様に曲のタイトルと歌詞がイタリア語に変えられている。クラシック調の穏やかな雰囲気が心に安らぎを与えてくれるかのような優美な曲。ちなみに"Storia d'Amore"とは英語の"Love Story"のことで、つまりは「愛の物語」という邦題も、それを日本語にしたものがそのまま付けられているということになる。なお、原曲のタイトルは"I Will Return"。

10曲目の「Let It Rain / レット・イット・レイン」では前曲とは趣も変わって、どちらかといえばポップス寄りの曲で、サラの歌い方も曲調に合わせるかのようにポップス寄りの歌唱法がとられているように感じる。アルバムの解説には、サラ自身の言葉として「ゴシックの雰囲気がある曲」と記されている。

11曲目では再びクラシック・スタイルの曲が登場。19世紀のイタリアのオペラ作曲家の曲に新たな歌詞を加えて制作されたこの「Attesa / アテッサ」ではクラシック的というかオペラにも通じるような圧倒的な歌唱力が存分に披露されている。

12曲目の「Pasion / パシオン」は、中南米で絶大な人気を誇るアルゼンチン出身のカウンター・テナー、フェルナンド・リマとのハーモニーが奏でられるデュエット曲。最初に聴いたときは女性だとばかり思っていたフェルナンド・リマの甘く美しい声と、どこか切なげなラテン調の哀愁漂うメロディーがリサの声と相まって、これまた素晴らしい出来栄え。

この"Pasion"については、一見、ゴシックとは関係の無い曲のようにも思えるが、カウンターテナーの始まりが中世のヨーロッパだったことを考えると、もしかしたらゴシックというテーマが無かったら実現しなかったデュエットなのではないかとも思える。まぁ、これは勝手な推測なんだけどね。

※ 補足
カウンターテナー(ウィキペディアより抜粋)
中世のヨーロッパにおいては「女性は教会では黙すべし」という掟により、女性が教会や舞台の上で歌うことは禁じられていた。そこで、教会の聖歌隊では高音のパートつまり、ソプラノとアルトを、ボーイソプラノが担当していた。しかし、表現力に乏しく響きの弱いボーイソプラノのかわりに、アルトは成人した男性がファルセットを使って歌うようになった。これがカウンターテナーの始まりである。これは、特にイギリスの聖歌隊において伝統的に今でも続けられている。

アルバムの最後となる13曲目「Running / ランニング(ジュピター ~ 栄光の輝き)」は、ホルストのジュピター(木星)をモチーフにして組み立てられた曲。まぁ、自分の場合はジュピターというよりも「暴れん坊将軍」のイメージの方が強いのだが、これもまたアルバムのハイライトのひとつと言えるようなアルバムの最後を飾るに相応しい曲であり、日本では最も有名なサラ・ブライトマンの曲のひとつ"A Question of Honour"に通じるような展開が見られる曲。ちなみに、アルバムの解説書には、曲の中盤ではゴシック・ロックのフィーリングを加えているとのサラの言葉が載せられている。

なお、14曲目には日本盤のみのボーナス・トラック曲で、坂本龍一と元ジャパンのデヴィッド・シルヴィアンが共作した「Forbidden Colours / 禁じられた色彩 ~ 戦場のメリークリスマス」のカヴァーが収録されているのだが、サラが歌うとまた違った趣があり、これも中々面白い。

又、冒頭の方でも述べたように、曲名としてはクレジットされていないが、14曲目のトラック内には"Forbidden Colours"の後に約1分の空白を挟んで、1曲目の"Gothica"~2曲目の"Fleurs du Mal"へとメドレーで続くこれら2曲のリプライズと呼べるような曲がシークレット・トラックのようなかたちで収録されている。

 

Album Cover (front): Symphony / Sarah Brightman

 

Booklet: Symphony / Sarah Brightmanブックレット内には表紙と同じイメージで制作されたゴシック・メタルの世界観に通じるような写真が掲載されており、ブックレット自体も光沢のあるコーティングされた紙が使用されているなどゴージャスな雰囲気。

又、そういったことからも、中世ヨーロッパのゴシック建築やゴシック絵画に通じる美学と呼べるものがサウンドと一体となって表現されているといった印象がある。

収録曲のクオリティーについては、これまでにも述べているように、とにかく、アルバムの随所に聴き所があり、全体の充実度はほんと半端無いといった感じ。又、収録曲にはそれぞれに光と影の役割が与えられているかのような印象もあり、全体を通して陰影といったものも感じられる。加えて、多彩なデュエット曲が収録されていることも、アルバムの世界観を広げることに一役買っているといった印象。

なお、日本盤には1曲ごとの解説があり、曲の生い立ち等が記されているので、自分の場合は、それぞれの曲を更に理解し、深く味わうことに役立って、中々良かった。

 

CDの帯:神々のシンフォニー / サラ・ブライトマンTRACKLIST (Japanese Edition)

1. Gothica / ゴシックの夢
2. Fleurs Du Mal / 嘆きの天使
3. Symphony / シンフォニー
4. Canto Della Terra / 大いなる世界
5. Sanvean / サンヴィーン
6. I Will Be With You (Where The Lost Ones Go) / ビー・ウィズ・ユー ~いつもそばに~
7. Schwere Träume / シュヴィア・トローメ
8. Sarai Qui / サライ・クイ
9. Storia d'Amore / 愛の物語
10. Let It Rain / レット・イット・レイン
11. Attesa / アテッサ
12. Pasión / パシオン
13. Running / ランニング(ジュピター ~ 栄光の輝き)
14. Forbidden Colours [Bonus Track for Japan] / 禁じられた色彩 ~ 戦場のメリークリスマス [日本盤ボーナス・トラック]

 

NOTES

• Canto della Terra - Duet with Andrea Bocelli
• I Will Be with You (Where the Lost Ones Go) - Duet with Paul Stanley
• Sarai Qui - Duet with Alessandro Safina
• Pasion - Duet with Fernando Lima

• Hidden Track - Gothica / Fleurs du Mal (Reprise)
• 日本盤の"Hidden Track"(シークレット・トラック)は、日本盤ボーナス・トラック「Forbidden Colours / 禁じられた色彩 ~ 戦場のメリークリスマス」と同一トラック内の最後に収録

• 日本盤初回プレスCD(ジュエル・ケース仕様タイプ) [Japanese First Pressing CD]
• 解説・歌詞・対訳付

• US 13位 / UK 13位

 

▼ Sarah Brightman - Symphony (Promotion UK)

 

▼ Sarah Brightman - Gothica / Fleurs Du Mal

 

▼ Sarah Brightman (Duet with Fernando Lima) - Pasión

 

[Official Audio]

▼ Sarah Brightman - Symphony
https://www.youtube.com/watch?v=5Lz-GFV3OPA

▼ Sarah Brightman - Running
https://www.youtube.com/watch?v=IqdNgsDfQgE

▼ Sarah Brightman (Duet with Paul Stanley) - I Will Be With You (Where The Lost Ones Go)
https://www.youtube.com/watch?v=EBGLSw-9ZFM

 

おまけ

以下の動画は、恐らくは日本で最も有名なサラ・ブライトマンの曲なのではないかと思われる「A Question Of Honour / クエスチョン・オブ・オナー」のオフィシャル・オーディオ。このアルバムの収録曲ではないのだが、サラ・ブライトマンという歌手を良く知らないという人でも、この曲を聴けば、あ~なるほどと思う方も多いのではないかと思うことから、ここに加えてみた。特にサッカー好きの人は多分聞き覚えがあるのではないだろうか。曲の前半ではいや知らないと思っていても2:00過ぎあたりから聴けば、きっと、あ~知ってるとなると思う。

 

▼ Sarah Brightman - A Question Of Honor (Radio Edit)

 

※ 補足(ウィキペディアより参照・引用)
"It's not a question of life or death, it's a question of honour." (生きるか死ぬかの問題ではない。名誉の問題である。)という言葉は騎士道の精神を現す表現である。又、本曲では「あなたが勝とうが負けようが、それは名誉の問題」と歌われており、勝敗より名誉を重んじる伝統的な「騎士道精神」を踏襲した歌詞になっている。

 

 

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Symphony - Live In Vienna 「シンフォニー ~ ライヴ・イン・ウィーン ~ デラックス・エディション」 [DVD+CD] (2009) / Sarah Brightman