前回取り上げたボズ・スキャッグスのブルース・アルバム「Come On Home / カム・オン・ホーム」でも触れていたように、1990年代の半ば過ぎ頃はブルージーなものやジャジーなものにちょっと嵌っていたのだが、ジャジーな曲が含まれているアルバムはいくつか持っていたものの、ジャズのアルバムというのは持ってなかったので、何か良いものがないかと思っていたのだった。
ただ、ジャズとは言っても、まったりとしたものではなく、なんかこうエッジの効いたシャープなサウンドのものが聴きたいなと漠然と思っていたのだが、そんな中、CDショップのジャズのコーナーで見つけたのが、当時リリースされたばかりだったこのハービー・ハンコックのアルバム「he New Standard / ザ・ニュー・スタンダード」だった。
帯とバックカヴァーに書かれた曲目を見て、ポップスやロック、或いはリズム&ブルースといったジャンルの曲をジャズ・サウンドにアレンジしたカヴァーアルバムだということは分かったものの、勿論、実際どんなサウンドなのかなんてことは全く知らないまま、曲目の中にドン・ヘンリーの"New York Minute"が記されていたことと、帯に書かれた紹介文を頼りに買ったわけなのだが、一応、ハービー・ハンコックの名前と"Rockit"の1曲だけは知っていたということも、購入を決めた理由のひとつだった。ただ、自分はこのとき初めてハービー・ハンコックがジャズ・ミュージシャンだということを知ったのだ。
というのも、その唯一知っていた曲である"Rockit"はシンセ主体のファンキーな曲で、全然ジャズという感じではなかったのでね。
ちなみに、その"Rockit"は日本のラジオでも割と流れていて、インストゥルメンタル曲ながらも洋楽のチャート番組ではトップ10に入っていたように記憶している。
ということもあり、ごく普通のジャズ・アルバムではないだろうとは思っていたが、先に記したようにポップスやロック及びリズム&ブルースのカヴァーアルバムであり、ビートルズやサイモン&ガーファンクルといった有名どころの曲も取り上げられているということで、どういったアレンジがされてようとも、それなりに楽しめるのではないかとは思っていた。
カヴァーとは言っても、オープニング曲の"New York Minute"を筆頭に、曲の中に出てくるのは一部のフレーズだけで、曲の大半は独自の解釈による演奏といったように、原曲を知っていても、その曲のカヴァーだとは中々気付かないようなものもあるので、自分がそうであったように、原曲が好きだからという理由で購入すると面食らうんじゃないかと思う。まぁ、聴き手の判断次第ではあるが、果たして、これを斬新と捉えるか、はたまた破壊と捉えるか・・・。
とは言え、代表曲のひとつである"Rockit"でも分かるように、これまでもファンクやヒップホップといった要素を取り込んだ中で、ジャズというジャンルの拡張を試みてきた人だったことから、これもまたハービー・ハンコック流の自然な解釈とも捉えることができるのではないかと。
そもそも、ジャズやモダンジャズというのは、元々、このようにカヴァーを繰り返しながらスタンダード曲というものを確立してきた歴史があることから、今後のジャズ界というものも視野に入れた上で、新たなるスタンダードを提示しようという考えもハービー・ハンコックにはあったのではないかとも思う。まぁ、こればかりは本人に聞かない限りは分からないことなんだけどね。ただひとつ自分が言えるのは、リリースされてから20年を過ぎた今でも全く古い感じがしないということ。
TRACKLIST
1. New York Minute / ニューヨーク・ミニット - Don Henley
2. Mercy Street / マーシー・ストリート - Peter Gabriel
3. Norwegian Wood (This Bird Has Flown) / ノルウェーの森 - The Beatles
4. When Can I See You / ホエン・キャン・アイ・シー・ユー - Babyface
5. You've Got It Bad Girl / バッド・ガール - Stevie Wonder
6. Love Is Stronger Than Pride / ストロンガー・ザン・プライド - Sade
7. Scarborough Fair / スカボロ・フェア - Simon & Garfunkel
8. Thieves In The Temple / シーヴス・イン・ザ・テンプル - Prince
9. All Apologies / オール・アポロジーズ - Nirvana
10. Manhattan (Island Of Lights And Love) / マンハッタン - Written by Herbie Hancock, Jean Hancock
11. Your Gold Teeth Ⅱ / ユア・ゴールド・ティース II - Steely Dan [Bonus Track]
NOTES
• Herbie Hancock (ハービー・ハンコック) - Piano
• Michael Brecker (マイケル・ブレッカー) - Tenor and Soprano Saxophone
• John Scofield (ジョン・スコフィールド) - Acoustic and Electric Guitar, Electric Sitar
• Dave Holland (デイヴ・ホランド) - Acoustic Bass
• Jack DeJohnette (ジャック・ディジョネット) - Drums, Electric Percussion
• Don Alias (ドン・アライアス) - Percussion
• 日本盤初回プレスCD [Japanese First Pressing CD]
• ボーナス・トラック付
• 日本語解説付
▼ Herbie Hancock, Allstars in Japan 1996 - New York Minute
https://www.youtube.com/watch?v=mv7fUOLKDf4
▼ Herbie Hancock - Manhattan (Island Of Lights And Love)
https://www.youtube.com/watch?v=-lTUuwO725U
▼ Herbie Hancock And The New Standard All Stars Live at Montreux Jazz Festival 1997 (Full)
https://www.youtube.com/watch?v=OKQqo--NVZU
▼ Herbie Hancock All Stars - The New Standards Live (June 27th 1997, Montreal Jazz Festival)
https://www.youtube.com/watch?v=aGe0dPoJSuM
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