こちらは歴史的名盤のひとつとして語れることも多いキャロル・キングのアルバム「Tapestry / つづれおり」で、キャロル・キングといえば、このアルバム名が代名詞となっているくらいに大ヒットを記録したアルバムでもある。
それでも、自分自身はこのアルバムの存在を知ったのがリリースされてから随分と後だったということもあってか、当初はこの"Tapestry"は勿論のこと、キャロル・キングというミュージシャンに対しても全く興味が無かったんだよね。ただ、リリースから年月を経ても、音楽雑誌等では時折このアルバムを名盤として紹介されていたこともあり、この猫と一緒に写ったジャケットの写真は「名盤」というフレーズと共に何となく記憶の片隅に残っていたのだった。
そんな自分が、このアルバムを購入しようと思ったのは、映画の主題歌を集めたコンピレーション・アルバムをレンタルショップで借りたことがきっかけで、そこに収録されていたキャロル・キングの"Anyone At All"(1998年に公開されたトム・ハンクスとメグ・ライアン主演の映画「You've Got Mail / ユー・ガット・メール」に新曲として提供されたオリジナルアルバム未収録曲)に惹かれてのことだった。
▼ Carole King - Anyone At All (from You've Got Mail)
https://www.youtube.com/watch?v=hpZxRa-yetU
勿論、その"Anyone At All"は、"Tapestry"から20年以上も後に発表された曲なので、この"Tapestry"の収録曲ではないものの、"Anyone At All"がきっかけで、名盤という言葉と共に印象に残っていたこの猫と一緒に写ったジャケットのアルバムのことを思い出して、一度聴いてみようと思ったのだった。それに、丁度、この2枚組の特別企画盤「レガシー・エディション」がリリースされていたので良い機会だとも思ったしね。
ということで、リリースされてから30年以上も経ってから、名盤の誉れ高いこの"Tapestry"を初めて聴いたわけだが、実を言うと、初めて聴いたときは、あまりにも素朴な印象があり、これは趣味に合わないかも?なんてことを思ったりもしていた。
それでも、折角買ったのだからと何回か聴いていくうちに徐々にその魅力に気付いてきた感じで、仮に、レンタルショップで借りていたものであったなら、もしかしたらそのまま聴かずに、魅力にも気付かないままだったのかもしれない。
LPレコードの時代も、友人などに借りたものなどは、最初に聴いて気に入らないものはそのまま聴かずにいることが多かったのだが、自分で買ったものは気に入らないからポイなんてことはできずに、失敗したかなと思いつつも、何かしら気に入る部分がないかと探しながら聴いたり、曲順を変えて聴いてみたりと、お金を無駄にしてなるものかとそれなりに努力していたからね(笑)。まぁ、そういった意味では、対価を払って購入したという行為がその後の思い出やらに深く繋がっている場合も案外多いような気もするし、又、愛着という点でも借り物とは大きな違いがあるようにも思う。
アルバムの中では、取り分け、"So Far Away"、"It's Too Late"、"Beautiful"、"You've Got A Friend"、"Will You Love Me Tomorrow?"、"Tapestry"といった曲が好きで、今も良く聴いているのだが、"Home Again"や、"(You Make Me Feel Like) A Natural Woman"も割と好きな曲。ということで、当初抱いていた印象が嘘のように、今では好きな曲が目白押しのアルバムとなっている。
■ レガシー・エディションについて
この「レガシー・エディション」(限定盤)は、新たにデジタル・リマスタリングが施されたオリジナル・アルバムに加えて、"Tapestry"の収録曲が未発表のライヴ音源で構成された"Tapestry - Live"のディスクがセットになった2枚組仕様となっている。
又、そのライヴが収録されたディスクの方も、"Tapestry"と同じ曲順で構成されているのだが、 ライヴの方には8曲目の「Where You Lead / 地の果てまでも」だけは収録されていない。というのも、当時キャロル・キングは、この曲だけはライヴで演奏していなかったようで、この時期にライヴ・レコーディングされた"Where You Lead"は存在しないということが理由らしい。と、そういった理由から、ライヴ・ディスクの方には"Tapestry"のスタジオ・アルバムよりも1曲少ない11曲が収録されている。
その"Where You Lead"については、なんでも、「どこまでもあなたに付いて行く」という男性に依存しているような歌詞が気に入らなかったというのが、当時のライヴでは演奏していなかった理由らしいが、その後に歌詞に変えて新たにレコーディングし直した後は、この曲もライヴで披露されているようだ。(この曲を人気ドラマ「ギルモア・ガールズ」のテーマ曲として使いたいという話が2000年に来たとき、歌詞を変えるいいチャンスだと思ったらしく、この曲の共作者であるトニ・スターンに連絡して、ドラマの主人公である母娘の関係を歌った歌詞に変えてもらってレコーディングし直したとのこと)
なお、ライヴ・ディスクの方は、1973年にボストンのメリーランドで行われたライヴと、ニューヨークのセントラル・パーク行われたライヴ、それに、1976年にサンフランシスのオペラ・ハウスで行われたライヴから抜粋された音源で構成されている。
それと、この「レガシー・エディション」には、2枚のCDに加えて、スタジオでの録音風景を撮影した未公開写真や、詳しいクレジットと共に、このアルバムが制作されていた当時の状況が垣間見れるような充実した英文和訳のライナーノーツがブックレットに掲載されているのも嬉しいところ
又、そのフルカラーのブックレットとは別に封入されている歌詞と対訳が付いたモノクロのブックレットの方にも別途解説が付いており、こちらには更に1曲ごとの解説も記載されているので、アルバムと収録曲について殆ど何も知らずに購入した自分にとっては、それぞれの曲の見識が深まり、より曲を深く味わうことができるといった感じでとても良かったと思う。
■ "Tapestry"がリリースされた後の当時の状況について
アルバムは、ひとりの女性の悲しみと苦悩を表現したコンセプト・アルバムのようなスタイルにもなっているそうで、アメリカに於いては15週連続1位を獲得し、その後、約6年(306週)に亘りチャートに登場し続けていたというシンガー・ソングライター、キャロル・キングの名を世に知らしめたベストセラー・アルバムでもあるのだが、以外にもシングルとしてリリースされたのは"It's Too Late"と"So Far Away"の2曲だけなんだよね。
ただし、この曲にアコースティック・ギターとコーラスで参加しているジェイムス・テイラーがこのアルバムがリリースされた同年の'71年にカヴァーした「You've Got a Friend / きみの友だち」がビルボードチャートで1位を記録しており、同じく、同年にリリースされたロバータ・フラック&ダニー・ハサウェイによるカヴァー「You've Got a Friend / きみの友だち」も同チャートで29位を記録している。
加えて、翌年の1972年にリリースされたマイケル・ジャクソンのソロ・デビューアルバム「Got to Be There / ガット・トゥ・ビー・ゼア」にもこの"You've Got a Friend"のカヴァーが収録されるなど、矢継ぎ早にカヴァーされたのが"You've Got a Friend"で、キャロル・キングのアルバムからはシングルカットされていないにもかかわらず、アルバムの中では特に有名な曲のひとつとなっている。
なお、このアルバムに収録されている"Will You Love Me Tomorrow?"と、"(You Make Me Feel Like) A Natural Woman"の2曲は、ソングライターとして活動していた時期に作曲者のひとりとして名を連ねていた曲のセルフカヴァーともいえる曲で、オリジナルの"Will You Love Me Tomorrow?"は、1960年に黒人ガールズ・グループのシレルズがビルボードチャートで1位(黒人ガールズ・グループによる初のナンバー1ソングとなった曲)を記録しており、その後も'68年にフォー・シーズンズがカヴァーしたヴァージョンが同24位を記録している。又、この"Tapestry"がリリースされた後も、'72年にロバータ・フラック(同76位)、'73年にメラニー(同82位)、'76年にダナ・ヴァレリー(同95位)、'78年にデイヴ・メイソン(同39位)が取り上げるなど、この"Will You Love Me Tomorrow?"も又、多くのミュージシャンによってカヴァーされた曲となっている。
そして、"(You Make Me Feel Like) A Natural Woman"のオリジナルの方は、1967年にアレサ・フランクリンがビルボードチャートで7位となるヒットを記録している。
ちなみに、キャロル・キングは、1972年の第14回グラミー賞に於いて、レコード・オブ・ザ・イヤー (It's Too Late)、アルバム・オブ・ザ・イヤー (Tapestry)、ソング・オブ・ザ・イヤー (You've Got a Friend) と、主要4部門の内、最優秀新人賞を除く3部門を受賞した他、最優秀女性ポップ・ヴォーカルにも選ばれている。又、"You've Got a Friend"をカヴァーしたジェイムス・テイラーの方も最優秀男性ポップ・ヴォーカルを受賞している。
▼ CDを取り外すと、内側に印刷されたLPレコードのラベル(A面とB面)が見えるようになっている。
TRACKLIST (2CD Legacy Edition)
Disc 1: Tapestry
1. I Feel the Earth Move / 2. So Far Away / 3. It's Too Late / 4. Home Again / 5. Beautiful / 6. Way Over Yonder / 7. You've Got a Friend / 8. Where You Lead / 9. Will You Love Me Tomorrow? / 10. Smackwater Jack / 11. Tapestry / 12. (You Make Me Feel Like) A Natural Woman
1. アイ・フィール・ジ・アース・ムーヴ / 2. ソー・ファー・アウェイ / 3. イッツ・トゥー・レイト / 4. ホーム・アゲイン / 5. ビューティフル / 6. ウェイ・オーヴァー・ヨンダー / 7. 君の友だち / 8. 地の果てまでも / 9. ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロー / 10. スマックウォーター・ジャック / 11. つづれおり / 12. ナチュラル・ウーマン
Disc 2: Tapestry - Live (Previously Unreleased Live Piano-Voice Versions)
1. I Feel the Earth Move (Live) / 2. So Far Away (Live) / 3. It's Too Late (Live) / 4. Home Again (Live) / 5. Beautiful (Live) / 6. Way Over Yonder (Live) / 7. You've Got a Friend (Live) / 8. Will You Love Me Tomorrow? (Live) / 9. Smackwater Jack (Live) / 10. Tapestry (Live) / 11. (You Make Me Feel Like) A Natural Woman (Live)
1. アイ・フィール・ジ・アース・ムーヴ(ライヴ) / 2. ソー・ファー・アウェイ(ライヴ) / 3. イッツ・トゥー・レイト(ライヴ) / 4. ホーム・アゲイン(ライヴ) / 5. ビューティフル(ライヴ) / 6. ウェイ・オーヴァー・ヨンダー(ライヴ) / 7. 君の友だち(ライヴ) / 8. ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロー(ライヴ) / 9. スマックウォーター・ジャック(ライヴ) / 10. つづれおり(ライヴ) / 11. ナチュラル・ウーマン(ライヴ)
NOTES
• Album: US 1位 (1971年6月19日~10月1日まで15週連続) / UK 4位
• US (10x Platinum [Diamond] / 1995-RIAA) / UK (Platinum)
• US 年間チャート:1971年 2位 / 1972年 2位 / 1973年 22位
• Singles: "It's Too Late" US 1位 (Gold / 1971-RIAA) / UK 6位、"So Far Away" US 14位
■ Tapestry / つづれおり(レガシー・エディション)
• 発売日:2008年05月21日(アメリカ盤の発売日は2008年4月22日)
• 完全生産限定盤
• 2008年最新デジタル・リマスタリング / 未発表ライヴ音源付き2枚組CD
• 6面デジパック仕様
• 解説・歌詞・対訳付
▼ Carole King - You've got a friend (Live)
https://www.youtube.com/watch?v=qde5NMy7WTU
▼ Carole King - Home Again (Live)
https://www.youtube.com/watch?v=1KVoCaqX4SM
▼ Carole King - It's Too Late (from Welcome To My Living Room)
https://www.youtube.com/watch?v=YkOik48rm-Q
▼ Carole King - Will You Still Love Me Tomorrow (BBC In Concert 1971)
https://www.youtube.com/watch?v=Dfmn9M6hXVI
▼ Carole King - So Far Away (BBC In Concert 1971)
https://www.youtube.com/watch?v=zBMGovfHccI
■ 現在はキャロル・キングの半生を描いたミュージカル「Beautiful - The Carole King Musical」も上演中
▼ Show Clips: BEAUTIFUL: THE CAROLE KING MUSICAL on Broadway w/Chilina Kennedy
https://www.youtube.com/watch?v=KRGDRBkpIbY
■ 映画化も計画されているようだね
▼ キャロル・キングの半生を描いたミュージカル『Beautiful: The Carole King Musical』が映画化
http://amass.jp/53966/
[関連記事]
キャロル・キングを題材にしたミュージカル"Beautiful"のオリジナル・キャストによるアルバム
▶ Beautiful - The Carole King Musical (Original Broadway Cast Recording) (2016)
その他の関連記事
トム・ハンクスとメグ・ライアン主演の映画「You've Got Mail / ユー・ガット・メール」のオリジナル・サウンドトラック(キャロル・キングが提供した新曲"Anyone At All"を収録)
▶ You've Got Mail 「ユー・ガット・メール」 [Music From The Motion Picture] (Soundtrack) (1998)
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