BBCの放送用にスタジオでレコーディングされた「BBC セッションズ」と言われる音源では、過去に"At The Beeb"(アメリカでのタイトルは"At The BBC")という8曲入りのアルバムがリリースされてはいたものの、BBCに残された音源のコンプリート盤としてはこれが初のリリース。
BBCの放送用にレコーディングされたスタジオ・セッションは1973~77年に掛けて計6回行われており、先にリリースされていた"At The Beeb"では、その中の「セッション 1」(1973年2月5日録音)と、「セッション 3」(1973年12月3日録音)が収録されていたのだが、この「On Air - The Complete BBC Radio Sessions / オン・エア ~ BBC セッションズ」ではそれらを含めてBBCの放送用にレコーディングされた全ての曲が新たにリマスタリングされた音源として収録されている。
まぁ、これらの音源は以前からブートレッグ等でも出回っており、ファンの間では知られる音源ではあったのだが、いつかまとめてオフィシャルでリリースされないかなぁと思っていたので、こうしてリリースされたことはファンとしては嬉しい限りだね。きっと心待ちにしていたファンも多かったんじゃないかと。
基本的にはオリジナルに忠実というか、聴けば分かるように、アルバムでの音源を使用してオーヴァーダビングされたレコーディングであったようだが、「セッション 1」に収録されている"Doing All Right"では間奏後のパートをロジャーがヴォーカルをとっていたり、「セッション 2」と「セッション 3」に収録されている"Son And Daughter"では、初期のライヴと同様にギターソロが曲間に挿入されているなど、曲によってはオリジナルとの違いが明確なものも含まれている。
ただし、「セッション 1」はファースト・アルバム「Queen / 戦慄の王女」がリリースされる約5か月前にレコーディングされた音源であり、「セッション 3」に収録されているセカンド・アルバム収録曲の"Ogre Battle"は、そのセカンド・アルバムがリリースされる約3か月前にレコーディングされた音源であるということは見逃せないポイントでもある。
個人的には「セッション 4」のピアノがフィーチャーされたライヴ・ヴァージョンに近い"White Queen (As It Began)"が特に好きで気に入っている。というか、元々、この"White Queen (As It Began)"は、ライヴ・ヴァージョンを聴いてから改めて魅力に気付いたような曲でもあったので、この当時のライヴ・ヴァージョンに近いこの"White Queen (As It Began)"にはほんと惹かれる。
又、3曲が収録されているこの「セッション 4」は、オリジナル・アルバムに収録されているヴァージョンとの違いも顕著で、先に述べた"White Queen (As It Began)"に加えて"Modern Times Rock'n'Roll"もどちらかというと、この当時のライヴでの演奏をスタジオで再現しているといった印象。ただし、この"Modern Times Rock'n'Roll"、ライヴではロジャーではなくフレディがヴォーカルをとっていたようだが。それに、恐らくはライヴでは演奏されたことがないであろう"Nevermore"もスタジオ・ヴァージョンに比べて幾分ラフで生々しくライヴのような雰囲気。
「セッション 5」では、オリジナルのスタジオ・アルバムではメドレー形式で収録されている"Flick Of The Wrist"と"Tenement Funster"がそれぞれ単体で収録されているのが特徴。ただ、オリジナルのスタジオ。ヴァージョンとは全く異なる"Flick Of The Wrist"のギターソロはちょっと微妙な感じではある(笑)。
そして、最後の「セッション 6」では、一時期のライヴではオープニング曲として演奏されていた"We Will Rock You"の高速ヴァージョンがスタジオ・テイクで収録されているなど、一連のセッションの中でも一際オリジナルのアルバム・ヴァージョンとの違いが明確で、個人的にも、この「セッション 6」が一番興味深い音源でもある。
又、この「セッション 6」で演奏されている「News of the World / 世界に捧ぐ」収録曲の"Spread Your Wings"、"It’s Late"、"My Melancholy Bluesといった曲もアルバム・ヴァージョンとは一味違った雰囲気があり興味深いところ。何しろこの「セッション 6」で演奏されている"News of the World"の収録曲はどれもが好きな曲なので、このようにアルバムとは多少違った形でレコーディングされた音源が残されていたのは嬉しい限り。
ということで、この"On Air - The Complete BBC Radio Sessions"、ライヴでの演奏に近い、多少ラフなスタジオ・テイク集として聴くと、ヴォーカルはもとより、コーラスやハーモニー、その他の楽器の演奏部分でもオリジナルのアルバム・ヴァージョンとは細かい部分での違いが垣間見れて、ファンにとっては中々興味深いアルバムなのではないかと思う。
QUEEN
• フレディ・マーキュリー (Freddie Mercury) - Vocals, Piano
• ブライアン・メイ (Brian May) - Guitar, Vocals
• ジョン・ディーコン (John Deacon) - Bass
• ロジャー・テイラー (Roger Taylor) - Drums, Vocals
TRACKLIST
[CD 1]
1.My Fairy King / 2.Keep Yourself Alive / 3.Doing All Right / 4.Liar / 5.See What A Fool I’ve Been / 6.Keep Yourself Alive / 7.Liar / 8.Son And Daughter / 9.Ogre Battle / 10.Modern Times Rock'n'Roll / 11.Great King Rat / 12.Son And Daughter
1. マイ・フェアリー・キング / 2. 炎のロックン・ロール / 3. ドゥーイング・オール・ライト / 4. ライアー / 5. シー・ホワット・ア・フール・アイヴ・ビーン / 6. 炎のロックン・ロール / 7. ライアー / 8. サン・アンド・ドーター / 9. オウガ・バトル / 10. モダン・タイムス・ロックンロール / 11. グレイト・キング・ラット / 12. サン・アンド・ドーター
• Tracks 1-4: Session 1 (February 1973)
• Tracks 5-8: Session 2 (July 1973)
• Tracks 9-12: Session 3 (December 1973)
[CD 2]
1.Modern Times Rock'n'Roll / 2.Nevermore / 3.White Queen (As It Began) / 4.Now I’m Here / 5.Stone Cold Crazy / 6.Flick Of The Wrist / 7.Tenement Funster / 8.We Will Rock You / 9.We Will Rock You [Fast] / 10.Spread Your Wings / 11.It’s Late / 12.My Melancholy Blues
1. モダン・タイムス・ロックンロール / 2. ネヴァー・モア / 3. ホワイト・クイーン / 4. ナウ・アイム・ヒア / 5. ストーン・コールド・クレイジー / 6. フリック・オブ・ザ・リスト / 7. テニメント・ファンスター / 8. ウィ・ウィル・ロック・ユー / 9. ウィ・ウィル・ロック・ユー [ファスト・ヴァージョン] / 10. 永遠の翼 / 11. イッツ・レイト / 12. マイ・メランコリー・ブルース
• Tracks 1-3: Session 4 (April 1974)
• Tracks 4-7: Session 5 (October 1974)
• Tracks 8-12: Session 6 (October 1977)
NOTES
• SHM-CD
• 見開き6面デジパック仕様
• 最新デジタル・リマスター
• 解説・歌詞・対訳付
▼ Queen - We Will Rock You (Fast) [Official Lyric Video - Queen On Air]
https://www.youtube.com/watch?v=Ekm6WtKwQos
▼ Queen - Nevermore (BBC Session / April 3rd 1974, Langham 1 Studio)
https://www.youtube.com/watch?v=--T0ix2IiLs
▼ Queen - My Melancholy Blues (BBC Session / October 28th 1977, Maida Vale 4 Studio)
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