2015/01/19

DYNASTY 「地獄からの脱出」 / KISS (1979)

CDの帯:地獄からの脱出 / KISSAlbum Cover (front): Dynasty / KISS2年間に渡るグループとしての活動停止を経てリリースされたこの「Dynasty / 地獄からの脱出」は多くのファンを戸惑わせたアルバムでもあった。つまりは、アルバム1曲目の"I Was Made for Lovin' You"がディスコ・ミュージックを取り入れたスタイルのサウンドだったのだ。

まぁ、当時一世を風靡していた「ディスコ・ミュージック=ディスコで踊るための音楽」に対し、ロック・ファンの多くが快く思っていなかったようなところもあったので、批判的な評価も致し方ないところではあったのかもしれない。多くのファンはキッスにダンス・ミュージックなんて求めていなかっただうから。

しかしながら、そんなファン層の葛藤(笑)をよそに、シングルとしてもリリースされた"I Was Made for Lovin' You"は一般層をも取り込んで世界中で大ヒットしたのだった。

ただ、この"I Was Made for Lovin' You"は、ディスコ・スタイルの曲とはいっても、曲自体はギターのリフで構成されているし、短いながらもギター・ソロもあるので、徹頭徹尾ディスコしているというわけではないんだけどね。

ちなみに、この"I Was Made for Lovin' You"は、1979年にリリースされた岩崎宏美さんのアルバム「ライブ & モア」(ライブ・アルバム+スタジオ録音の新曲が5曲という"KISS Alive IIと同じようなような構成の2枚組アルバム)に「ラビン・ユー・ベイビー」(ライヴ・ヴァージョン)として収録されている。何故、そんなことを知っているのかといえば、レコード盤としてリリースされた当時に自分はこのアルバムを買っていたから(笑)。

その他にも、日本で大人気だった女性デュオ"Wink"の5枚目のアルバム「Crescent / クレセント」(1990年リリース)には「悪い夢」というタイトルで"I Was Made for Lovin' You"のカヴァーが収録されている。

ただし、この辺りについては、岩崎宏美さんのアルバムがビクター、そして"Wink"のアルバムはポリスターから発売されていたということで、その当時のキッスのアルバムの日本での発売元と同じだったことがもしかしたら関係しているのかも知れない。例えば、楽曲使用の許可を得易いとか、使用料を多少安くしてもらえるとか(笑)。

 

▼ KISS - I Was Made For Lovin' You (Music Video)

https://www.youtube.com/watch?v=ZhIsAZO5gl0

 

Album Cover (back): Dynasty / KISSと、このアルバムに於いては、良くも悪くも、"I Was Made for Lovin' You"を抜きにしては語れない部分もあるのだが、実は、そのディスコ・スタイルの曲である"I Was Made for Lovin' You"の衝撃と同等、もしくはそれ以上の革命がこのアルバムにはあったのだ。

それは、これまでキッスの中では第4のヴォーカリストという立場であったエース・フレーリーのリード・ヴォーカル曲が、メイン・ヴォーカリストのポール・スタンレーと並ぶ割合で収録されているという点。つまりは、ジーン・シモンズのリード・ヴォーカル曲数を越えて、ポールと同数の最多の曲でリード・ヴォーカルをとっているということなのだ。ちなみに、アルバムに於けるヴォーカル曲数は、ポール3曲、エース3曲、ジーン2曲、ピーター1曲となっている。

2年間の活動停止期間中には、キッス初のベスト・アルバムである"Double Platinum"のリリース、そして、メンバー4人のソロ・アルバムを同時リリースといったこともあったが、この"Dynasty"でエースのリード・ヴォーカル曲が増えたことについては、やはり、エースのソロ・アルバムからのシングル・カット曲"New York Groove"がビルボード・チャートで13位のヒットを記録するといったように、エースのソロ・アルバムの成功が要因としてあったのかもしれない。

そして、"I Was Made for Lovin' You"のミュージック・ビデオでも分かるように、このアルバム発表後のツアーでは新たなコスチュームが披露されたわけだが、ビデオやツアーでのサプライズ効果を考えてのことなのか、アルバム"Dynasty"のジャケットでは全く披露されていなかったのだ。(ちなみに、"Love Gun"のときは、先にジャケットで新たなコスチュームが披露されていた)

 

▼ キッス史上最もカラフルで華やかなコスチューム(ソロ・アルバムで使用された各自のイメージカラーを踏襲した配色)

KISS - Dynasty Costumes  KISS - Dynasty Costumes

 

▼ KISS - Sure Know Something (Music Video)

https://www.youtube.com/watch?v=FA2aoSsDEnQ

 

アルバムとしては結構充実しており、楽曲単体でみても、これまでの曲に比べると、かなり練られている印象がある。個人的な好みで言えば、"Dirty Livin'"は、これまでのピーターの曲の中でも一番好きと言ってもいいくらいの曲だし、エースの"2,000 Man"(ローリング・ストーンズのカヴァー曲)もエースのイメージに合った秀逸のカヴァーとなっている。又、ジーンの"Charisma"と"X-Ray Eyes"の2曲もジーンらしい雰囲気があって結構好きだし、ミディアム・テンポのポールの2曲"Sure Know Something"と"Magic Touch"もこれまた好きといったように、けっこう好きな曲が多いアルバムでもある。更に付け加えれば、ソロアルバムでの雰囲気を踏襲したようなエースの"Hard Times"もエースらしさがあって好きだし、勿論、"I Was Made for Lovin' You"も好きな曲のひとつ。

なお、アメリカでは"I Was Made for Lovin' You"と"Sure Know Something"の2曲がシングルとしてリリースされたが、国によっては、"2,000 Man"、"Dirty Livin'"、"Magic Touch"といった曲もシングルとしてリリースされていたようだ。

中でも"2,000 Man"は、リユニオン後のツアーでもエースの持ち歌としてセットリストに組まれるなど、ファンの間でも結構人気の高い曲みたいで、"Youtube"にアップロードされているローリング・ストーンズの"2000 Man"にあるコメントを見ても「KISS」や「Ace Frehley」といったフレーズが数多く見受けられる。ローリング・ストーンズのオリジナル・ヴァージョンは割とサイケな雰囲気の曲なので、初めて聴いた時は、元々はこんな曲だったのかと驚いたけどね。

 

▼ KISS - 2000 Man
https://www.youtube.com/watch?v=1qmuSg5iDCI

▼ Rolling Stones - 2000 Man (ローリング・ストーンズのオリジナル・ヴァージョン)
https://www.youtube.com/watch?v=4DLKoOs3IpU

▼ Live At The Sydney Showground 1980 - 2000 Man ~ Ace Guitar Solo (シドニーでのライヴ)
https://www.youtube.com/watch?v=kr8Xy80SGdA

 

Album Cover (back): Dynasty / KISSちなみに、ジャケット裏面にクレジットされている曲目の曲順はバラバラ。過去にも"Rock and Roll Over"や"Love Gun"といったアルバムでは同様に曲順がバラバラに表記されていて、当時は不思議に思っていた。もしかしたらアメリカではこのような曲順なのかと、クレジットされている曲順でカセット・テープに録音して聴いてみたりもしていたのだが、いや、やっぱりこれは有り得ないという感じだった(笑)。

邦題のアルバムタイトルである「地獄からの脱出」については、ハード・ロックという枠からの脱出、つまりは、地獄=これまでのキッス・サウンドといった意味合いがあったのではないかと思う(個人的な推測だが)。しかしながら、この「地獄からの脱出」も序章に過ぎなかったのだった・・・。

余談だが、発売前に知った収録曲名に"Hard Times"があることを見つけた当時の自分は、これはボズ・スキャッグスのカヴァーに違いないと勝手に思い込んで、実はけっこう楽しみにしていた。と言うのも、ボズ・スキャッグスの"Hard Times"は、ラジオでも良く流れていたし、個人的にも結構好きだったからね。これは、きっとピーターがヴォーカルをとっているに違いないと、ピーターの声での"Hard Times"を頭の中でイメージしてワクワクしていたことを覚えている(笑)。

 

CD Case (inside): Dynasty / KISSKISS - BAND MEMBERS
• Paul Stanley - Guitars, Vocals
• Gene Simmons - Bass Guitar, Vocals
• Ace Frehley - Guitars, Vocals
• Peter Criss - Drums, Vocals

 

TRACKLIST
1. I Was Made For Lovin' You / 2. 2,000 Man / 3. Sure Know Something / 4. Dirty Livin' / 5. Charisma / 6. Magic Touch / 7. Hard Times / 8. X-Ray Eyes / 9. Save Your Love

1. ラヴィン・ユー・ベイビー / 2. トゥー・サウザンズ・マン / 3. シュア・ノウ・サムシング / 4. ダーティ・リヴィン / 5. カリスマ / 6. マジック・タッチ / 7. ハード・タイムス / 8. エックス・レイ・アイズ / 9. セイヴ・ユア・ラヴ

 

NOTES
• Lead Vocals:  Paul Stanley (1, 3, 6) /  Gene Simmons (5, 8) /  Ace Frehley (2, 7, 9) /  Peter Criss (4)

• CD発売日:1993/5/26(20周年記念再発盤)
• 解説・歌詞・対訳付

• Album: US 9位 (Platinum / 1979-RIAA) / Netherlands 1位 / Australia 2位 / France 2位 / New Zealand 2位 / Canada 6位 / Germany 8位 / Austria 13位 / Switzerland 13位 / Italy 16位 / Sweden 17位 / UK 50位

• Single: "I Was Made for Lovin' You" - US 11位 (Gold / 1979-RIAA) / Belgium 1位 / Canada 1位 / Netherlands 1位 / New Zealand 1位 / Australia 2位 / France 2位 / Germany 2位 / South Africa 2位 / Switzerland 2位 / Austria 6位 / Italy 10位 / Norway 10位 / Sweden 19位 / UK 50位

• Single: "Sure Know Something" - US 47位 / Netherlands 3位 / Australia 5位 / New Zealand 11位 / Germany 28位 / Canada 48位

 

▼ おまけ

KISS - I Was Made For Lovin' You (Drum Cover by Sina)

https://www.youtube.com/watch?v=P1Beb5nyRrg

 

 

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