自分が初めて買ったスティクスのアルバムが、この「Paradise Theatre / パラダイス・シアター」で、購入動機はこのアルバムからのファーストシングルになった"The Best Of Times"に惹かれてのことだった。
当然のことながら、リリースされた当時に購入したのはLPレコードだったわけだが、LPのB面は描かれた絵柄が光に反射して虹色に光る加工がされたレーザー・エッチング (Laser Etched) 仕様になっていたことは今でも覚えている。
そして、このアルバムでスティクスに興味を持ってしばらく経った頃、不定期で放送されていたNHKのヤング・ミュージック・ショーで、このスティクスの来日公演が放送されたことから、益々興味を持つようになったのだ(当時録画したビデオテープは今でも持っている)。そういえば、スティクスがヴォーカリスト3人体制のバンドだということもこのテレビ番組を観て知ったことだった。
番組で放送されたのは武道館で行われたパラダイス・シアター・ツアーの最終公演で、アンコールの場面ではデニス・デ・ヤングがツアーの最後を記念してステージ上でご自慢のヒゲを剃ったことも印象的だった。
この"Paradise Theatre"は、デビュー10周年を目前に控えたスティクスの通算10作目のアルバムということで、相当な意気込みを持って制作されたアルバムであろうことは想像に難くないのだが、その意気込みが空回りすることなく、実際にこれだけの素晴らしいコンセプトアルバムを完成させたのだから、この時期がいかにバンドとして充実していたのかが窺い知れるというもの。
アルバムのコンセプトとしては、彼らの出身地であるシカゴに実在した劇場(1928年~1956年閉鎖 / 1958年解体)をモデルにした栄枯盛衰がテーマになっているわけだが、それでも10曲目の「A.D. 1958 / 1958年(パラダイス・シアター・クローズド)」の歌詞を見ても分かるように、ここでの楽しい思い出は僕らが忘れない限りは心の中でずっと続くと締め括られている。
▼ A.D. 1958 / 1958年(パラダイス・シアター・クローズド)
And so my friends we'll say goodnight
For time has claimed its prize
But tonight can always last
As long as we keep alive the memories of Paradise
だから友よ、おやすみを言わなくてはならないんだ
時間が来てしまったからね
だけど今夜は永遠に続くはずさ
僕たちがパラダイスの想い出を忘れないでいる限りはね
なお、上にあるジャケットのタイトル部分を拡大した写真を見てもらえれば分かるように、ジャケットの表と裏ではアルバムタイトルのスペルに違いがあり、表では「Theatre」となっているところが、裏側では「Theater」となっている。これは「Theatre」が英国式のつづりで、「Theater」が米国式のつづりという違いになるのだが、アメリカではかつて、単語を発音した通りのつづりにしてアメリカ独自のスペルを作ろうとする試みがあったらしいので、恐らくはパラダイス・シアターのオープンからクローズするまでの時の流れというものをこのスペルの違いで示しているのではないかと思う。
又、サウンドの面では、1曲目の「A.D. 1928 / 1928年(パラダイス・シアター・オープン)」と、10曲目 「A.D. 1958 / 1958年(パラダイス・シアター・クローズド)」は、シングルでもヒットした5曲目に収録されている「The Best Of Times / ザ・ベスト・オブ・タイムズ」の出だしの部分と同じメロディーが使われているのだが、1曲目の"A.D. 1928"だけは他の曲より若干古風なピアノの音になっていたりと、こういった細かい部分での演出もあって中々面白い。
ちなみに、ラストの11曲目に収録されているインストゥルメンタルの小曲"State Street Sadie"もオープニングの"A.D. 1928"と同様に古風なピアノの音になっており、もしかしたら10曲目の"A.D. 1958"の歌詞にある「だけど今夜は永遠に続くはずさ、僕たちがパラダイスの想い出を忘れないでいる限りはね」という部分と連動した懐古的な意味合いが込められているのかもしれない。
アルバムはビルボードチャートで1位を記録。又、アルバムからは"The Best of Times" (同3位)、"Too Much Time on My Hands"(同9位)と、2曲のトップ10シングルが生まれるなどスティクスにとってはこれまでで最も成功を収めたアルバムとなった。
個人的には8曲目の"Snowblind"からラストのインストゥルメンタル曲"State Street Sadie"までの流れが好きで、特に9曲目の"Half-Penny, Two-Penny"から10曲目の"A.D. 1958"、そして11曲目の"State Street"Sadie"と組曲のような展開を見せる流れは感動的であり圧巻。
そして、自分自身はこの後、しばらくしてから後追いで前作の「Cornerstone / コーナーストーン」を購入。そして、他のアルバムも追々辿って買っていこうとしていた矢先にリリースされたニューアルバムが次作のドモアリガート、ミスターロボット(笑)。いやー、これでなんか冷めてしまって、それ以降はCD化された際に買ったコンピレーションアルバムまでスティクスから離れてしまっていたのだった。
その後は、2011年に再発されたこの"Paradise Theatre"のCDで購入するまで、スティクスのアルバムといえば、長らくはそのコンピレーションアルバムだけしか持っていなかったのだが、次作の「Kilroy Was Here / ミスター・ロボット」でスティクスから離れてしまったとはいえ、やっぱりこのアルバムの思い出はずっと心の奥底に残っていたのだった。いや、ほんと、今聴いても素晴らしいアルバムだと思う。
でも、それはそうと、このやる気の無いCDの帯ときたら(笑)。ベースとなる規定のフォーマットにただ文字を落とし込んでいるだけだからね。せめてフォントくらいは気を使えばいいのに・・・。それと、ディスク及び背ラベルの表記が"Theatre"ではなく"Theater"となっているのもマイナスポイントかな。
▼ Styx - A.D. 1928 / Rockin' The Paradise (Live at Budokan '82)
▼ Styx - The Best of Times (Live at Budokan '82)
▼ Styx - Half-Penny, Two-Penny / A.D. 1958 (Live at Budokan '82)
STYX - BAND MEMBERS (As Listed in CD Booklet)
• Dennis DeYoung (デニス・デ・ヤング) - Keyboards & Vocals
• Chuck Panozzo (チャック・パノッツォ) - Bass Guitar & Bass Pedals
• John Panozzo (ジョン・パノッツォ) - Drums & Percussion
• Tommy Shaw (トミー・ショウ) - Guitars & Vocals
• James Young (ジェイムス・ヤング) - Guitars & Vocals
TRACKLIST
1. A.D. 1928 / 2. Rockin' The Paradise / 3. Too Much Time On My Hands / 4. Nothing Ever Goes As Planned / 5. The Best Of Times / 6. Lonely People / 7. She Cares / 8. Snowblind / 9. Half-Penny, Two-Penny / 10. A.D. 1958 / 11. State Street Sadie
1. 1928年(パラダイス・シアター・オープン) / 2. ロッキン・ザ・パラダイス / 3. 時は流れて / 4. 砂上のパラダイス / 5. ザ・ベスト・オブ・タイムズ / 6. ロンリー・ピープル / 7. 愛こそすべて / 8. 白い悪魔 / 9. ハーフ・ペニー, トゥー・ペニー / 10. 1958年(パラダイス・シアター・クローズド) / 11. ステイト・ストリート・セイディ
NOTES
• Tracks 1, 2, 4, 5, 6, 10 (Lead vocals - Dennis DeYoung)
• Tracks 3, 7 (Lead vocals - Tommy Shaw)
• Track 9 (Lead vocals - James Young)
• Track 8 (Lead vocals - James Young & Tommy Shaw)
• Track 11 (Instrumental)
• Album: US 1位 (3x Platinum / 1984-RIAA)、UK 8位
• Singles: "The Best of Times" US 3位、UK 42位 / "Too Much Time on My Hands" US 9位 / "Nothing Ever Goes As Planned" US 54位
• CD発売日:2011年10月12日(再発盤)
• SHM-CD
• 解説・歌詞・対訳付
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