1978年の主演映画「グリース」から、翌年の1979年にリリースされた前作の「Totally Hot / さよならは一度だけ」、そして、1980年公開の映画「ザナドゥ」と、新境地の開拓を推し進めてきたオリビアが、更なるステップとして扉を開いたアルバムがこの「Physical / フィジカル(虹色の扉)」。
ということで、この"Physical"がリリースされるまでの数年の経緯を知っている人は、このアルバムでの方向性もある程度は必然的な流れとして捉えることができたと思うのだが、シングルの"Physical"が大ヒットを記録したことで、昔のオリビアしか知らないという人にまで知れ渡った所為か、突然変異のような扱いを受けていた部分も少なからずあったようにも思う。
自分自身はといえば、新境地という意味では前作の"Totally Hot"も個人的に好きなアルバムだったというか、それ以前の主だった代表曲はある程度知っていたとはいえ、"Totally Hot"が初めて買ったオリビアのアルバムでもあったので、この"Physical"も好みという点では多少違う部分はあったものの、それなりに許容できる範囲ではあった。それに、何よりも、このアルバムによってヴォーカル・スタイルにも幅が生まれ、より表現力が増したことは紛れも無い事実だと思うんだよね。
ただ、そうは言っても、このアルバム"Physical"は、大ヒットしたシングル"Physical"のミュージック・ビデオのイメージが特別目立ってしまうということもあってか、アルバムとしてはあまり評価されることもなく、タイトル・トラックの"Physical"だけで語られることが多いような印象を受ける。
でも、アルバム自体は結構バラエティーに富んだ曲構成になっており、例えば、アルバムの最後に収録されているオリビアが作詞作曲した"The Promise (The Dolphin Song)"なんかは、オリビア自身は何も変わっていないんだということを感じさせられるような曲。ちなみに、この"The Promise (The Dolphin Song)"は、他の曲に比べるとシンプルな印象がある所為か、当時は地味な曲といった感じで特に好きというわけでもなかった曲だが、歳を重ねてから聴くと、これがまたピュアな雰囲気で良いのだ。
又、ソロとしてデビューする前はクリフ・リチャードのバック・コーラスとして活動していた時期があったので、そういった経緯もあってのことだろうと思われるが、クリフ・リチャードのカヴァー曲"Silvery Rain"(1971年にシングルとしてリリースされた曲)が収録されているのも、新たなる境地へ踏み出しながらも、原点を見つめ直すというか、この"Physical"も当時から線で繋がっているということを示しているかのようでもあり興味深いところ。
▼ 1971年に「シルバーレイン」の邦題でリリースされたクリフ・リチャードの日本盤シングル
Discogs - シルバーレイン (Silvery Rain) / クリフ・リチャード
なお、タイトル・トラックの"Physical"について付け加えておくと、この曲でギターソロのパートを演奏しているのは"TOTO"のスティーブ・ルカサー。
ちなみに、このアルバムは、収録されている全曲のミュージック・ビデオが制作されている。又、ビルボード・チャートで10週連続1位の大ヒットを記録した"Physical"の陰に隠れがちだが、セカンド・シングルの"Make A Move On Me"もビルボード・チャートでトップ5に入るヒットを記録しているのだ。
ただひとつ言わせてもらえれば、バラード曲の2曲"Falling"と"Carried Away"多少淡白な感じがするので、この点がちょっと残念なところ。この2曲がもうちょっと魅力的なバラード曲だったらアルバムの充実度もグッと上がったと思うんだけどね。それでも、まぁ、この辺りは好みの問題でもあるし、捉え方も人それぞれなのかもしれない。
まぁ、冒頭でも述べたように、タイトル・トラックの"Physical"だけで拒否反応を示す人も少なからずいたようだが、ビジュアルとサウンドの両面で大きな変化を見せた"Totally Hot"でファンになった自分と同様に、初めて買ったオリビアのアルバムが"Physical"であり、この"Physical"を入り口としてファンになったという人も案外多かったのではないかと。現に、タイトル・トラックの"Physical"はその後も現在に至るまでずっとライヴでは外せない重要なレパートリーとなってるし、多くのファンが、この曲を演らないライヴなんて考えられないと思っていると思う。
補足しておくと、ジャケットの写真は写真家のハーブ・リッツ (Herb Ritts) によるもので、ハーブ・リッツはその後の1986年にリリースされたマドンナのアルバム「True Blue / トゥルー・ブルー」でもジャケットの写真を手掛けており、その"True Blue"も、この"Physical"と同じような横顔の構図の写真になっているのが興味深いところ。
なお、このアルバムは、収録されている全曲のミュージック・ビデオが制作されている。
▼ Olivia Newton John - Physical (rtve.es)
▼ Olivia Newton-John - Make A Move On Me (The American Music Awards 1982)
▼ Olivia Newton-John - Silvery Rain (Music Video)
こちらはライヴ・ヴァージョン
▼ Olivia Newton-John - Silvery Rain (Live)
https://www.youtube.com/watch?v=jkd6V1fbeRk
こちらはクリフ・リチャードのオリジナル・ヴァージョン
▼ Cliff Richard - Silvery Rain
https://www.youtube.com/watch?v=YQrz2oaTcf0
▼ Olivia Newton-John - The Promise (The Dolphin Song) (Music Video)
TRACKLIST
1. Landslide / 2. Stranger's Touch / 3. Make A Move On Me / 4. Falling / 5. Love Make Me Strong / 6. Physical / 7. Silvery Rain / 8. Carried Away / 9. Recovery / 10. The Promise (The Dolphin Song)
1. ランドスライド / 2. ストレンジャーズ・タッチ / 3. メイク・ア・ムーヴ・オン・ミー / 4. 貴方にフォーリング / 5. 愛あればこそ / 6. フィジカル / 7. シルヴァリー・レイン / 8. キャリード・アウェイ / 9. 絆はふたたび / 10. 愛のプロミス
NOTES
• CD発売日:2002年3月6日(再発盤)
• デジタル・リマスター
• 解説・歌詞・対訳付
• 品番:UICY-3294
• Album: US 6位 (2x Platinum / 1984-RIAA) / UK 11位 / AUS 3位
• Singles from Physical:
1. Physical: US 1位 (Platinum / 1982-RIAA) / UK 7位 (Silver) / AUS 1位
2. Make A Move On Me: US 5位 / UK 43位 / AUS 8位
3. Landslide: US 52位 / UK 18位
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