新曲(2曲)とニュー・レコーディング・ヴァージョン(2曲)が収録されたクリスティーナ・アギレラ初のベスト・アルバムがこの「Keeps Gettin' Better - A Decade of Hits / キープス・ゲッティン・ベター ~ グレイテスト・ヒッツ」。日本盤には最も好きな曲の一つである"The Voice Within"がボーナス・トラックとして収録されているのが個人的には嬉しいところ。
自分が買ったのは、10曲のビデオクリップが収録された"DVD"付きの"Delux Edition"(限定版)。ただ、新曲として収録され、シングルカットもされた"Keeps Gettin' Better"のビデオクリップは収録されておらず、その点だけがちょっと残念。
この"Keeps Gettin' Better - A Decade of Hits"、まずはジャケットの写真に目を奪われるわけだが、パッケージ全体に施されたポップアートスタイルのデザインも統一感があり、トータルデザインも抜け目無く仕事がなされた様子が伺える。
なんてことを思っていたら、彼女曰く、このアルバムのアートワークやビデオはアンディ・ウォーホルやロイ・リキテンスタインに代表される'60年代のポップアートとそのフィーリングにインスパイアされて出来上がったものだそうで、あの色彩や"fun"に魅かれたからとのこと。どうりでビビッとくる訳だ。又、収められた新曲の"Keeps Gettin' Better"の歌詞も楽しい色彩やポップアートを参考にして作られたそうだ。まぁ、それ以前に、彼女の存在自体がポップアートだとも言えそうなんだけどね。
ただ、そのジャケットに関しては黄色の枠で縁取りされた"Delux Edition"よりも、左上部に背景のブルーがちょっぴり見える"Standard Edition"(通常盤)の方がイメージとカラーに統一感があってデザイン的にも良いと思う。
年代順に曲が並べられたこのベスト・アルバムを聴いていると、今時の音で彩られたファースト・アルバムから、ロック色が増し、よりへヴィーになった"Stripped"、そして、幼い頃から祖母に良く聴かされていたという1920年から40年代のソウル、ジャズ、ブルースといったサウンドに焦点を当てて制作された"Back to Basics"へと、サウンドが大きく変貌していく様が実に良く分かる。更には、次作の予告編とも言えるエレクトロポップ色が打ち出された新曲とリメイクされた再録音曲で、再び今後の変貌を予感させられるわけなのだが、このように、築き上げたものをあっさりと破壊し、次々と新たな可能性と表現方法を追求するそうした姿勢は、様々なジャンルのクリエーターと通じるものでもあり、又、そういったアーティスティックなところが彼女に惹かれる部分でもある。
それにしても、テレビやラジオで彼女の歌を見聴きしていた時は、多少アイドルっぽく感じていた部分もあったのだが、こうして、時代を通して聴いてみると、実は、そうした部分は、ファースト・アルバムに於いてのみの印象だったことが良く分かる。
▼ Christina Aguilera - I Turn To You
https://www.youtube.com/watch?v=z4q05resEvc
彼女自身の言葉として「ファースト・アルバムは自分でも軽薄な音楽だと分かっていた」とライナーノーツにも書かれているのだが、しかしながら、そのファースト・アルバムが、セールスを意識した流行もの的サウンドで彩られたアルバムであったことも、まだ音楽業界のことをよく知らない新人のデビュー・アルバムということを考えれば仕方ない部分もあったと思うし、恐らくはアギレラの思いや意見が入り込む余地もほとんどなく、プロダクションやレコード会社主導で多くが進められたのではないかとは思うところでもある。勿論、そんな中でもアギレラの卓越した歌唱力は遺憾なく発揮されているわけだが。
しかしながら、彼女が只者ではないのは、セカンド・アルバムで、早くも、周りが全てをお膳立てしてくれるというアイドル路線からの脱却を計ったことで、そのことは「ありのままの自分」を意味する"Stripped"と題されたアルバム・タイトルや、収録曲のソングライターのクレジットに彼女の名前が多く見られ、更にはプロデューサーとして名を連ねるようになったことからもうかがい知れる。
▼ Christina Aguilera - Fighter
https://www.youtube.com/watch?v=PstrAfoMKlc
▼ Christina Aguilera - The Voice Within
https://www.youtube.com/watch?v=nA2k79EGHbc
一言に脱却と言葉にするのは簡単だが、ファースト・アルバムがアメリカだけで800万枚、全世界で1,700万枚というビッグセールスを記録したことを考えれば、一人の女性がありのままの自分を表現するという意志を通して次作リリースするということは並大抵のことではなかったと思う。当然、前作の延長線上で制作すれば、それなりのセールスは計算できると考える人達も少なからずいたことだろうからね。
そして、アギレラにとって、ある意味大きな賭けであったと思われるその"Stripped"も大成功を収めたことにより、次作のサード・アルバム"Back to Basics"では、タイトルからも分かるように、より自分の音楽的ルーツに立ち返るわけだが、その"Back to Basics"もアメリカをはじめ、世界15か国でアルバムチャートの1位を記録し、アギレラの選択した道は多くの人達に支持されることとなったのである。
"DVD"では、そんな足跡を映像を通しても観ることができるわけだが、ファースト・アルバム収録曲のビデオクリップではアイドル的イメージで制作されたような印象があったものの、セカンド・アルバム以降のビデオクリップではそんなアイドル的イメージを払拭するかのように、メイクやファッションといったビジュアル面でも一気に弾けていく様が見て取れる。
▼ Christina Aguilera - Keeps Gettin' Better
https://www.youtube.com/watch?v=gkPxgUshpec
私自身、セカンド・アルバムでのアイドル路線からの脱却というアギレラの決断が無かったら、きっと彼女に興味を持つこともなかったと思うのだが、それにしても、声量豊かで歌も上手いよね。彼女を現代最高のヴォーカリストと称するミュージシャンがいるのも頷けるというもの。現在は結婚して子供もいらっしゃるようだが、できることなら、このままずっと自分の信じる道を突き進んで行ってもらいたいね。・・・なんてことを思っていたりもしたのだが、流石アギレラ!次作の"Bionic"では又々やってくれました。
TRACKLIST (Japanese Delux Edition)
[CD]
1. Genie In A Bottle / 2. What A Girl Wants / 3. I Turn To You / 4. Come On Over Baby (All I Want Is You) / 5. Nobody Wants To Be Lonely [with Ricky Martin] / 6. Lady Marmalade [with Lil' Kim, Mya, & Pink] / 7. Dirrty Featuring Redman / 8. Fighter / 9. Beautiful / 10. The Voice Within / 11. Ain't No Other Man / 12. Candyman / 13. Hurt / 14. Genie 2.0 / 15. Keeps Gettin' Better / 16. Dynamite / 17. You Are What You Are (Beautiful)
1. ジニー・イン・ア・ボトル / 2. ホワット・ア・ガール・ウォンツ / 3. アイ・ターン・トゥ・ユー / 4. カム・オン・オーヴァー・ベイビー(オール・アイ・ウォント・イズ・ユー) / 5. ノーバディ・ウォンツ・トゥ・ビー・ロンリー(with リッキー・マーティン) / 6. レディ・マーマレイド(with リル・キム、マイア & Pink) / 7. ダーティー featuring レッドマン / 8. ファイター / 9. ビューティフル / 10. ザ・ヴォイス・ウィズイン / 11. エイント・ノー・アザー・マン / 12. キャンディマン / 13. ハート / 14. ジニー 2.0 / 15. キープス・ゲッティン・ベター / 16. ダイナマイト / 17. ユー・アー・ホワット・ユー・アー(ビューティフル)
[DVD]
1. Genie In A Bottle / 2. What A Girl Wants / 3. I Turn To You / 4. Come On Over (All I Want Is You) / 5. Dirrty / 6. Fighter / 7. Beautiful / 8. Ain't No Other Man / 9. Candyman / 10. Hurt
1. ジニー・イン・ア・ボトル / 2. ホワット・ア・ガール・ウォンツ / 3. アイ・ターン・トゥ・ユー / 4. カム・オン・オーヴァー・ベイビー(オール・アイ・ウォント・イズ・ユー) / 5. ダーティー featuring レッドマン / 6. ファイター / 7. ビューティフル / 8. エイント・ノー・アザー・マン / 9. キャンディマン / 10. ハート
NOTES
• Track 10 - The Voice Within (UK盤 / 日本盤ボーナス・トラック)
• Track 14 - Genie 2.0 ("Genie In A Bottle"のニュー・レコーディング・ヴァージョン) / Track 17 - You Are What You Are (Beautiful) ("Beautiful"のニュー・レコーディング・ヴァージョン)
• Track 15 - Keeps Gettin' Better (新曲) / Track 16 - Dynamite (新曲)
• 日本盤初回プレスCD(限定盤) [Japanese First Pressing CD]
• 解説・歌詞・対訳付
[関連記事]
▶ Mi Reflejo 「ミ・リフレホ ~マイ・リフレクション」 (2000) / Christina Aguilera
▶ Bionic 「バイオニック」 (2010) / Christina Aguilera
▶ Burlesque 「バーレスク」 (Soundtrack) (2010) / Christina Aguilera & Cher
0 件のコメント:
コメントを投稿