クイーンのアルバムで最も物議を醸し出したものといえば、恐らくはブラックミュージックを大胆に取り入れたこの「Hot Space / ホット・スペース」なのではないかと思う。当時はシンセベースが鳴り響くダンサブルなサウンドに賛否両論あったものの、どちらかといえば否定的な意見が多かったように覚えている。
クイーンのサウンドと言えば、イギリスのバンドということもあってか、鉛色の空から小雨が降り粉雪が舞うという冬の街の情景が個人的なイメージとしてあるのだが、このアルバムで感じられる季節といえば夏だね。それも街の情景ではなく、澄み渡る青空と南国の島といったイメージ。
当時は、雑誌のインタビュー記事などから、このアルバムがジョンとフレディの音楽的趣味、嗜好が反映されたもので、これまでハードロック寄りの楽曲を多く作ってきたブライアンとロジャーは必ずしも納得していない様子がうかがわれたりもしていたのだが、その当時は、自分も「分かる分かる」とブライアンとロジャーの肩を持つ感じでいた。ただ、これまでにも様々なジャンルの音楽を取り入れた幅広い音楽性を提示してきたのがクイーンだったので、これを受け入れ難しと捉えてはいなかったように記憶している。それに"Dancer"や"Cool Cat"はけっこう好きだったし。
結果的に、クイーンは、この路線を継承することはしなかったのだが、それでも、ここでの試みが、後のサウンドへと確実に消化され融合されていったことは間違いないと思う。これまでのクイーン・サウンドのイメージからはちょっと離れた印象はあるものの、こういった一面もあるんだと思って聴けばけっこう楽しめるのではないかと。考えてみれば、クリエーターとして新境地を追求する姿勢はあって当然だと思うし、幅広い音楽性がクイーンの魅力でもあるわけだからね。
実は、そんなことよりも、当時の自分にとって、もっと大きな問題だったのは、ブライアンとロジャーがヴォーカルをとる曲が無い(曲の一部でフレディと共にロジャーがヴォーカルをとる曲はあるが)ということだった。セカンド・アルバム以降はアルバム内にはブライアンとロジャーがヴォーカルをとる曲がそれぞれ1、2曲は収録されているというパターンがずっと続いてきたこともあり、何だか楽しみの一つが消えた感じで、当時はどうしてなんだろう?という思いがあった。(ちなみにコレ以降のアルバムでもブライアンとロジャーがフルでヴォーカルをとる曲は含まれなくなった)
そういえば、ジャケットに描かれているメンバーの色ついて、「フレディの赤は分かるとしても、ブライアンは黄色じゃないよな、黄色はロジャーで、ブライアンは青、そしてジョンが緑」なんてことを当時は思ったりもしていたなぁ。
ちなみに、"Under Pressure"(英1位 / 米29位)は、先にシングルとしてリリースされ、直前にリリースされた"Greatest Hits"の日本盤にも収録されていた(現在は"Greatest Hits II"の方に収録されている)。
シングルについて言えば、その後、アルバムに先駆け、先行シングルとしてリリースされた"Body Language"(英25位 / 米11位)をはじめ、"Las Palabras De Amor (The Words of Love)"(英17位)、"Calling All Girls"(米60位)、"Back Chat"(英40位)といった曲がシングルカットされている(日本では次のシングルを読者投票で選ぼうという音楽雑誌(ミュージック・ライフ)とレコード会社の共同企画により"Staying Power"が選ばれ、独自にシングルカットされている)。なお、アルバムは(英4位 / 米22位 / 日6位)を記録。
TRACKLIST
1. Staying Power / ステイング・パワー (Writer: F. Mercury)
2. Dancer / ダンサー (Writer: B. May)
3. Back Chat / バック・チャット (Writer: J. Deacon)
4. Body Language / ボディー・ランゲージ (Writer: F. Mercury)
5. Action This Day / アクション・ジス・デイ (Writer: R. Taylor)
6. Put Out The Fire / プット・アウト・ザ・ファイア (Writer: B. May)
7. Life Is Real (Song for Lennon) / ライフ・イズ・リアル (レノンに捧ぐ) (Writer: F.Mercury)
8. Calling All Girls / コーリング・オール・ガールズ (Writer: R. Taylor)
9. Las Palabras De Amor / ラス・パラブラス・デ・アモール (愛の言葉) (Writer: B. May)
10. Cool Cat / クール・キャット (Writers: J. Deacon & F. Mercury)
11. Under Pressure「アンダー・プレッシャー (Writers: Queen & David Bowie
NOTES
• 日本盤初回プレスCD(初CD化盤) [Japanese First Pressing CD]
• 解説・歌詞・対訳付
■ 追記
こちらは、40周年を記念して2011年にリリースされた2枚組の"40th Anniversary Limited Edition" (2011 Digital Remaster)。
TRACKLIST
Disc 1: Hot Space
Disc 2: Hot Space - Bonus EP
1. Staying Power [Live At Milton Keynes Bowl, June 1982]
2. Soul Brother [B-Side]
3. Back Chat [Single Remix]
4. Action This Day [Live In Tokyo, November 1982]
5. Calling All Girls [Live In Tokyo, November 1982]
※ "Bonus EP"の2曲目に収録されている"Soul Brother [B-Side]"は"Under Pressure"のシングルのB面に収録されていたアルバム未収録曲。この曲は、歌詞の中に様々なクイーンの曲のタイトル及び、タイトルに含まれる単語が出てくるのが面白いところ。
▼ Queen - Las Palabras De Amor (Top Of The Pops, 1982)
https://www.youtube.com/watch?v=qaeKSQUdBE4
▼ Brian May and John Deacon (QUEEN) Interview in Japan
https://www.youtube.com/watch?v=z_mPJ2wVa0A
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▶ Queen On Fire - Live At The Bowl (2004) / Queen
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