マイケル・シェンカー・グループのスタジオアルバムとしては4作目に当たる「Built To Destroy / 限りなき戦い」は、オリジナルの"UK Mix"と、その後直ぐに差し替えてリリースされた"US Mix"の2種類が存在するのだが、2014年にリリースされたこの再発盤(2009年デジタル・リマスター)は"UK Mix"と"US Mix"の両方が全曲収録されている。
この2つのヴァージョンは、ミックス違いとはいえ、"US Mix"の方では新たに"Derek St. Holmes"がメンバーに加わってヴォーカルをとっている曲があり、その他にも新たにレコーディングされたパートがあったりと、曲によってはかなりの違いが感じられるので、これ1枚で全曲を聴き比べることができるのがこの再発盤の良いところ。
で、この"Built To Destroy"については、前作のグラハム・ボネットに代わり、再びゲイリー・バーデンがヴォーカルに復帰して制作されたアルバムだったわけだが、歌唱力に長けたグラハム・ボネットに代わり、再びゲイリー・バーデンが復帰することに対して疑問を呈する声も少なからずあったように思う。ただ、自分自身はゲイリー・バーデンの声質の方がマイケル・シェンカーのギターと音楽性には合っていると感じていたので、このゲイリー・バーデンの復帰を歓迎していたのだった。それに巷で言われるほどゲイリー・バーデンの歌唱力に難があるとは思っていなかったしね。
アルバム自体は収録された楽曲の充実度も高く、自分自身はセカンド・アルバムの「MSG / 神話」と並んで好きなアルバムなのだが、オープニングの「Rock My Nights Away / ロック・マイ・ナイツ・アウェイ」(キーボードのアンディ・ナイ作)が若干シンセポップのような雰囲気もあった所為か、当時は批判的な意見もあったように思う。それでも自分自身はオープニングに相応しい良い曲だと思っていたし、このキーボードの音色も曲の雰囲気に合っていて良いと感じていた。というか、むしろ、エレクトリック・ピアノっぽい音に変更された"US Mix"の方が違和感があった。
実を言うと、この"Rock My Nights Away"のキーボードの音色が"US Mix"に馴染めなかったひとつの要因でもあった。まぁ、日本盤の"US Mix"では、その"Rock My Nights Away"がアルバムの1曲目ということもあって、出だしから印象が良くなかったことから、全体の印象もそのイメージを引きずったようなところもあったように思う。
ただ、ラストの「Rock Will Never Die (Walk The Stage) / ロック・ウィル・ネヴァー・ダイ」だけは、"US Mix"の方が好きで、カセットテープには"UK Mix"の最後だけ"US Mix"の"Rock Will Never Die (Walk The Stage)"に入れ変えて聴いていたことを覚えている。
1. Rock My Nights Away 2. I'm Gonna Make You Mine 3. The Dogs Of War 4. Systems Failing 5. Captain Nemo 6. Still Love That Little Devil 7. Red Sky 8. Time Waits (For No One) 9. Walk The Stage
US Mix
1. I'm Gonna Make You Mine 2. Time Waits (For No One) 3. Systems Failing 4. Rock Will Never Die (Walk The Stage) 5. Red Sky 6. Rock My Nights Away 7. Captain Nemo 8. The Dogs Of War 9. Still Love That Little Devil
US Mix (日本盤)
1. Rock My Nights Away 2. I'm Gonna Make You Mine 3. The Dogs Of War 4. Systems Failing 5. Captain Nemo 6. Still Love That Little Devil 7. Red Sky 8. Time Waits (For No One) 9. Rock Will Never Die (Walk The Stage)
The Michael Schenker Group (Band Members) • Michael Schenker (マイケル・シェンカー) - Guitars • Gary Barden (ゲイリー・バーデン) - Vocals • Chris Glen (クリス・グレン) - Bass • Ted McKenna (テッド・マッケンナ) - Drums • Andy Nye (アンディ・ナイ) - Keyboards
(US Mix and Touring Personnel)
• Derek St. Holmes (デレク・セント・ホルムズ) - Vocals, Rhythm Guitar (Lead Vocals on the "US Mix Version" of "Still Love That Little Devil")
TRACKLIST Original UK Mix: 1. Rock My Nights Away / 2. I'm Gonna Make You Mine / 3. The Dogs Of War / 4. Systems Failing / 5. Captain Nemo / 6. Still Love That Little Devil / 7. Red Sky / 8. Time Waits (For No One) / 9. Rock Will Never Die (Walk The Stage) / US Mix (Bonus Tracks): 10. I'm Gonna Make You Mine / 11. Time Waits (For No One) / 12. Systems Failing / 13. Rock Will Never Die (Walk The Stage) / 14. Red Sky / 15. Rock My Nights Away / 16. Captain Nemo / 17. The Dogs Of War / 18. Still Love That Little Devil
しかも、またひとつ名曲が生まれたと感じさせられるような「One Day / ワン・デイ」をはじめ、新曲のどれもがこれまた素晴らしいのだ。
例えば、ジャジーで落ち着いた雰囲気の「With Love (Remember) / ウィズ・ラヴ(リメンバー)」と、ブルージーなインストゥルメンタル曲の「Blues for Narada / ブルーズ・フォー・ナラダ」は、共に7分を超える曲だが、どちらもスタンダードナンバーと言われても納得しそうなほど普遍的な魅力に溢れた渋い曲。勿論、両曲共ゲイリー・ムーアのオリジナル曲なんだけどね。時々、こういったブルージーな曲を聴きたくなることってあるんだよね。
自分自身は、ハードロック時代の"Run for Cover"(LPレコード)が、始めて買ったゲイリー・ムーアのアルバムで、当時はそのロックな部分に惹かれていたわけだが、今では、そんな自分も、ゲイリー・ムーアといえばブルースといったイメージの方が強くなっている。2011年に58歳という若さで亡くなられことが残念でならないが、仮に健在だったとしても、恐らくはブルース路線を貫き通していたんだろうなとは思うところ。
なお、アルバムには表記されていないが、「Still Got the Blues / スティル・ゴット・ザ・ブルーズ」と「Falling in Love with You / フォーリング・イン・ラヴ・ウィズ・ユー」の2曲はシングルヴァージョンで収録。そして、「Empty Rooms / エンプティ・ルーム」は、1985年リリースのアルバム「Run for Cover / ラン・フォー・カヴァー」に収録されていた再録音ヴァージョンの方が収録されている。又、「Parisienne Walkways / パリの散歩道」はライヴ・アルバム"Blues Alive"に収録されているヴァージョンでも収録となっている。
ちなみに、「Crying in the Shadows / クライング・イン・ザ・シャドウズ」は、ゲイリー・ムーアが本田美奈子さんに提供した曲「the Cross -愛の十字架-」のセルフカヴァー。
▼ Minako Honda 本田美奈子 - The Cross (with Brian May 1986)
TRACKLIST 1. Always Gonna Love You / 2. Still Got The Blues / 3. Empty Rooms / 4. Parisienne Walkways (Live) / 5. One Day / 6. Separate Ways / 7. Story Of The Blues / 8. Crying In The Shadows / 9. With Love (Remember) / 10. Midnight Blues / 11. Falling In Love With You / 12. Jumpin' At Shadows / 13. Blues For Narada / 14. Johnny Boy
この「Contagious / コンテイジャス」はゲフィンに移籍してリリースされた"Y&T"通算7作目("Yesterday and Today"時代の2作を除く / ライヴアルバムの"Open Fire"を含む)となるスタジオアルバム。
前作の「Down for the Count / ダウン・フォー・ザ・カウント」では"All American Boy"、"Anytime At All"、"Summertime Girls"といったいかにもアメリカンロックといった感じの野外ライヴが似合いそうなポップで乾いた印象のある曲が収録されていたのだが、このアルバムではそういったタイプの曲は影を潜め、前作に比べると若干ポップ色が抑えられたような印象がある。又、サウンドプロダクションも前作以上にゴージャスで、サウンドアプローチに多少軌道修正が図らているようにも感じる。
個人的にはタイトルトラックの「Contagious / コンテイジャス」や、「Temptation / テンプテイション」、「Fight for Your Life / ファイト・フォー・ユア・ライフ」、「Armed and Dangerous / アームド・アンド・デンジャラス」、そして、ゲイリー・ムーアを彷彿させるようなインストゥルメンタル曲「I'll Cry for You / アイル・クライ・フォー・ユー」といった曲が好きなのだが、アルバムとしては、相変わらずというか、これも"Y&T"の特徴のひとつというべきなのか、聴く曲と聴かない曲が極端に分かれてしまっている。
まぁ、それでも、LPレコードで買った前作の「Down for the Count / ダウン・フォー・ザ・カウント」(1985年)や、前々作の「In Rock We Trust / イン・ロック・ウィ・トラスト」(1984年) よりは良く聴いていたように思うし、初めてCDで買った"Y&T"のアルバムだったということで、それなりに思い出に残っているアルバムのひとつではある。
Y&T - BAND MEMBERS (Listed in Booklet) • Joey Alves (ジョーイ・アルヴィス) - Acoustic and Electric Guitar • Dave Meniketti (デイヴ・メニケッティ) - Lead Vocals and Lead Guitar • Phil Kennemore (フィル・ケネモア) - Bass Guitar • Jimmy DeGrasso (ジミー・デグラッソ) - Drums
TRACKLIST 1. Contagious / 2. L.A. Rocks / 3. Temptation / 4. Kid Goes Crazy / 5. Fight For Your Life / 6. Armed And Dangerous / 7. Rhythm Or Not / 8. Bodily Harm / 9. Eyes Of A Stranger / 10. I'll Cry For You
1. 「Earthshaker / アースシェイカー」(1981年) 2. 「Black Tiger / ブラック・タイガー」(1982年) 3. 「Mean Streak / ミーン・ストリーク」(1983年) 4. 「In Rock We Trust / イン・ロック・ウィ・トラスト」(1984年) 5. 「Open Fire / オープン・ファイアー」(1985年)※ライヴアルバム 6. 「Down for the Count / ダウン・フォー・ザ・カウント」(1985年) 7. 「Live on the Friday Rock Show / ライヴ・オン・ザ・フライデイ・ロック・ショウ」(2000年)※ライヴアルバム
この"Y&T"、自分自身は、このボックスセットに収録されているファースト・アルバムの"Earthshaker"から6作目の"Down for the Count"まで全てのアルバムをLPレコードで持っていたというくらい好きなバンドだったのだが、これらのアルバムをCDとしては持っていなくて、"Down for the Count"から15年を経た2000年に突如リリースされたBBC音源のライヴ・アルバム"Live on the Friday Rock Show"もこれまで聴いたことがなかったこともあり、このボックスセットのリリースは、これらのアルバムをまとめて聴ける丁度いい機会だった。
ただ、このボックスセット、表記等には細かなミスがいくつかあるのだ。例えば、上の写真にあるように、ジャケットに記載されているアルバム名に"Open Fire"の表記が抜けている。又、CDケースの裏ジャケットにある曲目とブックレット裏側に記載された曲目の表記では、共にアルバム"Mean Streak"の最後の曲がアルバム"In Rock We Trust"の1曲目である"Rock & Roll's Gonna Save The World"になっていたり、全曲が"Disc 1"に収録されている"Black Tiger"のアルバムタイトルが"Disc 2"のCDラベルにも記載してあったりする。
他にも、本来ならライヴ・アルバム"Open Fire"に新曲として収録されていた"Summertime Girls"に"Studio Version"の表記がされるべきところが、次作のスタジオアルバム"Down for the Court"に収録されている"Summertime Girls"の方に"Studio Version"の表記がされていたりとミスも見受けられる。
一応、"Y&T"の歴史を簡単に記しておくと、1974年に"Yesterday and Today"というバンド名で活動をスタートさせた後は、76年にファースト・アルバム"Yesterday and Today"、78年にはセカンド・アルバムの"Struck Down"をリリースするも、商業的にはパッとせず、その後はアルバムをリリースすることも無く、バンドが存続しているのかどうかもあやふやな状況が続いていた。
6作目の"Down for the Count"は、前作のスタジオアルバム"In Rock We Trust"が過去最高のチャートポジションを記録したことから、アメリカンロック色を更に推し進めたアルバムとなったようで、これまでのアルバムに比べるとポップな曲が多く、当時はそれに違和感もあって、聴く機会も少なかったアルバムだった。
そして、2000年にリリースされたライヴ・アルバム"Live on the Friday Rock Show"。冒頭でも述べたように、自分の場合は、このボックスセットを買って初めて聴いたアルバムでもあったわけだが、レディング・フェスティバルとモンスターズ・オブ・ロックからそれぞれ6曲ずつと曲数が少ないので、あの曲が無いとか思うところはあるものの、それぞれのオープニング曲が"Hungry For Rock (Reading Festival-1982)"と"Mean Streak (Monsters of Rock Festival-1984)"というだけで十分といったところ。それに、なんたって全盛期ともいえる1982年と1984年のライヴだからね。しかも、レディング・フェスティバルとモンスターズ・オブ・ロックでのライヴなので、文句などあろうものか(笑)。
Y&T - BAND MEMBERS • Dave Meniketti (デイヴ・メニケッティ) - Lead Guitar, Lead Vocals • Phil Kennemore (フィル・ケネモア) - Bass Guitar, Backing Vocals (Lead Vocals on "Squeeze") • Leonard Haze (レオナード・ヘイズ) - Drums, Percussion, Backing Vocals • Joey Alves (ジョーイ・アルヴィス) - Rhythm Guitar, Backing Vocals
TRACKLIST (Contains 7 Albums on 4 Discs)
[Disc 1] EARTHSHAKER (1981): 1. Hungry For Rock / 2. Dirty Girl / 3. Shake It Loose / 4. Squeeze / 5. Rescue Me / 6. Young And Tough / 7. Hurricane / 8. Let Me Go / 9. Knock You Out / 10. I Believe In You / BLACK TIGER (1982): 11. From The Moon / 12. Open Fire / 13. Don't Wanna Lose / 14. Hell Or High Water / 15. Forever / 16. Black Tiger / 17. Barroom Boogie / 18. My Way Or The Highway / 19. Winds Of Change
[Disc 2] MEAN STREAK (1983): 1. Mean Streak / 2. Straight Thru The Heart / 3. Lonely Side Of Town / 4. Midnight In Tokyo / 5. Breaking Away / 6. Hang 'Em High / 7. Take You To The Limit / 8. Sentimental Fool / 9. Down And Dirty / IN ROCK WE TRUST (1984): 10. Rock & Roll's Gonna Save The World / 11. Life, Life, Life / 12. Masters And Slaves / 13. I'll Keep On Believin' (Do You Know) / 14. Break Out Tonight! / 15. Lipstick And Leather / 16. Don't Stop Runnin' / 17. (Your Love Is) Drivin' Me Crazy
[Disc 3] IN ROCK WE TRUST (1984): 1. She's A Liar / 2. This Time / OPEN FIRE (1985): 3. Open Fire [Live] / 4. Go For The Throat [Live] / 5. 25 Hours A Day [Live] / 6. Rescue Me [Live] / 7. Summertime Girls [Studio Version] / 8. Forever [Live] / 9. Barroom Boogie [Live] / 10. I Believe In You [Live] / DOWN FOR THE COURT (1985): 11. In The Name Of Rock / 12. All American Boy / 13. Anytime At All / 14. Anything For Money / 15. Face Like An Angel
[Disc 4] DOWN FOR THE COURT (1985): 1. Summertime Girls / 2. Looks Like Trouble / 3. Your Mama Don't Dance / 4. Don't Tell Me What To Wear / 5. Hands Of Time / LIVE ON THE FRIDAY ROCK SHOW (2000): 6. Hungry For Rock [Live] / 7. Black Tiger [Live] / 8. I Believe In You [Live] / 9. Open Fire [Live] / 10. Forever [Live] / 11. Rescue Me [Live] / 12. Mean Streak [Live] / 13. Barroom Boogie [Live] / 14. Lipstick And Leather [Live] / 15. Rescue Me [Live] / 16. Rock & Roll's Gonna Save The World [Live] / 17. Masters And Slaves [Live]
NOTES
• This 4 CD BOX SET features 68 songs from 7 albums (5 Studio Albums + 2 Live Albums) which are "EARTHSHAKER (1981)", "BLACK TIGER (1982)", "MEAN STREAK (1983)", "IN ROCK WE TRUST (1984)", "OPEN FIRE (1985)", "DOWN FOR THE COUNT (1985)", and "LIVE ON THE FRIDAY ROCK SHOW (2000)".
• CD 4 (LIVE ON THE FRIDAY ROCK SHOW) Tracks 6-11: Live At The Reading Rock Festival 29/8/1982 • CD 4 (LIVE ON THE FRIDAY ROCK SHOW) Tracks 12-17: Live At The Donington Monsters of Rock Festival 14/9/1984
• 15ページのオールカラーブックレット付き • Label: Universal (UMC) • Made in the EU
▼ Y&T - Rescue Me (Live At San Francisco Civic Auditorium 1985)
▼ Y&T - Forever (Live At San Francisco Civic Auditorium 1985)
▼ Y&T - Don't Stop Running (Music Video)
▼ Y&T - Midnight In Tokyo (Live At BYH Festival 2006)