2010/10/13

THE WORKS 「ザ・ワークス」 / QUEEN (1984)

Album Cover (front): The Works / Queen個人的なことをいえば、シンセサイザーを大胆に取り入れた"The Game"以降の作品の中で、最も多く聴いたアルバムではないかと思えるのが、この「The Works / ザ・ワークス」。"The Game"や"Hot Space"ではシンセ音だけが浮いているような違和感を多少感じていたが、ここではそのシンセサウンドもしっくりとクイーンサウンドに馴染んでいる感じがあり、このアルバムで後期のクイーンサウンドが確立されたと言ってもいいのではないかと思っている。

ただ、そういったモダンなサウンド処理がなされていながらも、収録されている楽曲の構成、それにコーラスワークやギターオーケストレーションを含めたアレンジなどは、かつてのドラマティックなクイーンサウンドが帰ってきた感じもあり、その辺りの温故知新的バランスがこのアルバムの魅力でもある。今から考えると、ベクトルがややアメリカ向きだった"The Game"や"Hot Space"に対し、この"The Works"は再びブリティッシュサウンドへと軌道修正が図られている感じがして嬉しかったというのも、このアルバムを良く聴いていた理由の一つとしてあったのかも知れない。

このアルバムを初めて聴いた当時は、1曲目の"Radio Ga Ga"を聴いて、曲自体は悪くはないものの、そのモダンなサウンド処理に、いったいどんなアルバムになっているのかと一抹の不安も無きにしも非ずといったところだったが、2曲目の"Tear It Up"後半のいかにもクイーンといった美しいハーモニー「ウーウーウー、オーイエー」に多少安心して胸を撫で下ろし、続く3曲目の"Its A Hard Life"では、一部"Play the Game"と似たような歌いまわしが気にはなったものの、中間部のギターオーケストレーションを聴いて喜ぶ。といった感じだった、まぁ、そんな1曲ごとの心境の推移を覚えているのだから、相当期待して注意深く聴いていたんだろうね。もしかしたら、正座して聴いてたんじゃないかとさえ思ってしまうほど(笑)。それと、モダンなサウンド処理がされている"Radio Ga Ga"にもピアノの音がポツンポツンと入っていたことがなんだか妙に嬉しかったことも覚えている。

 

Album Cover (back): The Works / Queenこの時期は一部に解散説もあったほどメンバー間の関係もあまり良い状態ではなかったようだが、メンバー4人がそれぞれ持ち寄った楽曲はどれもが魅力的でクオリティーの高いものであることを考えると、逆にそのことがソングライターでもある4人に緊張感(競い合い?)をもたらし、結果的にクオリティーの高い楽曲が集まったのではないかという見方もできるのではないかと思う。

ただ、作曲者クレジットに複数の名前が明記されることが少ないクイーンにおいて、"Mercury & May"、"May & Tayler"という異色の組み合わせによる楽曲(意外とこの組み合わせの共作曲って無いのだ)が収録されていたり、制作されたミュージックビデオへの力の入れようや、アルバム内では個々の個性がバランス良く生かされている辺りを考えると、巷で言われているほど関係は悪くはなかったのではないかという気もする。

何れにせよ、決定的な確執や亀裂が生じたわけではないのはこの後の活動により証明されるわけだが、取り分け本国のイギリスに於いては、このアルバムが前作を大きく上回るセールスを記録したことも良い方向に流れが向く結果になったのかもしれない。アルバムは英2位、米23位を記録し、特にイギリスでは"A Night At The Opera"の50週を上回る93週もの間チャートインしていたというロングヒットをも記録している。ちなみに日本のオリコンチャートでは7位を記録。

意図的か偶然かは分からないが、シングルカットされた4曲のソングライターを見てみると、 "Radio Ga Ga"(英2位 / 米16位)がロジャー・テイラー、"I Want to Break Free"(英3位 / 米45位)がジョン・ディーコン、"It's a Hard Life"(英6位 / 米72位)がフレディ・マーキュリー、"Hammer to Fall"(英13位)がブライアン・メイと、均等に分かれているのは興味深いところではある。

なお、"Radio Ga Ga"はリミックスされたロング・ヴァージョンが12-inchシングルとして発売され、B面にはそのインストゥルメンタル・ヴァージョンと、「もうクイーンなんて見たくない」という面白いフレーズも飛び出す、アルバム未収録の"I Go Crazy"が収められている。又、"I Want to Break Free"と"Hammer to Fall"は、シングルや"Greatest Hits II"に収められたシングル・ヴァージョンとは違うオリジナル・ヴァージョンが収録されており、"I Want to Break Free"については、シングル・ヴァージョンに比べるとかなりシンプルで、"Hammer to Fall"の方は、間奏のギターソロとエンディングが若干違うヴァージョンになっている。

ということで、以下の写真はアルバムとは別ヴァージョンということで当時購入した、"Radio Ga Ga"の12-inchシングル盤と、"I Want to Break Free"の7-inchシングル盤。

Japanese 12 Inch Vinyl Single Record: Radio Ga Ga / Queen  Japanese 7 Inch Vinyl Single Record: I Want to Break Free / Queen

そして、"Radio Ga Ga"といえば、この曲のミュージック・ビデオには、1927年公開のサイレント映画「メトロポリス」からの映像が使用されていることでも話題になったのだが、実はジョルジオ・モロダーのプロデュースによるこの映画の再編集版が世界各地で公開され、そのサウンドトラック盤にはフレディ・マーキュリーのソロ作品"Love Kills"(邦題はメトロポリス)が収録された経緯もあってか、映像使用に関してはモロダー側から簡単に「使っていいよ」との返事がもらえたらしい。

当時は、この"Love Kills"1曲のために映画のサウンドトラック盤を買おうという気にはなれず、シングル盤だけを購入したんだよね。ちなみに、邦題は映画のタイトルと同じ「メトロポリス」。なお、このシングル盤、通常のシングル盤とは違って、三方背の袋形式ジャケットになっているので、下の写真のようにジャケットには表と裏がある。

Japanese 7 Inch Vinyl Single Record (front): Love Kills / Freddie Mercury  Japanese 7 Inch Vinyl Single Record (back): Love Kills / Freddie Mercury

TRACKLIST
1. Radio Ga Ga / RADIO GA GA (ラジオ) [Writer: R. Taylor]
2. Tear It Up / ティア・イット・アップ [Writer: B. May]
3. It's A Hard Life / 永遠の誓い [Writer: F. Mercury]
4. Man On The Prowl / マン・オン・ザ・プロール [Writer: F. Mercury]
5. Machines (Or Back To Humans) / マシーン・ワールド [Writers: B. May & R. Taylor]
6. I Want To Break Free / ブレイク・フリー(自由への旅立ち) [Writer: J. Deacon]
7. Keep Passing The Open Windows / 愛こそすべて [Writer: F. Mercury]
8. Hammer To Fall / ハマー・トゥ・フォール [Writer: B. May]
9. Is This The World We Created....? / 悲しい世界 [Writers: F. Mercury & B. May]

 


 

■ 追記
こちらは、40周年を記念して2011年にリリースされた2枚組の"40th Anniversary Limited Edition" (2011 Digital Remaster)。

The Works (Queen 40th Anniversary Limited Edition) / Queen  The Works (Queen 40th Anniversary Limited Edition) / Queen  The Works (Queen 40th Anniversary Limited Edition) / Queen

TRACKLIST
Disc 1: The Works

Disc 2: The Works - Bonus EP
1. I Go Crazy [B-Side]
2. I Want To Break Free [Single Remix]
3. Hammer To Fall [Headbanger's Mix]
4. Is This The World We Created...? [Live In Rio, January 1985]
5. It's A Hard Life [Live In Rio, January 1985]
6. Thank God It's Christmas [Non-Album Single]

"Bonus EP"については、12インチ・シングルとしてリリースされた"Radio Ga Ga"のリミックスされたロング・ヴァージョンと、そのB面に収録されていたインストゥルメンタル・ヴァージョンが収録されていないのが多少残念に思うところではある。

The Works (Queen 40th Anniversary Limited Edition) / Queen  The Works (Queen 40th Anniversary Limited Edition) / Queen  The Works (Queen 40th Anniversary Limited Edition) / Queen

 

▼ Queen - It's A Hard Life (Official Video)

https://www.youtube.com/watch?v=uHP-qgzUVLM

 

▼ Queen - Hammer To Fall (Official Video)

https://www.youtube.com/watch?v=JU5LMG3WFBw

 

▼ Queen - Making of Radio Ga Ga

https://www.youtube.com/watch?v=EmzS5CsHXX4

 

▼ Japan TV (Roger Taylor & John Deacon)

https://www.youtube.com/watch?v=Kx01Z-zikio

 

 

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