ついにというか、来るべき時が来たというか、'96年に再びメイクを施したオリジナルメンバーでファンの前に帰ってきた"KISS"。勿論、"KISS"はデビューから一度も解散することなく、何度かのメンバーチェンジはありながらも、ずっと活動を続けていたわけだが、'83年にリリースされた"Lick It Up"で初めて素顔を公表してからは、メイクを封印して素顔でバンド活動を行っていた。
最大の売りとも言えるメイク無しで活動することについては疑問視するというか、バンドの存続さえ危ぶむ声も一部にはあったようだが、そんな否定的な声をよそに、その後にリリースされたアルバムも常にチャートの上位にランクするといったように、ノーメイク時代も安定した人気を誇っていた。更にはメイク時代と違い、それまで振るわなかったイギリスでのチャートでも上位にランクするようになっていたことから、裏を返せば、最大の特徴であるあのメイクを逆に敬遠していた人々がイギリスには意外と多かったのかもしれない。
そんなことから、メイクを取ったおかげで、純粋にサウンドを評価されるようになったとも言えるのだが、それは"KISS"が音楽的にも魅力のあるバンドであったという証でもあったのではないだろうか。まぁ、肝心の音楽がつまらなければ、これだけ長きに渡ってトップクラスのバンドとして君臨し続けることなんて不可能だろうからね。
一応、ノーメイクで活動していた時代にリリースされたアルバムのチャート記録を記しておくと。
• Lick It Up (1983) - 米 24位 / 英 7位
• Animalize (1984) - 米 19位 / 英 11位
• Asylum (1985) - 米 20位 / 英 12位
• Crazy Nights (1987) - 米 18位 / 英 4位
• Hot In The Shade (1989) - 米 29位 / 英 35位
• Revenge (1992) - 米 6位 / 英 10位
• Alive III (1993) - 米 9位 / 英 24位
そして、シングルでは、アルバム"Crazy Nights"に収録の"Crazy Crazy Nights"(英 4位)、アルバム"Hot In The Shade"収録の"Forever"(米 8位) 、アルバム"Revenge"に収録の"God Gave Rock And Roll To You II"(英 4位)、といったトップ10に入るヒット曲も生まれている。
ちなみに、この「Psycho Circus / サイコ・サーカス」はといえば(米 3位 / 英 47位)を記録している。再び'70年代のようにアメリカとイギリスではチャート成績に開きがあるが、それでもイギリスでのライヴは大成功だったようなので、以前とは捉えられ方も多少違ってきたのではないかと思う。なお、その他の国々では、オーストラリア(1位)、スウェーデン(1位)、カナダ(2位)、ノルウェー(4位)、ドイツ(5位)をそれぞれ記録している。
さて、この"Psycho Circus"、相当な意気込みを持って制作されたであろうことは想像に難くないのだが、実際、一聴すれば入念に制作されたことが分かるアルバムだと思う。特にジーンが作った"Within"(元々は"Carnival of Souls"用に書き始められた曲だったようだが)や"Journey of 1,000 Years"といった曲は、'70年代の"Love Gun"や、'80年代の"Animalize"にあった、片手間というか、惰性で作ったような印象のある曲に比べれば格段に素晴らしいし、ソングライター、ジーン・シモンズとしての面目躍如といった感じでもある。
アルバム全体を通した印象としては、タイトルトラックの"Psycho Circus"や"Raise Your Glasses"といったポールが書いた曲、それに先に述べたジーンの2曲といった具合に核となる楽曲が要所を締めている所為で、'70年代の代表作である"Destroyer"のような大作感がある。実際、ポール自身も'90年代版"Destroyer"と語ってたしね。個人的には、オープニングの"Psycho Circus"に続く2曲目の"Within"を聴いて、このアルバムがオーソドックスなハードロック一辺倒のアルバムではないことを予見すると同時に、このアルバムの多様性とクオリティーの高さを確信したようなところがあった。
欲を言えば、折角オリジナルメンバーが揃ったのだから、エースとピーターの曲が2曲ずつくらいあってもよかったのではという気もするが、それでも、アルバムには"KISS"の特徴ともいえるメンバー全員のヴォーカル曲が収録されているし、おまけに4人が交互にヴォーカルとる曲もあったりと、オリジナルラインナップならではの魅力というか魔力みたいなものはある。いや、ほんと、様々な出し物が飛び出してくるサーカスのようなアルバムだと思う。個人的にはエースのトリビュートアルバムに収録されていたエースの曲"Take Me to the City"も再録音で収録されていたら嬉しかったんだけどね。
実は意外と面白いのが収録曲の歌詞で、"KISS"というバンドと自分達自身のことを題材にして作られたものが多くを占めており、けっこう興味深い内容となっている。正直"KISS"の曲といえば、以前は歌詞なんてどうでもいいような感じで捉えていたし、歌詞に興味を持つなんてことも殆んどなかったからね。
このアルバム"Psycho Circus"がリリースされた当時は久しぶりに"KISS"のアルバムを繰り返し聴くという日々が続いたのだが、残念ながらオリジナルメンバーによる再結成を果たした後に、この4人名義で制作されたアルバムは、結局この1枚だけとなってしまった。
アメリカでは見る角度を変えると図柄が変化するという3D仕様のジャケットでリリースされていたが、日本では観音開きのジャケットを開ければ実際に飛び出たピエロが顔を出すという独自の3D仕様でリリースされた。しかも"KISS"のロゴ部分にはエンボス加工が施され、更にはジャケットの表と裏の全面を覆うカヴァーが帯の代わりに付けられていたりと、けっこう凝った作りとなっている。ただ、コレ、通常のCDプラケースより一回り大きいサイズなので、普通のCDラックでは縦幅が足りず入らないんだよね。それならばとDVDラックに入れようとしたら今度は奥行きが足らずと、収納するのにはちょっと厄介な代物ではある。
ちなみに、CDには"CD-Extra"として、"KISS"のスクリーン・セイバーが収録されている。
▼ こちらはフェアウェルツアーでのお土産に買った缶バッチ
KISS - BAND MEMBERS (Listed in Booklet)
• Ace Frehley (エース・フレーリー) - Vocals, Lead & Rhytthm Guitar
• Paul Stanley (ポール・スタンレー) - Vocals, Lead & Rhytthm Guitar
• Peter Criss (ピーター・クリス) - Vocals, Drums
• Gene Simmons (ジーン・シモンズ) - Vocals, Bass
TRACKLIST (Japanese Edition)
1. Psycho Circus / 2. Within / 3. I Pledge Allegiance To The State Of Rock & Roll / 4. Into The Void / 5. We Are One / 6. You Wanted The Best / 7. Raise Your Glasses / 8. I Finally Found My Way / 9. Dreamin' / 10. Journey Of 1,000 Years / 11. In Your Face [Japan Only Bonus Track]
1. サイコ・サーカス / 2. ウィズイン / 3. ザ・ステイト・オブ・ロックン・ロール / 4. イントゥ・ザ・ヴォイド / 5. ウィ・アー・ワン / 6. ユー・ウォンテッド・ザ・ベスト / 7. ライズ・ユアー・グラセス / 8. アイ・ファイナリー・ファウンド・マイ・ウェイ / 9. ドリーミン / 10. ジャーニー・オブ・1,000イヤーズ / 11. イン・ユア・フェイス(日本盤のみのエクストラ・トラック)
[Extra]: CD-ROM Data
Lead Vocals
• Paul Stanley (1, 3, 7, 9)
• Gene Simmons (2, 5, 10)
• Ace Frehley (4, 11)
• Peter Criss (8)
• Paul Stanley, Gene Simmons, Ace Frehley, Peter Criss (6)
NOTES
• 日本盤初回プレスCD(初回限定スペシャル・パッケージ) [Japanese First Pressing CD / Limited Edition]
• 解説・歌詞・対訳付
▼ KISS - Psycho Circus (Music Video)
▼ KISS - Within
▼ KISS - Journey Of 1,000 Years
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