2013/07/09

ASTRA 「アストラ」 / ASIA (1985)

Album Cover (front and back): Astra / Asiaこの「Astra / アストラ」は、前作の「Alpha / アルファ」から2年の歳月を経てリリースされたエイジアの3rdアルバム。ただ、"Alpha"リリース後にヴォーカルとベースのジョン・ウェットンが脱退、そして復帰。しかし、今度はギタリストのスティーヴ・ハウが脱退、そして、新メンバーのギタリスト、マンディ・メイヤーの加入といった具合に、グループ内のゴタゴタが続き、バンドとしては決して良好と言えるような状態ではなかったようだ。それでも、そんな状況を経て制作されたことを感じさせないくらいにアルバムの完成度は高く素晴らしい出来なのだ。

ただ、当時は、前作の"Alpha"に比べると、聴く機会は少なく、実のところ、この"Astra"のアルバムとしての魅力に気付いたのは比較的最近で、それは、2008年の復活第一弾アルバムの"Phoenix"購入後に過去のアルバムを併せて聴く機会が増えるようになってからのことだった。当時はアルバムを買ったものの、頻繁に聴いていたのは2曲目の"Voice Of America"と4曲目の"Wishing"だけだったように思う。

マンディ・メイヤーのギターサウンドが前任のスティーヴ・ハウに比べてソリッドでハードロック寄りということもあってか、前2作よりも何処となく新鮮な印象があるのだが、もしかしたら、当時はその部分が今一つ惹きつけられなかった理由のひとつでもあったのかもしれない。

残念ながら、セールスの面では前2作よりも低調で、当時は「あれだけの作品で売れなければどうしろというんだ」といったジョン・ウェットンの嘆き節も聞かれたほどだった。

今にして思えば、これだけのクオリティーを持ったアルバムが評価されなかったことがとても残念だし、そういった意味では、当時の自分も、いったい何を聴いていたんだという思いにも駆られる。

シングルカットもされたオープニングの"Go"はアルバム全体のドラマティックでスリリングな展開がこの1曲に凝縮されたような曲で、当時はどうしてそれほど好きではなかったのか自分でも不思議に思うくらいに今では好きな曲となっている。

 

▼ Asia - Go

 

続く"Voice Of America"は当時から好きだった曲で、前作"Alpha"の2曲目に収録されていた"The Smile Has Left Your Eyes"と同タイプのバラード曲といった感じだが、こちらも負けず劣らずの出来。当時は次作のコンピレーション・アルバム"Then & Now"に唯一選ばれた"Astra"からの曲だったこともあり、てっきりシングルカットされてヒットしたのだと思い込んでいた。

4曲目の"Wishing"も当時から変わらず好きな曲で、"E.L.O."の"Confusion"や、"ABBA"の"Knowing Me, Knowing You"などと同様に、こういったメロディックなミドルテンポの曲は個人的に大好きなんだよね。何処となくアジアンティックな印象のある曲だが、キーボードの音とギターの音がメロディーとマッチしていてとても心地良く、後半のコーラス・ハーモニーも印象的で気に入っている。

 

▼ Asia - Wishing

 

レコードではA面とB面のラストを締めくくる5曲目の"Rock and Roll Dream"と、10曲目の"After The War"は共に静と動の対比が見られる大作感のある曲で、"Rock and Roll Dream"では"E.L.O."でお馴染みのルイス・クラークがアレンジャーを務めるロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラが共演しており、シンフォニックなサウンドが曲に彩と躍動感を与えている印象。又、"After The War"は曲の構成と展開がスリリングで、ついつい引き込まれるような魅力を持ったアルバムのラストに相応しい曲。"Go"同様に、この曲も、どうして当時はそれほど好きではなかったのか不思議でならない。

 

▼ Asia - After the War

 

それ以外の曲も、それぞれに存在意義があることを感じさせられる出来で、どの曲も一本調子ではなく、メリハリがあり、聴き手を飽きさせないスケール感溢れる作りになっていると思う。ちなみに、個人的には、9曲目の"Suspicion"が何処となくアルバムのアートワークに一番近い印象がある。とにかく、全編を通して編曲とアレンジも相当練られて制作されたことがうかがい知れるアルバムでもある。

 

▼ LPレコードの帯

LPレコードの帯:アストラ / エイジア

 

▼ レコード盤のラベル

レコード盤のラベル:Astra / Asia   レコード盤のラベル:Astra / Asia

 

▼ おまけのステッカーセット(6種類)

ステッカーセット(6種類):Astra / Asia   ステッカーセット + ジャケット + 歌詞カード:Astra / Asia

 

それにしても、今聴いても色褪せることのないクオリティーを持ったアルバムだなぁ。冒頭で述べたことの繰り返しになるが、ほんと、どうして当時は乏しいセールで終わったのかが不思議であると同時に、何故に自分もこのアルバムの魅力に気付けなかったのだろうという思いがある。

そして、自分自身は、アルバムをひとつの作品として捉えるのであえば、もしかしたらエイジアのアルバムの中では、この"Astra"こそが最もまとまりのあるアルバムなのかもしれないと近年思うようになった。できることならジョン・ウェットンに伝えたい。決してあなたは間違っていなかったと。

ちなみに、当初予定されていたタイトルは"Arcadia"で、当時は音楽雑誌でもニューアルバムのタイトルとしてこの名前が挙がっていたことを覚えているが、リリース前にデュラン・デュランのメンバー3人で結成された同名のグループがデビューすることが発表されたため、タイトルが"Astra"に変更されたという経緯があるようだ。

アルバムは、米(67位)、英(68位)。そして、シングルカットされた"Go"は、米(46位)を記録している。

 

TRACKLIST (LPレコード)
Side One: 1. Go / 2. Voice Of America / 3. Hard On Me / 4. Wishing / 5. Rock And Roll Dream
Side Two: 1. Countdown To Zero / 2. Love Now Til Eternity / 3. Too Late / 4. Suspicion / 5. After The War

NOTES
• Rock and Roll Dream: features the Royal Philharmonic Orchestra with Louis Clark

ASIA - BAND MEMBERS
• Geoff Downes - Keyboards
• Mandy Meyer - Guitar
• Carl Palmer - Drums
• John Wetton - Vocals and Bass Guitars

 

 

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R.I.P. John Wetton / ASIA Official Website (2017)

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エイジア結成以前にジョン・ウェットンが在籍していたバンド
Night After Night 「ナイト・アフター・ナイト(ライヴ・イン・ジャパン)」 (1979) / UK

ジョン・ウェットンとジェフ・ダウンズが提供した楽曲"We Move as One"を収録
Eyes Of A Woman (1985) / Agnetha Fältskog [ex-Abba]

2013/07/06

KISS ALIVE! 「地獄の狂獣 / キッス・ライブ」 / KISS (1975)

レコードの帯:地獄の狂獣/キッス・ライブ / キッスAlbum Cover (front): KISS Alive! / KISS Album Cover (back): KISS Alive! / KISS Booklet: KISS Alive! / KISS

当時、"KISS Alive II"でライヴ・アルバムの魅力に嵌った自分が、次なるターゲットにしたのは、勿論、この"KISS Alive!"だった。ただ、この時期のキッスのアルバムといえば、2枚組の"KISS Alive II"がリリースされた後は、3枚組の"The Originals II"(日本のみのリリース)、2枚組の"Double Platinum"、そしてソロアルバム4枚といった具合でリリースされていたから、お小遣いだけでやり繰りしてレコードを買っていた少年にとっては、直ぐさま買えるという状況ではなかった。何せ、キッスの他にも好きなバンドのアルバムを買ったりしなくてはならなかったし、おまけに、この後はエアロスミスやクイーンも2枚組のライヴ・アルバムをリリースといった状況で、結局買えたのは、たしか4人のソロアルバムを買い揃えた後くらいだったように思う。

初めてレコードに針を落として聴いたときは、オープニングの"MC"が"Alive II"に比べ、やけに貧弱だなと思ったことが第一印象だったこと覚えている。又、この時は初期のアルバムではファースト・アルバムの「KISS / 地獄からの使者」しか持っていなくて、後はベスト・アルバムの"Double Platinum"に収録されていた数曲しか初期の曲を知らなかった自分には、それほど思い入れがある時期でもなかったこともあり、当初は"Alive II"ほどのインパクトは感じなかった。

ところがどっこい、繰り返し聴いていくうちに"Alive II"に負けず劣らず嵌っていったんだよね。当初からスタジオ・ヴァージョンよりも断然カッコいい"Black Diamond"は好きだったのだが、その後は、スタジオ・ヴァージョンではそれほど好きではなかった"Firehouse"もライヴ・ヴァージョンを聴いていくうちに好きになったし、ライヴならではのエッセンスが凝縮された"She"と"100,000 Years"にも次第に嵌っていったのだった。それに、スタジオ・ヴァージョンではギターソロも無くつまんないと思っていた"Rock And Roll All Nite"と、スタジオ・ヴァージョンの倍以上の長さに増幅された"Let Me Go, Rock 'N' Roll"も大のお気に入り曲となっていった。

とにかく、スタジオ・ヴァージョンよりもカッコいいアレンジの曲が多く、更には、パイロのドーンという音や破裂音、それに観客との掛け合いや手拍子といったライヴならではの音が雰囲気を盛り上げてくれんだよね。そういえば、ポールの、「ロックンロールとは何かと聞かれたらこのアルバムを渡してやるさ」みたいな発言は今でも覚えているなぁ。

Booklet: KISS Alive! / KISS   Booklet: KISS Alive! / KISS

ちなみに、キッスのオープニングの"MC"と言えば、「You Wanted The Best, You Got The Best, The Hottest Band In The World, KISS!!」が定番なのだが、この"Alive"では「The Hottest Band In The World」ではなく、「The Hottest Band In The Land」となっている。つまり、この頃は未だ世界で一番ホットなバンドではなく、全米で一番ホットなバンドと紹介されていたんだよね。

この"Alive"の日本盤2枚組LPレコードについて言えば、"Alive II"と同様に、こちらもオープニングの"MC"を含め、曲間や曲中の"MC"も全て歌詞カードに英語と共に日本語訳も記載されており、英語が分からなくても、ここではこんなことを言ってるのかと、ライヴの雰囲気を楽しめたんだよね。又、歌詞についても、ライヴ用にアレンジされた部分はきちんとライヴ・ヴァージョン通りに記載されていたので、違いについても分かり易かった。現在はライヴ・アルバムでもスタジオ・ヴァージョンの歌詞をそのまま転載しているだけという場合が多いようで、そういった意味では当時の方が良い時代だったようにも思う。

アルバムはビルボードチャートで最高9位を記録。又、前作の"Dressed to Kill"からシングルカットされたスタジオ・ヴァージョンの"Rock and Roll All Night"は最高で68位止まりだったものの、このアルバムから再度シングルカットされたライヴ・ヴァージョンでは12位を記録するヒットとなった。そして、キッスは、このアルバムのヒットを足がかりに成功への階段を駆け上っていくのだった。

 

LP + Obi: KISS Alive! / KISS   見開きジャケット内側:KISS Alive! / KISS

TRACKLIST(2枚組LPレコード)

[Disc 1]
Side A:
1. Deuce / ジュース
2. Strutter / ストラッター
3. Got To Choose / ゴット・トゥ・チューズ
4. Hotter Than Hell / ホッター・ザン・ヘル
5. Firehouse / ファイヤーハウス
Side B:
1. Nothin' To Lose / ナッシン・トゥ・ルーズ
2. C'mon And Love Me / 激しい愛を
3. Parasite / パラサイト
4. She / 彼女

[Disc 2]
Side C:
1. Watchin' You / ウォッチン・ユー
2. 100,000 Years / 10万年の彼方
3. Black Diamond / ブラック・ダイヤモンド
Side D:
1. Rock Bottom / ロック・ボトム
2. Cold Gin / コールド・ジン
3. Rock And Roll All Nite / ロックン・ロール・オール・ナイト
4. Let Me Go, Rock 'N' Roll / レット・ミー・ゴー、ロックン・ロール

 

NOTES

• Format: 12-inch Vinyl LP Record
• 解説・歌詞・対訳付(歌詞・対訳は曲中及び曲間のMCを含む)

• Album: US 9位 (Gold / 1975-RIAA) / Canada 3位 / Australia 18位 / UK 49位
• Single: Rock and Roll All Nite (Live) - US 12 位

 

KISS - BAND MEMBERS

• Paul Stanley (ポール・スタンレー) - Rhythm Guitar, Vocals
• Gene Simmons (ジーン・シモンズ) - Bass, Vocals
• Peter Criss (ピーター・クリス) - Drums, Vocals
• Ace Frehley (エース・フレーリー) - Lead Guitar, Backing Vocals

 

▼ KISS - Black Diamond (Alive!)

 

▼ KISS - Rock And Roll All Nite (Alive!)

 

 

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2013/07/03

世界を驚かせた自閉症の3歳の少女が描いた絵画

イギリスのニュースサイト「Mail Online」に掲載されていたこちらの絵は、イギリスのレスターシャー州マーケット・ハーボローに住むアイリス・グレース(Iris Grace Halmshaw)ちゃん(3歳)の作品。

実は、こちらの「Mail Online」では、6月12日にもアイリス・グレースちゃんの絵についての記事が掲載されていたので、記事として紹介されるのは今回が二度目ということになります。

 

▼ こちらが2013年6月30日付けの「Mail Online」に掲載されていた記事の見出し。

The miracle of Little Miss Masterpiece / Mail Online

 

これらの絵を描いたのが3歳の子だというだけでもびっくりなのですが、彼女が絵を描き始めたのはつい2~3カ月前からというから更に驚きです。

 

Iris's work

 

自閉症と診断されて以降、アイリスちゃんの両親は彼女が何を愛せるのかを色々と探していたそうです。そしてある日、母親が線で描いた棒人形の絵をたまたま見つけたアイリスちゃんが、それに興味を示し面白がった様子を見て彼女の母はイーゼルを買い与えてみたものの、そのときはブラシがイーゼルの下に飛び出したりしてうまく描けずに怒って泣き出したとのこと。

しかし、それはアイリスが絵を描くことを嫌ったのではなく、ブラシと絵の具をうまくコントロールできなかったことに問題があったと考えた彼女の母親は、今度はイーゼルの代わりにテーブルの上に紙を置いてみたところ、彼女はすぐにページ全体を絵の具で満たしたそうで、そのときは彼女が何をすべきかを直感的に知っているようにも見えたそうです。

 

Iris's work

 

これらの絵画だけを見て、子供が描いたと思う人はまずいないんじゃないかと思います。ましてや3歳の子が描いたなんて。

 

Iris's work

 

きっと本人にしか分からない何かしらの世界観が表現されているのでしょうね。大人がアレコレと詮索して、そこに意味を見出そうとするのは無意味なことかも知れません。

 

Iris's work

 

そして、母親のアラベラさんが彼女の絵を"Facebook"に投稿したところ、世界中から絵を買いたいという問い合わせが殺到し、ロンドンのチャリティーオークションに出品したところ、830ポンド(約12万円)という買値が付いたそうです。現在は「irisgracepainting.com」(ウェブサイトのアドレスはページ下に表示)で原画と複製画が販売されています。

当初は両親ともアイコンタクトをとらず、全く話しもしなかったそうですが、現在はアイリスちゃんの症状も改善に向かっており、今では両親と笑顔でコミュニケーションをとるようになっているそうです。

 

■ 詳しくは以下のサイトに掲載されています

▼ Mail Online / 30 June 2013 (英文)
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2352055/Iris-Halmshaw-Astonishing-talent-girl-3-paintings-stunned-art-world.html

▼ Mail Online / 12 June 2013 (英文)
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2340234/Autistic-year-old-girls-stunning-paintings-sell-800-took-brush-just-months-ago.html

 

[こちらはオフィシャルサイト]

▼ Iris Grace Painting (英文)
http://irisgracepainting.com/

 

▼ The Miracle Of Little Miss Masterpiece - AMAZING!! Iris Grace Painting

https://www.youtube.com/watch?v=N4wwCK_jeRA

 

 

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2013/06/27

MUSIC FROM THE ELDER 「エルダー」 / KISS (1981)

CDの帯:エルダー / キッスAlbum Cover (front): Music from The Elder /KISSキッス初のコンセプトアルバムとして1981年にリリースされたのがこちらの"Music from The Elder"(LPレコードでリリースされた当時の邦題は「魔界大決戦」)。当時は本国のアメリカよりも先に日本で先行発売されたアルバムでもあったわけだが、アルバム・カヴァーにメンバーの顔が無い初のレコード(ベスト・アルバムの"Double Platinum"を除く)だったこともあり、このジャケットではインパクトに欠けると日本のレコード会社が判断したのか、発売時はジャケット全面を覆うメンバーの写真を使ったカヴァーシートが帯を兼ねる形で付けられていた。なお、当時の日本盤レコードにはインストゥルメンタルの"Escape from the Island"は未収録だった。

実は、これがピーター・クリスに代わって加入したエリック・カーを含むラインナップで初めてリリースされたアルバムでもあったのだが、当時はまさかオーケストラを取り入れたこのようなサウンドが展開されようとは思ってもいないかった。

元々はジーン・シモンズが書いたストーリーを元にした映画を制作して、アルバムはそのサウンドトラックとして出す計画だったようだが、当時の音楽雑誌に載っていたジーンのインタビュー記事には、アルバムが好評なら続編もリリースする用意はあるといった発言もあったことを覚えている。又、そのジーンが、"Odyssey"は本当は自分が歌いたかったと語っていたことも印象的だった(ジーン曰く、プロデューサーに、この曲はポールの声の方が合うと言われたとのこと)。

最終的には映画化の話は消え、アルバムのセールスもビルボードチャートで過去最低の75位と振るわなかったこともあり、ジーンが述べていた続編がリリースされることもなかったのだが、実際に続編に備えた楽曲のストックはあったようで、翌年の1982年にリリースされたベスト・アルバムの"Killers"「キッス・キラーズ」(アメリカ未発売)には新曲として4曲が収録されていた。ただ、これらはけっこう良い曲なので、オリジナルのスタジオ・アルバムには未収録の曲となってしまったのは何とももったいない気はする。

2年間のライヴ活動休止を経てからは、ディスコサウンドを取り入れた「Dynasty / 地獄からの脱出」、ポップサウンドを全面に打ち出した「Unmasked / 仮面の正体」、そしてオーケストラを取り入れたコンセプトアルバムとなったこの「Music from The Elder / 魔界大決戦」と、ますますソフト化が進んできたキッス・サウンドに当時は世間の風当たりも強かった印象があるのだが、個人的にはハードロック一辺倒では無いサウンドをけっこう楽しんでいたのだった。ただ、一方では、ライヴには不向きというか、ライヴでの演奏が難しい楽曲が増えることに対しては多少複雑な思いもあったのだが。

プロデューサーは「Destroyer / 地獄の軍団」を手掛けたボブ・エズリンを再度起用し、約束の時間にスタジオに現れないエース対策なのか、レコーディングにはエースの自宅スタジオも使われているようだが、エース自身は最終的な編集作業にはあまり関わっていなかったようで、後に音楽雑誌に掲載されていたエースのインタビュー記事では、"Odyssey"について、出来上がったレコードを聴いたら、俺が弾いたギターパートがごっそりカットされていて驚いたといったようなことを語っていたのが印象的だった。

Album Cover (back): Music from The Elder / KISS  Music from The Elder / KISS  CD Case (back cover) Music from The Elder / KISS

アメリカでシングルとしてリリースされたのは"A World Without Heroes"(米56位)の1曲だけだったが、日本ではその"A World Without Heroes"はシングルとしてリリースされず、代わりにファースト・シングルが「I / エルダーの戦士」、そしてセカンド・シングルが「The Oath / 炎の誓い」と、独自のシングルカットがされていた。

そして、下の写真がその当時買った"The Oath"「炎の誓い」のシングル盤。何故、アルバムとは別にこのシングルを買っていたのかというと、冒頭でも触れたように、当時の日本盤アルバムには収録されていなかった"Escape from the Island"「激烈! 大脱走」がB面に収録されていたからなのだ。なお、この曲のソングライターは、エース・フレーリーとエリック・カー、それにプロデューサーのボブ・エズリンという異色の組み合わせ。

Japanese 7 Inch Vinyl Single Record: The Oath 「炎の誓い」 / KISS   Japanese 7 Inch Vinyl Single Record (Label): The Oath 「炎の誓い」 / KISS

当時は、ギターソロが無いのが多少残念ながらも、「I / エルダーの戦士」はきっとライヴの定番曲になるだろうと確信していたのだが、アルバムのリリース後に出演した欧米のテレビ番組等では演奏されていたものの、その後のライヴでは演奏されなかったのがちょっと不思議な気はする。ライヴ向きの曲だと思うし、盛り上がると思うんだけどね。

なお、本アルバムのリリースに伴い、コスチュームが変わり、イメージチェンジも図られている。全員の髪が短くなっており、ジーンはトレードマークとも言えるちょんまげも無くなり、ポールは紫色のバンダナを巻くようになった。又、年々重量感が増していたコスチュームは簡素化され、エースは黒のボディスーツに稲妻のデザインをあしらったシンプルなコスチュームで、エリック・カーはジッパーが多い革ジャンのスタイルとなっている。

CDの帯(裏面側):エルダー / キッス

個人的には、キッスらしくはないかもしれないが、これもまたキッスの一面だと捉えて聴けば、そう違和感もないし、世間で言われるほど悪くはないアルバムだと思う。実際、自分は、このアルバムが他のキッスのアルバムに比べて聴く頻度が少なかったということもなかったし、アルバムを買った当時も、こういった新たな一面を披露してくれることをけっこう喜んでいた。そういえば、ラブソングが1曲も含まれていない(自分の見解)のも何となくカッコイイなと思ったりもしていたなぁ。

ただ、このアルバム、当時の水準からしても音質があまり良くない印象は当初から持っていた。何となく篭った感じがあるんだよね。

リリースされた当時は、日本盤とアメリカ盤では収録曲の曲順が大きく異なっていたのだが、アルバムがCD化された際は、日本盤もアメリカ盤に沿ったかたちでリリースされていたので、その当時買ったこのCDには多少違和感を感じた。やっぱり"Fanfare"「ファンファーレ」から始まる起承転結のストーリーに沿った日本盤の方がしっくりくるというか、それが正しい姿だと思う。

なお、ひとつのストーリーに沿ったコンセプト・アルバムということもあってか、多くの曲で前後の曲間が繋がっているのだが、日本盤とアメリカ盤では曲順が違うということもあり、この曲間部分の繋がり方も当然ながら微妙な違いがある。

ちなみに、日本盤とアメリカ盤共にアルバムの最後に収録されている「I / エルダーの戦士」のエンディング部分には映画の1シーンを思わせるような台詞と効果音がエピローグのようなかたちで収録されている。

ということで、以前からコンセプト・アルバムを作りたかったと語るジーンの意向が大きく反映されたこの"Music from The Elder"は、そのジーンにとっては意欲的な作品であり自信作でもあったようだが、残念ながらセールスには結びつかなかったこともあり、今では過渡期の異色の作品として捉えられているような印象がある。ただ、今思えば、きっとこの時期にしか出来なかったチャレンジだったようにも思うし、そういった意味ではこうした作品を形として残してくれたことに感謝したいと思う。これもまた、紛れもなく「KISStory」のひとつなのだから。

 

最後に、DVDの「Kissology / 地獄大全」に収められているジーンとポールのやりとりを

ポール:
レコード会社に曲を聴かせた時、彼らは黙っていたよ。勿論、曲の内容が素晴らしいあまり黙ってしまった訳ではない。

ジーン:
今でもファンから「"The Elder"の曲だけで構成されたコンサートを観たい」といった内容のEメールを貰うよ。「最初から最後まで"The Elder"の曲しか演奏しないツアーをやるべきだ。あのアルバムは名盤だ」という声もあるんだ。

ポール:
だから俺たちはいつも病院の人たちに返事を書いてるのさ。早く元気になってほしいってね。

 

TRACKLIST

[アメリカ版 / US Edition]
1. The Oath / 2. Fanfare [Instrumental] / 3. Just A Boy / 4. Dark Light / 5. Only You / 6. Under The Rose / 7. A World Without Heroes / 8. Mr. Blackwell / 9. Escape From The Island [Instrumental] / 10. Odyssey / 11. I

[日本版 / Japan Edition]
1. Fanfare [Instrumental] (ファンファーレ) / 2. Just A Boy (少年) / 3. Odyssey (オデッセイ) / 4. Only You (勇者の誕生) / 5. Under The Rose (薔薇の紋章の下) / 6. Dark Light (魔界の閃光) / 7. A World Without Heroes (英雄なき世界) / 8. The Oath (炎の誓い) / 9. Mr. Blackwell (罪深きブラックウェル) / 10. Escape From The Island [Instrumental] (激烈! 大脱走) / 11. I (エルダーの戦士)

 

NOTES
Lead Vocals:
• Paul Stanley - Just A Boy / Odyssey / The Oath
• Gene Simmons - Only You (Bridge: Paul Stanley) / Under The Rose / A World Without Heroes / Mr. Blackwell
• Ace Frehley -  Dark Light
• Gene Simmons & Paul Stanley - I

• 1990年再発日本盤(曲順はアメリカ版仕様)
• 解説・歌詞・対訳付
• CD発売日:1990年12月5日
• 品番:PHCR-2060

 

KISS - BAND MEMBERS
• Paul Stanley - Guitars, Vocals
• Gene Simmons - Bass, Vocals
• Ace Frehley - Guitars, Vocals
• Eric Carr - Drums, Percussion, Backing Vocals

 

▼ KISS - I (Solid Gold)

 

▼ KISS - Odyssey

 

▼ KISS - A World Without Heroes (Live On Fridays)

 

▼ KISS - The Oath (franKENstein Remix w/Ace solos)

2013/06/19

DEPARTURE 「ディパーチャー」 / JOURNEY (1980)

Album Cover (front): Departure / Journeyジャーニー通算6作目のアルバムがこの「Departure / ディパーチャー」。スティーヴ・ペリーが加入した4作目の"Infinity"(米21位)から5作目の"Evolution"(米20位)、そしてこの"Departure"(米8位)と、アルバムを発表するごとに順調にチャート上の順位も上がってきたわけだが、当時は極彩色豊かなアルバムカヴァーのイメージと相まって随分とアメリカンロック色が増した印象があった。

この"Departure"では、何と言っても1曲目の"Any Way You Want It"が一際目を引くわけだが、個人的には、スティーヴ・ペリーとグレッグ・ローリーがヴォーカルを分け合う3曲目の"Someday Soon"と、スティーヴ・ペリーとニール・ショーンがヴォーカルを分け合う4曲目の"People And Places"の流れが、何処となく(個人的にも好きな)、4作目の"Infinity"を彷彿させるような面影があって、そこが気に入っている部分でもある。

他にも、ニール・ショーンの泣きのギターが炸裂する"I'm Cryin'"や、後半の組曲のような3曲(Departure / Good Morning Girl / Stay Awhile)に含まれる穏やかなイメージの"Stay Awhile"も当時から割と好きな楽曲だった。

又、インストゥルメンタルの小曲"Departure"もアルバムジャケットのイメージが具現化されたような雰囲気のある曲で、当時はこの曲を聴くとアルバムジャケットに描かれたスカラベがキラキラと光る粉を振り撒きながら飛んでいる姿を何となく想像していた記憶がある。

なお、このアルバムからシングルとしてリリースされたのは、"Any Way You Want It"(米23位)、"Walks Like a Lady"(米32位)、"Good Morning Girl / Stay Awhile"(米55位)の3曲。

 

▼ 左がジャケットの裏面で、中央と右がレコード盤を入れる中袋の表と裏

Album Cover (back): Departure / Journey   LPレコードの中袋 (front):Departure / Journey   LPレコードの中袋 (back):Departure / Journey

▼ LPレコードの帯(表)

LPレコードの帯(表):Departure「ディパーチャー」 / Journey「ジャーニー」

▼ LPレコードの帯(裏)

LPレコードの帯(裏):Departure / Journey

▼ レコード盤のラベル

レコード盤のラベル:Departure / Journey   レコード盤のラベル:Departure / Journey

 

TRACKLIST (LPレコード)
Side A: 1. Any Way You Want It / 2. Walks Like A Lady / 3. Someday Soon / 4. People And Places / 5. Precious Time
Side B: 1. Where Were You / 2. I'm Cryin' / 3. Line Of Fire / 4. Departure / 5. Good Morning Girl / 6. Stay Awhile / 7. Homemade Love

NOTES
• US 8位 (3x Platinum / 1994-RIAA)

JOURNEY - BAND MEMBERS
• Steve Perry - Lead Vocals
• Neal Schon - Guitars, Backing Vocals (Lead Vocals on Track 4)
• Gregg Rolie - Keyboards, Harmonica, Backing Vocals (Lead Vocals on Track 3)
• Ross Valory - Bass, Backing Vocals
• Steve Smith - Drums and Percussion

 

▼ Journey - Any Way You Want It (Official Video)

 

▼ Journey - Walks Like A Lady (Live in Osaka 1980)

 

▼ Journey - Stay Awhile (Escape Tour 1981: Live In Houston)

 


 

■ 追記
こちらは、2013年に発売された初版LPを復刻した紙ジャケット仕様のCD

 

▼ 紙ジャケットの表と裏

Japanese Cardboard Sleeve Mini LP Replica CD (front): Departure / Journey   Japanese Cardboard Sleeve Mini LP Replica CD (back): Departure / Journey

▼ ブックレットの表と裏

Booklet (front): Departure / Journey   Booklet (back): Departure / Journey

▼ CDを入れる内袋の表、裏、CD

Inner Sleeve (front): Departure / Journey   Inner Sleeve (back): Departure / Journey   CD: Departure / Journey

 

DEPARTURE / ディパーチャー (1980)

● 日本初版帯復刻(上キャップ型)
● US盤LP復刻ラベル
● 最新US盤CDのオールカラー16Pブックレット封入
● US盤LP復刻内袋付
● 解説・歌詞・対訳付
● 2006年最新デジタルリマスター ● ボーナストラック2曲収録 ● Blu-spec CD2 仕様
● 品番:SICP 30136

 

TRACKLIST
1. Any Way You Want It / 2. Walks Like A Lady / 3. Someday Soon / 4. People And Places / 5. Precious Time / 6. Where Were You / 7. I'm Cryin' / 8. Line Of Fire / 9. Departure / 10. Good Morning Girl / 11. Stay Awhile / 12. Homemade Love
[BONUS TRACKS]
13. Natural Thing / 14. Little Girl

1. お気に召すまま / 2. ウォーク・ライク・ア・レディ / 3. いつの日か… / 4. 感じてほしい… / 5. 至上の愛 / 6. 消えたあの娘 / 7. 泣きぬれて / 8. バイバイ・スージー / 9. ディパーチャー / 10. グッドモーニング・ガール / 11. 僕のそばに… / 12. ホームメイド・ラヴ
[ボーナストラック]
13. ナチュラル・シング / 14. リトル・ガール

 

 

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Journey The Ballade 「ジャーニー・ザ・バラード」 (1991) / Journey

Trial By Fire 「トライアル・バイ・ファイアー」 (1996) / Journey

Live In Houston 1981 - Escape Tour [DVD + CD] (2005) / Journey

ジャーニーの初版LP復刻・紙ジャケット・シリーズ (2013) / Journey

Escape - 35th Anniversary Deluxe Edition 「エスケイプ - 35周年記念デラックス・エディション」 [2CD+DVD] (1981 / 2017) / Journey

面白動画 - Journey (ミュージックビデオのモノマネ動画)