2012/04/09

JAPAN & SELF EXISTENCE - ミック・カーン自伝 [日本語版] / MICK KARN (2011)

Japan & Self Existence - ミック・カーン自伝 / Mick Karn先日購入したのがこのミック・カーン本人の手による自伝。これが、なんと500ページを超えるヴォリュームで、今はまだ100ページほどしか読んでいないのだが、出だしからけっこう赤裸々に語られており、この先が楽しみな反面、衝撃的なことが書かれているのではないかと、ちょっぴり不安でもある。ということで、一気に読んでしまうことを多少ためらいながら、今はチビチビと恐る恐る読んでいる。

実は、この本を買って読み始めるまで誤解していたことがあった。それは、ミック・カーンが亡くなったのが2011年1月4日で、この自伝の日本語版が出版されたのが同年の7月ということから、てっきり彼の死が日本語版が出版された最大の理由なんだろうと勘繰っていたこと。でも、実際は、この本の翻訳者であり、中学生でジャパンの洗礼を受けたと語る中山美樹さんがミックの病気を知り、治療費を援助するために何かをしたいと始められたのが、2009年に英語版で出版されたこの自伝の日本語版を出版することだったとのこと。ということで、この日本語版は彼が亡くなる前から企画され進められていたものだったのだ。ただ、原著で、387ページもあるこの自伝の翻訳は1年がかりの作業であったらしく、残念ながらその間にミックは亡くなってしまったというのが本当のところだったんだね。

 

Japan & Self Existence - ミック・カーン自伝 / Mick Karn

 

Japan & Self Existence - ミック・カーン自伝 / Mick Karnそれにしても、思い立って直ぐに、出版社へ企画を持ち込み、こうして実際に出版まで漕ぎ着けられたのだから、この方のその行動力には頭が下がるし、そのおかげでこの本が読めることになったのだから、ほんと感謝したい。

又、この本には翻訳者のあとがきの他にも、特別に編集担当者のあとがきも加えられており、そこにはこの本が出版されることになった内情と経緯が紹介されている。これがけっこう興味深い内容で、例えば翻訳者の中山さんが最初にこの企画を持ち込まれたときは、同社の他部署で一度断られていたそうで、実際、この手の本はそれほど売れるものではないとのこと。

ただ、無事に出版されたこの本の編集担当者の方はジャパンとミックのファンだと文章内で自ら語られていることから、そういった経緯で再度この方のところへ中山さんから話が来たのかとも思ったのだが、経緯については語られていないので実際のところは分からない。それでも、昨今は何事も数字優先の感情のないロボットのような企業ばかりといった印象もあるから、こういったところから物事が始まったのであれば、まだまだ日本の企業も捨てたもんじゃないなと思えるのだが、実はこの話にはまだ続きがある。

編集担当者の文を引用すると、「彼のためにもファンのためにもこの企画はぜひ実現したいと思いたが、やはり制作費や利益を考えると、通常の方法では会社が許可しないのは目に見えている」。ということで、この編集担当者が出向いた先は、いきなり社長のところだったそうで、結果はその場で応援を約束してくれたそうだ。実は、この編集担当者はそれまで知らなかったらしいだが、なんと社長も青春時代ジャパンに染まった一人だったとのこと。そして、次の根回しに向かった先が取締役のところだったそうで、この取締役は社内の年末ライヴでメイクしてジャパンの曲を編集担当者と一緒に演奏した間柄(しかも、ミック役がこの取締役だった)とのことで、もちろん企画には賛成してくれたとのこと。ということで、採算性を考えると通常ではありえないこの企画が会議を通って出版。おまけに予算の中から可能な限りの金額が版権使用料として支払われたこと(多分遺族の方へ)も異例のことだったそうだ。

といった日本語版が出版されるまでの経緯を踏まえつつも、冒頭でも述べたように、本文はまだ5分の1程度しか読んでいないのだが、翻訳者の「この本の中にミックはしっかりと生きている」という言葉が何となく実感できるような気がする。"Japan"のメンバーの中では一番陽気に見えたミック・カーンだが、実は、とても繊細な心の持ち主だったのかもしれない。

 

Japan & Self Existence - ミック・カーン自伝 / Mick KarnCONTENTS
● はじめに ● 幼年期 ● 邂逅 ● 始動 ● 契約 ● クリスチャンの隣人たち ● トゥースマザーツアー ● 銀行の支店長 ● 『トゥース・マザー』 ● 謎のパイ ● 二〇〇五年九月の日記 ● セッション ● 幸運 ● ベース ● 一九七八年 ● 一九七九年 ● ライフ・イン・トウキョウ ● 厄介なオランダ人 ● ニューヨークの休日 ● アートについて 1 ● 不思議な一致 ● ブレインストーム ● 一九八〇年 ● 『孤独な影』 ● ミセスT ● 『ベスチャル・クラスター』 ● ロッシーナ ● ゲームプレイ ● デヴィッド・トーン ● 二〇〇五年十二月の日記 ● カシミール ● CMP対ミディアム ● ベスチャルクラスターツアー ● ガラパフォーマンス ● さらばイギリス ● 音楽仲間 ● サンフランシスコ ● 『心のスケッチ』 ● アートについて 2 ● 『ウェイキング・アワー』&『ドリームス・オブ・リーズン』 ● 五番目の男 ● フィナーレ ● 『イーチ・アイ・ア・パス』 ● 『レイン・トゥリー・クロウ』 ● 僕たちは今どこにいる?

 

NOTES
• 単行本(544ページ)
• 出版社:リットーミュージック
• 発売日:2011年7月25日(日本語版)
• 寸法:18 x 18 x 2.8cm (B5変形判)
• 価格:¥2,800+税(税込み¥3,024)

 

 

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